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220話 モフの決意と十番目の御業


 たった2つ、レベルが届かないばかりに、多くの命が救えずその命は苦しみの中で消えて行く……。


 俺の心は、絶望感に心が張り裂けそうになっていた。


 ――そのときだった。


「モフ!? ……」


 目の前にモフが立っていた。


 モフはそんな俺の顔を、じっと見つめている。


 俺の心の苦しみは、俺の従魔であるモフにも伝わるのだ。お互いの気持ちは繋がり合っているのだ。


 じっと俺を、優しい目で見つめるモフ。



 ――天から声が聴こえて来る。


≪従魔モフが仲間から外れたそうにしています≫ 


「も、モフ……」


 以前モフをテイム――仲間にしたときに聞こえたときと同じような天からの声が聴こえて来た。


 しかし、今、モフはあのときとは逆に、俺との従魔契約を解除しようとしているのだ。


≪従魔契約を解除しますか? Y/N ≫


「…………モフ……」


 俺はモフが何を考えているのか、心が痛いほどよく分かる。


「モフ……それだけは……絶対に嫌だ……お前の命を奪うことは絶対に出来ない……」


 今モフは、俺との従魔契約を解除して、討伐される側の魔物に戻ろうとしているのだ。


 モフのレベルは俺とほぼ同じ、2000弱なのだ。


 モフはすでに驚異的に強くなった魔物なのだ。


 おそらく俺がモフを倒せば、俺のレベルは上がるだろう。2以上のレベルは確実に上がるはずだ。


 しかし、モフには魔王による"転生封呪" の呪いがかけられている。


 ここでモフを討伐し、モフが死ねば、モフは死後決して転生出来ず、永遠に深遠の迷宮内を彷徨うことになるのだ。

 古代竜デネルとベーガがそうあったように。

 彼らは、魔王により、モフと同じ"転生封呪"にかけられ、重い鎖に繋がれ苦しみの中永遠に迷宮内を引きずるようにさまよっていたのだ。

 その痛々しい姿が脳裏によみがえる。

 モフを絶対にそんな目に合わせたくない。



「モフ……お前ってやつは……どこまでも……優しいやつなんだ……」

 

 モフは自身が今後どうなるかは十分に自覚している。


 それでも、俺たちのために、人々のために、自分を犠牲にしようとしているのだ……。


 モフの心の声が聴こえてくる。


(トールご主人様……僕のことは……心配しなくていいのです……それよりも……みんなの命を救ってあげてください……)


 涙がポロポロと溢れて来る。


 モフとの、今までの、想い出が、生活が、共に過ごしたかけがえのない日々が、次から次へと、頭に浮かぶ。


 モフがサンドイッチを食べて仲間になったこと。共にキングラビットと死ぬような思いで戦ったこと。ギルドの冒険者の宴で踊ったモフ。共にラーフィンと激戦したこと。一緒に温泉に入ったこと。美味しいものを一緒に食べ笑いあった日々――。

 モフと共にあった冒険と生活の日々が、俺の脳裏を駆け巡る。


「モフぅうううう!! ――だめだ! それは……絶対に嫌だ!」


 俺の涙は止まらない……。




「トール……。モフ…………」


 ラビィの声が聴こえる。


 城壁の上にラビィが立っていた。


 モフと俺をじっと見つめている。


 ラビィの目は、悲しく、そして優しい目をしていた。


 さらに、じっとモフを見つめるラビィ……。


 ラビィの体に力がこもってくるのを感じる。


 やがて――ラビィは、大きく息を吸い、空を見上げる。


 天を一心に見つめる精霊神ラビィ。


 そして――天に向かって声を震わせた。



「ミルレリアァァアアアアアアアアアアあああああああ――!! 見てるかぁああああああああああああああ!! ボクはッ! ボクはッ! モフを! 認めたぞおおおおおおおおおおおおおお――!!」



 天まで届けとばかりに、大音声を発する精霊神ラビィ。


 一瞬だけ、ラビィの周りに……目に見えないはずの精霊たちが、輝き、飛び回る様子が見えた。


 そして、辺りは静寂に包まれる。


 やがて――


 空から、天から、眩しく輝く一筋の光が降りて来た。


 その神々しいまでの光が……モフに向かって! 降りて来る!


 天からの光がモフに到達し、モフの体が眩くまでの光に包まれる。


 女神ミルレリアの加護の降臨だ!




 ――天から声が聴こえて来る。


≪従魔モフに、女神の加護が与えられます≫ 


≪従魔モフが、聖獣モフミーラに進化しました≫ 


≪従魔モフは、聖獣になったため、魔物の循環から外れました≫ 


≪聖獣モフミーラは、魔物の循環から外れた為、転生封呪の呪いは強制解除されました≫ 


≪従魔モフは、聖獣になったため、勇者トールとの従魔契約は強制解除されました≫ 


≪聖獣モフミーラは、世界樹の循環に入りました≫ 



「モフぅうううううう! やったぞ!! モフ! ――良かったな!! モフ!」


 俺は狂喜乱舞した。


 俺は天に向かって叫ぶ。


「女神様――! ありがとうございます!!」


「ミルレリア――! ありがとう――!」


 ラビィも天に向かって喜びと感謝の声を上げる。



「トール! もうモフは魔物ではないよ! 聖獣だ! モフは死後、深遠の迷宮に入ることも無い。世界樹の循環に入るんだ! モフはミレアのエルフの秘儀(ユグドラシル)で生き返ることも出来るんだよ!」


 モフと目が合う。


(トールさん、もう僕は大丈夫。さあ、僕の命をトールさんに預けます。思いっきり僕を討伐してください)


 モフこと聖獣モフミーラが、俺の心に語り掛けて来る。


「モフ、分かった……。モフの命は俺が預からせてもらう。必ずミレアが生き返らせてくれるはずだ。モフ……本当に……ありがとう……」


「モフ! ミレアが、絶対にモフを生き返らせるから! 心配しないで!」


 ミレアの力強い声が聞こえてくる。


「モフ、お前はもう魔物なんかじゃない、聖獣だ。モフ……苦しまないように命をもらうぞ……」


―――スキル鑑定―――

レクイエムスラッシュ

・勇者剣術スキル

・攻撃効果大

・攻撃対象には痛みや苦痛を一切与えない。

・鎮魂作用を持つ。

・消費魔力(中)

――――――――――― 


 俺はモフの前に立ち、神剣ミーアを構える。


「すまん! モフ! お前の命をあずからせてもらうぞ! ――レクイエムスラッシュ!」


 ――シュッ


 モフを斬る。


 斬られたモフは、全く痛みを感じていないようだ。それどころか恍惚な表情を浮かべている。



 ――ありがとう トールさん 

 ――魔神を たおして みんなを 救って ください――



 モフこと聖獣モフミーラは、笑顔で、霧となって消えて行った。



≪レベルが上がりました≫ 

≪レベルが上がりました≫ 

≪レベルが上がりました≫ 

≪レベルが上がりました≫

≪レベルが上がりました≫


≪ユニークスキル――「女神のドロップ」のレベル10が解放されました≫



 レベルが5上がり、俺のレベルは2000を超え、ついに女神のドロップスキルのレベル10が解放された。

   

「よし! 来た! 来たぞ!!」


「トール! ついに十番目の御業(みわざ)の力が解放されたね!」 

「トール! やったね!」


 ラビィとミレアの喜びの声が聞こえて来た。


 俺は早速ステータスを開く


「よし、さっそく振るぞ!」


 女神のドロップのレベルの部分を触る。


≪SPを使用してスキルレベルを上げますか?≫


「はい」


≪Lv10に上げるにはSPが200必要です≫


「はい」


 そして表示が変化した。



――――――――――――――  

女神のドロップLv10


効果:魔物を倒したときのアイテムドロップ率および質が向上する。


 通 常  ドロップ 300%

 レ ア  ドロップ 100%

 ユニーク ドロップ  30%


★新規追加効果

・レジェンドアイテム(神話級アイテム)のドロップ率100% 


……………………………………

レジェンドアイテム(神話級アイテム)

・神話や伝説で語られる稀有なアイテム

・神話級の魔物が持つ場合も多い

――――――――――――――  


「レジェンドアイテム!! 100%! ついに来たか!」


 俺は女神のドロップスキル――レベル10の内容に心が高揚するのを感じた。


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