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黒の人形使い〜女神に貰った神器で無双する。  作者: ボアの本棚


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94/99

94話 鳥籠のカラス



階段を降りると、目の前には巨大な円形の空間が広がっていた。


「……広い」


思わず立ち止まる。


天井は高く、今までの地下水路とは比べ物にならない。


直径三十メートルほどはある。


その中央には、巨大な鳥籠が吊り下げられていた。


鳥籠の下には四方八方から水路が集まり、円形の水溜まり場になっている。


ただし、その水もやはり真っ黒だった。


「ここ……水路の終点なのかな?」


僕が懐中電灯を向ける。


石壁は古い文字で埋め尽くされ、ところどころに魔法陣まで描かれている。


「古代文字か……」


シオンが壁を見上げる。


「読めそう?」


「読めるわけねぇだろ」


「ですよね」


僕はスマホのカメラを向ける。


文字を撮影して、翻訳アプリにかけてみる。


しかし。


『解析できません』


「……ですよね」


僕はスマホを下ろした。


そのときだった。


「ねえ……」


ユカリが鳥籠を指差す。


「あれ、何?」


巨大な鳥籠。


その中に、何かがいる。


止まり木に、巨大な黒いカラスが止まっていた。


身体だけでも僕より大きい。


翼を畳んで眠っているが、翼を広げれば三メートル以上はありそうだ。


「……寝てる?」


「みたいだな」


シオンが声を落とす。


「起こすなよ」


「分かってる」


僕達は足音を殺して、鳥籠から離れようとする。


そのとき。


ポタッ。


黒い水滴が鳥籠から落ちた。


僕は水滴の落ちた場所を見る。


「……何?」


懐中電灯を向ける。


水溜まりの底。


そこに何かが沈んでいる。


「骨……?!」


よく見ると、一つではない。


人間のものと思われる骨が、何本も沈んでいる。


「うわ……」


僕が一歩下がる。


その瞬間。


カァ……。


鳥籠の中から声がした。


「……!」


僕達が一斉にカラスを見上げる。


巨大なカラスが、ゆっくりと顔を上げていた。


真っ赤な目。


その視線が、僕達を捉える。


「カァァァァ……」


ゾクッ。


背筋に冷たいものが走る。


「起きちゃった……」


ユカリが僕の前に出る。


「お兄ちゃん下がって!」


「待って」


僕はユカリの肩に手を置いた。


「まだ攻撃しないで」


「でも……」


「何か変だ」


巨大なカラスは僕達を睨んでいる。


それなのに、鳥籠から出ようとはしない。


僕は水溜まりを見る。


黒い水。


そこに沈んだ大量の骨。


そして、壁に描かれた魔法陣。


「……このカラス」


僕は気づいた。


「この黒い水を吸ってるんじゃない?」


「え?」


「魔物がここにいる理由があるんだと思う」


その瞬間。


カラスが翼を大きく広げた。


バサァァァッ!!


「うわっ!」


大量の黒い羽根が舞い上がる。


羽根は空中で止まり。


一斉に僕達へ向かって飛んできた。


「来るぞ!」


シオンが剣を抜く。


「魔法の壁!」


ユカリが前に出る。


バシュンッ!


透明な障壁が展開される。


ザザザザザザッ!


無数の羽根が障壁に突き刺さる。


ジュウウウウ……。


羽根が障壁を溶かし始めた。


「これ、長く持たない!」


ユカリが叫ぶ。


「僕がやる!」


僕は前へ出る。


「浄化!」


パァァァァッ!!


僕の手から眩い光が放たれる。


光に触れた黒い羽根が。


シュウウウウ……。


煙を上げながら消えていく。


「効いてる!」


しかし、カラス本体にはほとんど変化がない。


「ワタル!」


「分かってる!」


僕はカラスではなく、水溜まりを見る。


黒い水が、光から逃げるように揺れている。


「やっぱり……」


「何が?」


「こいつ、黒い水から力を得てる!」


僕は水溜まりへ手を向けた。


「浄化!」


パァァァァッ!!


白い光が水面へ広がっていく。


黒い水が、じわじわと薄くなっていく。


「カァァァァァッ!!」


巨大なカラスが悲鳴を上げた。


「やっぱり!」


僕の考えは間違っていない。


「ユカリ!水路を凍らせて!」


「わかった!」


ユカリがおもちゃの剣を水路へ向ける。


「凍れ!」


バキバキバキバキッ!!


四方八方から流れ込んでいた黒い水が、一気に凍り付いていく。


黒い水の流れが止まった。


「シオン!」


「任せろ!」


シオンが鳥籠へ駆け出す。


「《剣聖技・一閃》!」


ズバァッ!!


鳥籠を固定していた巨大な鎖が切断される。


ガシャァァァン!!


鳥籠が大きく揺れる。


「カァァァァァッ!!」


カラスが翼を広げた。


今までとは比べ物にならないほど巨大な瘴気が、身体から噴き出す。


「まだ動けるの!?」


僕は両手を前へ突き出した。


「なら……全部、浄化する!」


パァァァァァァッ!!


白い光が空間全体を包み込む。


黒い瘴気が光に触れるたび、消えていく。


カラスの身体からも、黒い煙が大量に抜けていく。


「カァ……」


巨大なカラスが苦しそうに鳴く。


そして。


バサッ。


力なく翼を閉じた。


ゆっくりと止まり木へ戻る。


「……終わった?」


ユカリが恐る恐る聞く。


「たぶん……」


僕が近づく。


巨大なカラスは、もう赤い目ではなかった。


その瞳は、穏やかな黒。


そして僕達を見つめると。


「……墓標の……主は……」


掠れた声が響いた。


「え?」


「……まだ……眠っている……」


「墓標の主?」


僕が聞き返す。


だが、カラスはそれ以上何も語らなかった。


身体が光に包まれていく。


黒かった羽根が、一枚、また一枚と白く変わる。


そして最後には。


一本の黒い羽根だけを残して、消えていった。


「……」


僕達はしばらく黙っていた。


やがて、シオンが鳥籠の中を調べる。


「何かあるぞ」


「何?」


シオンが拾い上げたのは、古びた黒い鍵だった。


鍵には、壁に描かれていたものと同じ魔法陣が刻まれている。


「これ……この先へ行くための鍵かな?」


僕がスマホのマップを見る。


すると、今まで表示されていなかった場所が、一つだけ表示されていた。


「……出た」


「何が?」


僕は画面を見つめる。


「最下層への道」


ユカリが嬉しそうに笑う。


「じゃあ、行こう!」


僕は黒い羽根と鍵をバッグへしまった。


でも、最後にカラスが残した言葉が気になっていた。


墓標の主は、まだ眠っている。


僕達がこれから向かう先。


そこには、一体何が待っているんだろう。





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