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黒の人形使い〜女神に貰った神器で無双する。  作者: ボアの本棚


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82/100

82話 赤い竜



バリッ!


バリバリバリバリッ!


「やべぇ!封印が割れる!」


シオンの叫び声に、僕達は一斉に巨大な卵を見上げた。


卵を覆っていた封印シールに、無数の亀裂が走っている。


「まずい!」


バリイイイインッ!!


次の瞬間。


封印が弾け飛んだ。


「封印が割れた!」


僕は咄嗟に腕で頭を庇った。


ビキッ!


バリバリバリバリッ!!


巨大な卵に大きな亀裂が走る。


そして。


「があああああっ!!」


凄まじい咆哮が響き渡った。


「わっ!」


「赤い竜が生まれた!」


卵の中から姿を現したのは、真っ赤な鱗を持つ竜だった。


生まれたばかりだというのに、その体はすでに巨大だ。


「まずい!」


赤い竜が大きく息を吸い込む。


「何する気だ!?」


ズゴオオオオオッ!!


凄まじい勢いで空気が竜の口へ吸い込まれていく。


「うわあああっ!」


倉庫が。


公園が。


研究所までもが、まるで掃除機に吸い込まれるゴミのように次々と飲み込まれていく。


「やべぇぞ!」


シオンが叫ぶ。


「このままじゃ家まで吸い込まれる!」


「どうする!?」


「これだ!」


シオンがバッグから魔道具を取り出した。


「《縮小魔法シール》を喰らえ!」


シオンは勢いよくシールを石に包んで投げた。


ヒュンッ!


シールは赤い竜の口へ吸い込まれていく。


「効いた!」


赤い竜の体が、みるみる小さくなっていく。


巨大だった体が縮み。


僕の身長を超えていた体が、どんどん小さくなる。


「もっと小さく!」


さらに縮む。


そして。


僕の膝くらいの大きさになった。


「これで止まった……?」


そう思った瞬間。


ズゴオオオオオッ!!


「まだ吸ってる!」


体は小さくなったのに、吸い込む力はまったく衰えていない。


「どうしよう!?」


その時。


「あ!」


僕はバッグを思い出した。


「そうだ!」


僕はバッグの中から、丸めて保存していた紫色の煙を取り出した。


ユカリがハルさんにかけられた睡眠魔法を窓から投げ捨てたはずのもの。


「これなら!」


僕は赤い竜へ駆け寄る。


「眠ってくれ!」


「えいっ!」


紫色の煙を、赤い竜の口へ押し込んだ。


「グル……?」


赤い竜の動きが止まる。


「グルル……」


大きなあくびを一つ。


そして。


コテン。


赤い竜は、その場で丸くなった。


「スピー……」


「…………」


「…………」


「…………寝た?」


シオンが呆然と呟く。


「うん」


「………」


「はぁ~~~~」


僕は額の汗を拭った。


「やっと静かになったね」


「静かにはなったけどよ……」


シオンが周囲を見回す。


「俺の店の倉庫、丸ごと飲み込まれちまったけどな」


「…………」


「ごめん」


「お前のせいじゃねぇだろ」


シオンはため息をついた。


その時だった。


「ワタル様!シオン様!」


窓の向こうから声が聞こえる。


見ると、マリサさんが心配そうにこちらを見ていた。


「ご無事ですか!?」


「大丈夫ですよ!」


僕が答える。


「死ぬかと思ったけどな」


シオンが付け加える。


「まあ、生きてるならいいだろ」


◇◇◇


その後。


僕は公園跡地に、大型犬用の大きなケージを用意した。


「これなら、しばらくは大丈夫かな」


中には、赤い竜。


スヤスヤと気持ちよさそうに眠っている。


念のため、さらに《封印シール》を貼っておく。


「これでよし」


「………」


「………」


その様子を見ていたサミュエルさんとハルさんは、揃って深いため息をついた。


「まさか、あの卵がこんなことになるとは……」


サミュエルさんが頭を抱える。


「しかも、世界を滅ぼすはずだった竜を、睡眠魔法で眠らせるとは……」


ハルさんも呆然としている。


「すみません……」


僕は頭を下げる。


「いや、緊急事態だったのだ」


サミュエルさんが首を振る。


「今回は仕方あるまい」


「後のことは私に任せろ」


そう言って、サミュエルさんは赤い竜の入ったケージを運び始めた。


「エーミール、お前も来い」


「嫌だー!」


エーミールくんが叫ぶ。


「俺様、帰りたくない!」


「そう言うな」


「嫌だー!」


嫌がるエーミールくんを連れて、サミュエルさんは再び竜王国へ向かっていった。


「…………」


僕は二人の姿を見送る。


「なんか……」


どっと疲れた。


「今日はもう、何もしたくない……」


隣を見る。


ハルさんも、同じように疲れ切った顔をしていた。


「私も……少し休ませていただきます」


「はい。ゆっくり休んでください」


ハルさんはふらふらと自分の部屋へ戻っていった。


「………」


今日一日で、いったい何が起きたんだ。


世界を滅ぼすはずだった竜が生まれて。


周りを吸い込みまくって。


シオンの倉庫が消えて。


最後は眠りの魔法で眠ってしまった。


「…………」


僕はソファーに座り込んだ。


「もう寝よう……」


その後。


赤い竜が竜王国でどうなったのか。


僕達は、しばらく知ることはなかった。





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