最終話 世界樹の微笑み
転移した先は、俺の家だった。
皆が呆れたような目で俺を見てくる。
「まったく、お兄ちゃんは……これだから……」
「ほんとね、トールの……女たらし」
「トールさん! ずるいのですぅ~! 私にも首飾りプレゼントしてくださいよぅ~!」
「ほ、ほんとだな! エメルダ嬢にだけ……ずるいぞ!」
「そうにゃー! ミーアも欲しいにゃー!」
「わらわもなのじゃー! あの首飾りすごく綺麗だったのじゃー!」
「わ、わたくしも、欲しい……ですわ……」
皆がねだってくる。
「お、おう……まあ……そのうちな……」
「そのうち、って……まーったく、お兄ちゃんはいい加減なんだから……」
そんなこんなで、今夜は皆で俺の家に泊まることになったのだった。
そう言えば、以前にも俺とリンの家に、皆で泊まったことがあったな……。あれは確か、世界樹の泉に行く前夜だった。
そんなに前のことではないが、なんだか随分昔のことのように感じられる。あのときのことが懐かしく想い出される。
「にゃ~。トールとリンの家、懐かしいにゃ~」
「ここはなぜか落ち着くのじゃ~」
「ほんとね。なぜかしら……エルフの里のような……そんな懐かしさを感じるわ」
「ミレアもトールとリンの家、好きだよ」
「私も好きなのですぅ~。なぜか落ち着くのですよぉ~」
「私も同感だなっ!」
「確かに……不思議と落ち着く家ですわ……くつろげますわ」
今回ルーナさんだけは初めてだけど、早くも俺の自宅になじんでいるようだ。
「にゃ~、トールの部屋は落ち着くにゃ~」
「そうだな~っ なぜかトール殿の部屋は落ち着くな~」
「広い部屋なのじゃ~。のんびりできるのじゃ~」
この家の中で一番広い部屋は俺の部屋だ。冒険者用の特別仕様の部屋としてかなり広いのだ。
その俺の部屋で、皆はくつろぐ。
「にゃ~、またお腹がすいてきたにゃ~」
「わらわは、まだお酒が足りないのじゃ~」
「ミーア……あんなに食べてたのに……。それにイナリも、飲みすぎよ……」
リンが簡単なおつまみと果実水やお酒を出す。
皆でゆったりと、ここで飲み直しだ。
ああ……なんか落ち着くな……。
いつものメンバーとおしゃべりしながらゆっくりくつろぐ。
「そう言えば、前に来たときはみんなでボードゲームをしたわね」
「にゃ~、あれは楽しかったにゃ~」
「はい、楽しかったですぅ~」
「そうだな、また遊びたいなっ!」
「今度はカードゲームがいいのじゃ~!」
「カードゲーム! おもしろそう!」
「カードゲーム……。あっ、確か家にあったはずだよ! お兄ちゃん持ってなかったっけ?」
「おう、確か持ってたはず……。ちょっと待ってろ…………おっ、これだ」
俺はベッドの下からカードの入った箱を取り出す。
「今度はカードゲームをするのじゃ~!」
「いいわね! 負けないわよ!」
「ミーアも負けないにゃー!」
「私も負けないぞっ!」
「「おおお!!」」
……そんな感じで、ルール説明をし、始まったカードゲームだったが……。
「な、なんで、勝てないの……お兄ちゃんとしたときは結構勝ってたのに……」
「また、負けたにゃ……」
「わ、私も勝てないのですぅ~……」
「わ、私もですわ……」
「い、イナリが強すぎるんだわ!」
「そ、そうだぞっ! イナリばっかり勝ってるじゃないか!」
「イナリのいかさまにゃー!」
「なんのことかのぅ~。わらわが強いだけなのじゃ~」
イナリばかり勝っている。イナリがとぼけながら口笛を吹いている。
そう言えばイナリは勘がすぐれていたな。イナリの勘はかなり鋭い。おそらく狐獣人の持つ天性の力なのだろう。
カードゲームにおいて、その天性の勘の力は、圧倒的な有利となって働くに違いない。
くそっ! だが、俺には鑑定スキルの上位版「翡翠眼」がある! さらに「千里眼」でカードを透かして見ることもできるのだ!
よし、イナリがそう来るなら俺もやってやるか!
「トール。鑑定とかのスキルを使うのは反則なのじゃー」
「くっ!」
さすがイナリ、そこまで見抜くというのか!
「そうだよ! お兄ちゃん! スキルを使うのは反則だよ!」
「そうだ! そうだ!」
「スキルは反則なのですぅー!」
「えっ……私の鏡花水月もだめなのですか……これから密かに占おうと思ってましたのに……」
「ダメなのじゃー。ルーナの占いは、一番禁止なのじゃー」
「そうね……さすがにあれは反則よね」
「真実を見破る力なのですぅー。絶対ダメなのですぅー」
「えっ……だ、ダメなのですか……」
ルーナさんもしょんぼりしている。
そんなこんなで、カードゲームは混沌とした中で、お開きとなった。
「そう言えば、イナリって、前にトールの部屋に来たときに、ベッドの下に隠されてたいかがわしい本を察知したわね」
「そうなのにゃー。トールが隠してたエロい本なのにゃー!」
「た、確かにそんなこともあったなっ! トール殿が破廉恥な本を持っていたのだ!」
「えっ……そんなことが……あったのですか?」
「そうなんですよ、ルーナさん。お兄ちゃんあんないかがわしい本を隠してたんだよ。……お兄ちゃんの変態!」
「い、いや……その件は、前にちゃんと説明しただろうが……。誤解だって……」
「ふぅうう~ん。怪しいもんだね」
「そうだぞっ! まだ完全に疑いが晴れた訳ではないのだぞっ!」
「そうね……私もまだ納得できていないわ」
「お、お前ら、まだその問題を引っ張るのか……。ほ、ほら! イナリ! もう、部屋にはその本はないだろ! イナリなら判るだろ!?」
俺はなんとかこの件に終止符を打つために策をろうした。
実はすでにその「エロい本」は俺のアイテムボックスの中に隠してあるのだ。さすがのイナリでも空間魔法のアイテムボックスの中までは、その勘が通じないはずだ。くっくっくっ!
「うむぅ~、確かに、もうこの部屋には怪しい気配はしないのじゃ~……」
「なっ、なっ、そうだろ! イナリ。ほら、みんな! イナリがそう言ってるぞー。これで俺の疑いは完全に晴れた――」
「――でも、トールのアイテムボックスから怪しい気配がするのじゃ~」
「なっ! なん……だと!」
俺はイナリの勘を甘く見過ぎていたのかもしれない。これはまずい!
「「な、なんと! アイテムボックスの中に!」」
「ふぅう~ん……アイテムボックスのなかにねぇ……。トールぅ~、これはどういうことかしら?」
「と、トールさん……それは……本当なのですか?」
「お兄ちゃんの変態!」
「にゃははは~。トール、ピンチなのにゃ~」
皆がニヤニヤしながら俺に迫って来る。
そんな皆の目は笑っているように見える。
そんなこんなで、カオス状態のなか、俺はいろいろと言い訳をする。
オークのユニークアイテム「エロリィナイト」が入ってるとかなんとか思いついたことを片っ端から並べて適当に説明する。
そして、なんとか変態の汚名は返上し、お咎め無しで済んだのだった。
ふぅ~なんとか助かったか。
……しかし、なんだかんだ言っても、皆は楽しそうだ。たまにはこういうのもいいのかもしれないな。
その後、リンの作ったおつまみを皆で食べながら、のんびりと俺の部屋で、たわいもないおしゃべりをする。
皆も、俺とリンの自宅がくつろげるようだ。そのおかげか、いつも以上に開放的で、話がはずんだ。
いつものメンバーとおしゃべりしながら、ゆっくりくつろぐ時間。
こんな時間がいつまでも続けばいいのに……。俺はしみじみとそう感じる。
今夜は、皆は、俺の家に泊まることになっている。
シャンテが、大きな「もふ猫の絨毯」を出してくれて、俺の部屋の床に敷く。
また、「もふ猫の毛布」も人数分出してくれた。最高級のふわふわの絨毯と毛布だ。
そして、夜は更け、そのまま広い俺の部屋で、もふ猫の絨毯と毛布にくるまれ、皆で雑魚寝して眠った。
俺は心地よい眠りに誘われ、そのまままどろみの中に落ちて行った。
◇
どうやら朝が来たようだ。
まどろみのなかで、リンの朝食をつくる音が聞こえている。料理のいい香りが部屋に漂ってくる。
「お兄ちゃん……朝だよ……早く起きて……。もう朝食が出来上がってるよ。みんなも起きてるよ……」
リンの声がかすかに聞こえてくる。
「お兄ちゃん! 早く起きろー! リン、ダーイブ!」
「ぐぇっ!」
いつものリンダイブが、毛布にくるまっている俺に炸裂する。……ああ、この感じ。いつもの朝だな。
「ミーア、ダーイブ! にゃはは~」
「イナリ、ダーイブ! きゃはは~」
「ミレア、ダーイブ! きゃはは~」
「エミリー、ダーイブ! あはは~」
「シャンテ、ダーイブ! あはは~」
「あ、アリシア、ダーイブ! あっはっは~」
「わ、私も……。ルーナ、ダーイブ! うふふっ」
「ぐぇっ! ぐはっ! ふわっ! ぐぇっ! うわっ! ぐはっ! おわっ!」
皆がリンにならって、毛布にくるまってる俺に、笑いながらボディープレスをかまして、起こしてくる。
まあ、俺はレベル2003の最強冒険者だ。こんなのは軽いな。ふっふっふー。
皆の笑いの中で、俺は起き上がり、朝を迎える。
こうして、いつもの、日常の朝が、仲間たちと一緒に始まる。
朝食を皆でとる。
「にゃ~やっぱりリンの作る料理は最高にゃ~」
「ほ、ほんとね! この卵焼き美味しいわ!」
「このスープもおいしいよ!」
「このパンもふっくらしてるのですぅ~」
「焼き魚もおいしいのじゃ~」
「私は、この山菜のお浸しが好きだなっ!」
「ほんとですわ……山菜のいい香りがしますわ」
「にゃ~ん♪」
皆で食べる朝食は最高だ。
「皆さーん。世界樹の子供の葉っぱで作った、緑茶ですよー」
リンがお茶を出してくる。
「「おおお!!」」
「「いいねー!」」
「世界樹の葉っぱの緑茶……す、すばらしいわ……」
「ほんとですわ……なんて素敵な緑茶なんでしょう……」
「さっぱりしてて、すごく美味しいぞっ!」
「さっぱりにゃ~」
「いい香りなのですぅ~」
庭には、リンが育てた世界樹の子供が立っている。
世界樹の実から出て来た種を植えてずっと育てて来た、この世界の二つ目の世界樹だ。
今は、かなり大きくなっていて、時折、庭にその葉っぱが落ちて来るのだ。
リンは、その葉っぱを使って茶葉を作り、保管していたのだ。
食後に世界樹の緑茶を楽しむ俺たち。
その後、皆で庭に出て、その世界樹の子供を見上げる。
「にゃ~。庭の世界樹の子供、だいぶ大きくなったにゃ~」
「そうね。いずれ、エルフの里にある世界樹くらいに大きくなるのかしら」
「そうなったらおもしろいのじゃ~」
「もっと大きくなるのですぅ~」
「育つといいね!」
「そうだな……」
「ここにも世界樹があったのですね……すばらしいですわ……」
この世界のもう一つの小さな世界樹。世界樹の子供。
その小さな世界樹は、大元のエルフの里の世界樹とつながっているに違いない。
きっと二つの世界樹は一体となっているのだろう。
エルフの里の世界樹と比べるとまだまだ小さいが、いつの日かいずれ大きく育つのだろう。
昨夜、皆は、俺とリンの家がなぜだか落ち着くと言っていた。
ここ領都フォレスタは俺とリンの故郷。古来より自然に恵まれたいい街だ。
そして、俺とリンの両親、古の勇者と聖女の生まれ故郷でもある。
俺の家は、その古の勇者と聖女の家だった。
そして俺は思う。
なぜ、この地に古の勇者と聖女が、世界樹の泉への扉を開けたのか。
この地にはきっと、祝福された何かがあるのだろう。
俺とリンはそれを肌で感じている。
俺たちの冒険はここから始まり、そして再びここに戻って来た。
これからも再び、この地から新たな命が生み出され、そしてまた、新たな冒険が始まるのだろう。
そして、これからも俺たちの冒険は、楽しく、明るく、賑やかに続けられていくのだろう。
俺には不思議とそう感じられるのだ。
「あっ、何か落ちて来るよ!」
その小さな世界樹の枝葉が輝き、何かが俺に向かってやってくる。
世界樹の枝葉で編まれた輪になったものだ。花かんむりのような、頭にかぶる感じの綺麗な輪っかだ。
まるで月桂樹の冠のようだ。
その月桂樹の冠のようなものがゆっくりと浮かび、俺の頭におりてくる。
―――鑑定―――
ミルレリアの祝福
(神級アイテム:アクセサリー)
・世界樹の冠
・ユニークスキル上限解放
・ユニークスキルLv+1
・全能力値+2000
・経験値効率向上
・付与スキル
時魔法Lv1
錬金術Lv1
呪返神術(使用回数3回)
世界樹の洗礼(使用回数3回)
大陸創造(使用回数1回)
・勇者トールに与えらえた祝福の冠。
本人以外は触れることも出来ない。
透明化・幻体化・紛失防止機能付き。
――――――――
「お……おおお……!」
その世界樹の冠――ミルレリアの祝福は、俺の頭にやさしく降りてきて、俺の頭を飾る。
その瞬間。
――天から声が聞こえて来る。
≪ユニークスキル「女神のドロップ」の上限が解放されました≫
≪ユニークスキル「女神のドロップ」のスキルレベルが11になりました≫
≪神級アイテムのドロップが可能となりました≫
≪世界樹から、贈り物として神級アイテムがドロップされます≫
≪神級アイテム「ラミーラ・リン」がドロップされます≫
≪神級アイテム「ラミーラ・ミレア」がドロップされます≫
≪神級アイテム「ラミーラ・エミリー」がドロップされます≫
≪神級アイテム「ラミーラ・ミーア」がドロップされます≫
≪神級アイテム「ラミーラ・イナリ」がドロップされます≫
≪神級アイテム「ラミーラ・アリシア」がドロップされます≫
≪神級アイテム「ラミーラ・シャンテ」がドロップされます≫
≪神級アイテム「ラミーラ・ルーナ」がドロップされます≫
―――鑑定―――
ラミーラ・リン
(神級アイテム:アクセサリー)
・世界樹の冠
・ユニークスキル上限解放
・ユニークスキルLv+1
・全能力値+1000
・経験値効率向上
・聖女リンに与えらえた祝福の冠。
本人以外は触れることも出来ない。
透明化・幻体化・紛失防止機能付き。
――――――――
次々に、女神の加護を持つ仲間たちに、世界樹からの贈り物が降りてくる!
どれもすべて名前以外は同じ効果を持つ、神級アイテム――世界樹の冠だ!
その8つの美しい冠は、それぞれの与えられた持ち主の頭に優しく降り立ち、その頭を奇麗に飾る。
「みんな、世界樹からの贈り物だよ! ありがとう!」
「にゃー! 綺麗な世界樹の冠にゃー! ありがとにゃー!」
「す、素晴らしいわ! 世界樹さん、ありがとうございます!」
「綺麗な冠なのじゃー! ありがとうなのじゃー!」
「おおっ! 私の頭にも! ああ……ありがとう、世界樹殿!」
「綺麗な冠ですぅー。ありがとうなのですぅー!」
「わ、私の頭にも! 素敵な冠ですわ……ありがとうございます!」
「ラミーラ・ミレア! 祝福されたミレアという意味だよ! ありがとう!」
皆の頭に、綺麗な世界樹の冠が、新緑の光で飾られる。
「ありがとう……世界樹……。そして……ありがとう……女神様……」
俺は感謝と喜びで、胸がいっぱいになる。
俺とリンの家の庭に育った世界樹。小さな世界樹。
今、その世界樹が朝日を浴びて輝いている。
風に揺れて大きく枝葉を揺らしている。
その小さな世界樹が、皆を祝福するように、微笑んだ気がした。
これにて、本作【ユニークスキル「女神のドロップ」で最強冒険者を目指す~うさぎのお肉は極上です】は、完結となります。
最後までお読みいただき、大変ありがとうございました。
また応援してくださった多くの方々に重ねて感謝申し上げます。
本作品は、約一年四ヵ月ほどの連載となりました。
途中、休載期間もありましたが、なんとか無事完結できてほっとしております(^^)
これもひとえに応援してくださった皆さまのおかげです。本当にありがとうございました。
尚、本編は完結しましたが、後日、エピローグ(後日談)等を予定しております。よろしければそちらの方もお読みいただけると幸いです。
それでは、ご縁がありましたら、どこかでまたお会いできたら嬉しいです。ありがとうございました。




