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黒の人形使い〜女神に貰った神器で無双する。  作者: ボアの本棚


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95話 十三の騎士



水路の水が、ゆっくりと引いていく。


ザァァァ……。


黒い水が流れ去ると、その下から石造りの床が姿を現した。


そして。


ガコンッ。


壁の一部が沈み込み、その奥からさらに下へと続く階段が現れた。


「……まだ下があるの?」


ユカリが階段を覗き込む。


「スマホのマップには?」


「表示されてる」


僕は画面を見る。


けれど、その先は真っ黒だった。


「最下層……かな」


「行ってみよう」


シオンが剣を構え、先頭を歩き始める。


僕とユカリも後に続く。


階段は長かった。


一段、また一段と降りていく。


やがて階段が終わる。


「……ここは?」


僕達の前に、巨大な石造りの部屋が広がっていた。


壁には古い文字が刻まれている。


そして、部屋の中央。


そこには。


「棺……?」


十三個の石棺が、縦に並べられていた。


左から右へ。


まるで誰かを見守るように、整然と並べられている。


そのさらに奥には、他の棺とは明らかに違うものがあった。


横向きに美しい装飾が彫られた、豪華な棺。


王族でも眠っていそうな立派なものだった。


「……嫌な感じがする」


シオンが呟く。


僕も同じだった。


何かがおかしい。


静かすぎる。


「戻った方がいいんじゃない?」


僕が言った、そのとき。


「………」


ガガガッ……。


「え?」


一番手左の石棺が震えた。


ガガガガガッ……。


「シオン!」


「分かってる!」


シオンが剣を構える。


ガコンッ!!


石棺の蓋が開いた。


中から鎧騎士が起き上がった。


全身を古びた鎧で包み、手には剣。


「アンデッド……?」


僕が呟く。


すると。


ガガガッ!


二番目の棺が開く。


三番目。


四番目。


「ちょ、ちょっと待って!」


ガガガガガガッ!!


十三個の棺が、次々と開いていく。


中から立ち上がったのは、すべて鎧騎士だった。


剣。


槍。


斧。


弓。


ランス。


大盾。


それぞれ違う武器を手にしている。


十三人の騎士が、ゆっくりとこちらを向く。


「……十三体」


シオンが剣を握り直す。


「全員、強そうだな」


その瞬間。


カチャッ。


十三人の騎士が、一斉に武器を構えた。


「来る!」


ズドドドドドッ!!


騎士達が一斉に駆け出す。


「ユカリ!」


「うん!」


ユカリがおもちゃの剣を掲げる。


「魔法の壁!」


バシュンッ!!


僕達の前に障壁が現れる。


ドォン!!


剣がぶつかる。


ガキィン!


槍が突き刺さる。


弓矢が飛んでくる。


バシュッ!バシュッ!


「わあっ!」


ユカリの障壁が大きく揺れる。


「数が多い!」


「ユカリ、全部止めなくていい!」


シオンが叫ぶ。


「俺が動ける隙間だけ作ってくれ!」


「分かった!」


ユカリが杖代わりのおもちゃの剣を振る。


「氷!」


パキパキパキッ!


前方の床が凍り付く。


先頭を走っていた騎士達の足が滑った。


「今だ!」


シオンが飛び出す。


一人目の剣士が斬りかかる。


ガキィン!


シオンが剣で受け流す。


そのまま身体を回転させ。


ズバッ!


鎧の肩を斬り裂く。


「次!」


横から槍が突き出される。


シオンが身体をひねってかわす。


「甘い!」


槍を掴み、そのまま騎士を引き寄せる。


ドンッ!


柄で兜を殴り飛ばす。


その背後から斧騎士が迫る。


ブォンッ!


巨大な斧が振り下ろされた。


シオンが一歩下がる。


ドガァン!!


床の石が砕ける。


「危ない!」


僕が叫ぶ。


その瞬間。


「雷!」


バリッ!!


ユカリの雷が斧騎士の腕を直撃した。


ガクンッ。


斧を持った腕が止まる。


「シオン!」


「助かる!」


ズバァッ!


シオンの剣が斧騎士の胸当てを斬り裂いた。


「一体!」


だが。


「まだ十二体いるよ!」


僕が叫ぶ。


「分かってる!」


シオンが笑う。


「ユカリ!」


「なに?」


「弓の奴を頼む!」


「任せて!」


後方にいた弓騎士が弓を引き絞る。


ギリギリギリ……。


シュッ!!


矢が飛ぶ。


「させない!」


ユカリがおもちゃの剣を振る。


「風!」


ゴォォッ!


突風が巻き起こり、矢の軌道を逸らす。


矢が壁に突き刺さる。


その隙にシオンが一気に距離を詰める。


「そこだ!」


ズバァッ!


弓を持った腕を斬り落とす。


「二体!」


「まだだよ!」


ユカリが叫ぶ。


槍騎士がシオンを挟み込むように左右から突撃する。


「シオン!」


「大丈夫だ!」


シオンが跳ぶ。


二本の槍が交差する。


その槍を足場にして、シオンが空中へ跳ね上がった。


「《剣聖技・旋風》!」


ビュンッ!


一回転。


二回転。


三回転。


シオンの剣が連続して閃く。


ガキィン!


ガキィン!


ズバッ!


二体の槍騎士が同時に吹き飛んだ。


「すごい……」


僕が呟く。


しかし、その瞬間。


「お兄ちゃん!」


ユカリの声。


振り返る。


巨大なランスを持った騎士が、僕へ向かって突進していた。


「うわっ!」


「させない!」


ユカリが僕の前に立つ。


「雷の槍!」


バチバチバチッ!


雷でできた槍が飛び出す。


ズドンッ!!


ランス騎士の胸を直撃。


身体が大きく後ろへ吹き飛んだ。


「お兄ちゃん、大丈夫?」


「うん!」


「なら、まだ戦えるね!」


「……うん」


ユカリが楽しそうに笑う。


その横で、シオンも残った騎士達を見渡していた。


「あと六体!」


「半分!」


「なら一気に行くぞ!」


「うん!」


二人が同時に駆け出す。


ユカリが氷で足を止める。


雷で武器を弾く。


風で敵の動きを乱す。


その隙をシオンが一体ずつ斬り伏せていく。


最後の騎士が、大盾を構えて突っ込んできた。


ドドドドドッ!


「こいつが最後だ!」


シオンが正面から迎え撃つ。


ガキィィィン!!


剣と盾が激突する。


シオンが押し返される。


「くっ……!」


大盾騎士がさらに踏み込む。


「シオン!」


ユカリが叫ぶ。


「分かってる!」


シオンは剣を下げた。


そして。


一歩。


二歩。


大盾騎士へ向かって走る。


「《剣聖技・一閃》!」


ズバァァァッ!!


大盾ごと騎士を斬り裂く。


ガシャァァン……。


最後の騎士が崩れ落ちた。


「……終わった?」


僕が周囲を見る。


十三体の騎士は、すべて動かなくなっている。


「やった!」


ユカリが両手を上げる。


「十三体、全部倒した!」


「……いや」


シオンが振り返る。


その視線の先。


部屋の奥。


最初から一度も開いていない、豪華な棺。


「まだだ」


ガタッ。


「……え?」


棺の中から音がした。


ガタ……。


ガタガタ……。


僕達の笑顔が消える。


十三体の騎士は。


この棺を守るために、起き上がったのだ。


そして今。


その役目を終えたかのように、豪華な棺の蓋がゆっくりと持ち上がった。


ギギギギギ……。


黒い瘴気が、棺の隙間から漏れ出す。


ユカリが僕の前に立つ。


シオンが剣を構える。


僕も聖者の力を集中させた。


そして。


棺の中から、ゆっくりと一本の腕が伸びてきた。





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