221話 祝福の光
ついに俺は、ユニークスキル「女神のドロップ」のレベルを10にした。
そして、その新しく追加された効果に「レジェンドアイテム」のドロップ効果が加わったのだった。しかも100%のドロップ率。
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女神のドロップLv10
効果:魔物を倒したときのアイテムドロップ率および質が向上する。
通 常 ドロップ 300%
レ ア ドロップ 100%
ユニーク ドロップ 30%
★新規追加効果
・レジェンドアイテム(神話級アイテム)のドロップ率100%
……………………………………
レジェンドアイテム(神話級アイテム)
・神話や伝説で語られる稀有なアイテム
・神話級の魔物が持つ場合も多い
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――レジェンドアイテム……神話級アイテム
先日の記憶がよみがえる。
エルフの秘宝――世界樹の涙。これはレジェンドアイテムだ。現在俺の知る唯一のレジェンドアイテムだ。
そして、レジェンドアイテムは、神話級の魔物が持つ場合も多い、とある。
魔神は、神話級の存在だ。
魔神は、なんらかのレジェンドアイテムを、その身に隠し持っているに違いない。俺はそう確信する。それが、何かは分からない。
だが、神託は確かに告げている。
――十番目の御業の力を手に、試練を乗り越えろ、と。
『勇ましき者よ――
十番目の御業の力を手に
試練を乗り越えたとき
多くの呪われた命と
囚われた古のラビたちのもとに
祝福の光が 降りそそぐだろう――』
条件はすべて整った、後は魔神を倒すだけだ。
今も、シャンテの魂のオリハルコンゴーレムが、魔神と取っ組み合いをし、動きを封じている。
しかし、すでにそのゴーレムの頭が半分欠け、右手の剣も折れ、腕もぐらついている。
そして、イナリの魂のフレアフォックスも、魔神に取りつきその炎を燃やし続け、魔神の魔力を阻止している。
しかし、その狐の炎の姿はゆがみ、炎の色はくすみ、力を失いつつある。
消えて行った仲間たち。命をあずけてくれた俺の大切な仲間たちの想いと願いが、ひしひしと伝わってくる。
今、俺の体の底から不思議な鼓動が聴こえている。
俺の持つもう一つの女神の加護――ユニークスキル『女神の勇気』レベル20
その加護の力が、消えて行った彼女たちのおかげで満ちている。
今、俺の中に命を燃やすほどの力が、滾々と泉のように湧いている。
魔神を倒す勇気と自信が溢れかえっている。
ユニークスキル『女神の勇気』……最終奥義――不惜身命
―――スキル鑑定―――
不惜身命
・ユニークスキル「女神の勇気」の最終奥義
・スキルレベル20(MAX)で習得可能。
・自らの命と引き換えに一撃必殺の技を放つ
・神話級の力を持つ
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――自らの命と引き換えに一撃必殺の技を放つ
このスキルを使うことに、一切の迷いは無い。
俺の大切な仲間たちが、そう選んだように――。
「さあ! 時は満ちた! 魔神を倒すぞ!! みんな……待ってろよ……これからすべてを終わらせて……俺も、皆の所に行くからな…………」
「トール、ボクの力も貸すよ。モフの為に溜めていた魔力はもう必要ないからね。"世界樹の涙" に溜まっている魔力は、すべてここで使わせてもらうね。――精霊の輪舞!」
精霊神ラビィが、俺に力を貸してくれる。
小さな精霊たちがたくさん現れ、俺のもとに集まってくる。そして、俺の周りに輪のようになって舞い踊っている。
精霊たちの力が、俺の中に流れ込んでくるのを感じる。更に力が湧いてくる。
「トール! 行けぇええー!」
「トール! 頑張ってー!」
ラビィとミレアの声が聞こえる。
「ラビィ。そして……ミレア。……皆を頼んだぞ……」
オリハルコンゴーレムの体は倒れ、僅かに残ったぐらついた右腕で、魔神の右足を掴んでいる。
フレアフォックスの炎は、風前の灯火となり、残されたわずかな力で、魔神の後ろ足を掴んでいる。
GUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!
咆哮する魔神。その目は真っ赤に燃え上がり、俺を睨んでいる。
魔神の弱点の心臓は、ルーナさんの魂の力で、月のように輝き、その場所をくっきりと浮かび上がらせている。
「ユニークスキル『女神の勇気』最終奥義――不惜身命!」
――うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお――
俺の命が、今、激しく燃えているのを感じる。
神剣ミーアと勇者剣アルネガの星を同時に突き出し――
魔神の体に浮かぶ月の光を目指して、光のように駆け抜ける!
そのとき、俺の体は、まるで光そのものになったように感じた!
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
パァアアアアアアアアアアア――ン!!
魔神の心臓が――弾ける音が鳴り響いた!!
GUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!
この瞬間、ついに魔神は断末魔の叫びを上げた。
魔神の最後の悲鳴が、辺り一面に響き渡る。
王都が、草原が、空が、大陸が、
激しく振動し、揺れる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――
GUAAAAAAAAAAA――
GUAAAAAA――
GUAAA――
GU――
――
そして――
魔神の体は――徐々に、徐々に、輝く巨大な霧となって、辺り一帯に広がっていく――
――天から声が聴こえて来る。
≪魔神ラビゾルマを討伐しました≫
≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫
≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫
≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫
≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫
・
・
≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫
膨大な経験値が、体に流れ込んでくる。
≪パーティーメンバーのそれぞれに習得可能スキルが解放されました≫
≪パーティーメンバーのそれぞれに特別ボーナスとしてSPが与えられます≫
――繰り返す天からの声
≪魔神ラビゾルマのレジェンドアイテムが放出されます≫
≪レジェンドアイテム、『ラビの聖肉』がドロップされます≫
≪ラビの聖肉がドロップされました≫
≪ラビの聖肉がドロップされました≫
≪ラビの聖肉がドロップされました≫
≪ラビの聖肉がドロップされました≫
≪ラビの聖肉がドロップされました≫
≪ラビの聖肉がドロップされました≫
≪ラビの聖肉がドロップされました≫
≪ラビの聖肉がドロップされました≫
・
・
・
≪ラビの聖肉がドロップされました≫
≪ラビの聖肉がドロップされました≫
≪ラビの聖肉がドロップされました≫
・
・
・
≪ラビの聖肉がドロップされました≫
・
・
「や、やった……やったぞ…… うおおおおおおおおお――……………」
「トール! ついにやったね! ……おめでとう!」
「トール、凄い! やったー! ……トール、お疲れさま……後はミレアにまかせて」
ラビィとミレアの声が……微かに聴こえて来る……
「「「おおおおお!!」」」
「「魔神が! 消えて行く!!」」
「勇者トール殿が! 魔神を倒したぞぉおおおー!!」
「す、凄い! やったー!!」
「世界が救われたのだ!!」
「「「おおおお!!!」」」
王都中から……大勢の人々の声が聴こえて来る……
俺は……今……大地に仰向けになって……空を見上げている……
俺の体は……もう動かない……
空に……辺り一帯に……魔神のレジェンドアイテムが……放出されているのが見える……
魔神のレジェンドアイテム……ラビの聖肉……
―――鑑定―――
ラビの聖肉
・レジェンドアイテム(神話級アイテム)
・かつて生贄になった聖なるラビの肉
・生贄となったラビの魂が囚われている
・魔神の体から解放されることで、その魂も解放されるだろう
・魔神の呪いを消滅させる聖なる光の霧となるだろう
――――――――
そのレジェンドアイテムは……真っ白なラビたちの体そのものだった……
そうか……そうだったのか……
魔神が誕生した由来……
はるか遠い昔のこと 神話で語られるほどの 遥か遠い昔にあったこと
かつて ある一体のラビが 魔王に拘束された
そのラビは 無理やりに 同類であるラビの肉を 喰らうことを 強制された
生贄にされた多くのラビを 喰らい続けたそのラビは 強大な力を得ていき 魔神となった
生贄とされた多くのラビが その魂とともに 魔神の体の中に囚われた
悠久の長い年月 ずっとそのラビたちの魂は 魔神の体の中に 囚われ続けていたのだ
今 その囚われたラビたちの魂が 解放されているのだ
放出された 数多のラビの聖肉は 今 光輝く聖なる霧と変わり 辺り一面に広がって行く
その光輝く霧は 空を真っ白に染めながら 大陸中に 広がって行っている
その聖なる光の霧は 魔神の赤い光の呪いを 消滅させる 祝福の光となって 大陸中に 世界中に 広がり 降りそそぐのだろう
ああ 奇麗だ
真っ白く 輝く 光 光 光
俺の目には もう光しか見えない
――勇者さん ありがとう――
――ボクたちを 解放してくれて ありがとう――
――勇者さんたち ありがとう――
――勇者さん そして 勇者さんの お仲間さんたち ありがとう――
――ありがとう ほんとうに ありがとう――
――ありがとう やっと ボクたち 世界樹のもとに 行けるんだね――
――ありがとう ありがとう ありがとう――
囚われていた 多くのラビたちの声が 聴こえる
たくさんの ラビたちの 魂が 今 世界樹のもとへ 旅立とうとしている
神託の言葉――女神ミルレリアの神託
『勇ましき者よ――
試練を乗り越えたとき
多くの呪われた命と
囚われた古のラビたちのもとに
祝福の光が 降りそそぐだろう――』
ああ この 光が 祝福の光 だったんだな――
ああ 綺麗だな――
俺は 祝福の光の中で 静かに目を閉じる
ああ 俺も ラビたちと一緒に 世界樹のもとへ 仲間たちのもとへ 行こう――




