77話 この世界の神々
スマホのカレンダーと時計を確認する。
うん。
間違いない。
ちゃんと元の時代に戻ってきた。
「ユカリ!シオン!」
僕は辺りを見回す。
「出てきて!」
二人を探して、大樹の裏側へ回ってみる。
けれど。
「……いない?」
どこにも姿が見えない。
まさか、間違えた?
そう思った時だった。
「ワタル様、ですね」
「え?」
声を掛けられ、振り返る。
そこには、弓を携えた数人のエルフ達が立っていた。
その中でも、一人だけ水色のローブを着ているエルフが前へ出る。
「あっ!」
僕はその顔を見て思い出した。
この人は。
以前、治療所に来た総長さんの付き添いの人だ。
「私は、フラン・エリンピットと申します」
「え?」
僕は目を丸くする。
「フランさんって……カノンくんの弟さん?」
「はい」
フランさんは微笑んだ。
「奴隷船に乗せられていた私達をお救いくださった貴方様には、感謝してもしきれません」
「本当に、ありがとうございました」
フランさん達は胸に手を当て、深々と頭を下げた。
「いやいや、そんな……」
僕は少し照れてしまう。
「ユカリ様とシオン様は、我が城にてお待ちです」
「そして」
フランさんが微笑む。
「我が兄、カノンも」
僕は嬉しくなる。
「カノンくんは、総長になったんだね」
「はい」
「ぜひ会わせてください!」
「もちろんです」
フランさんが頷いた。
◇◇◇
フランさんに案内され、城の中へ入る。
通された部屋には、たくさんの花が飾られていた。
甘くて良い香りがする。
そして。
「お兄ちゃん!」
「ワタル!」
ソファーに座っていたユカリとシオンが立ち上がった。
「ユカリ!」
「お兄ちゃん!」
ユカリが駆け寄ってくる。
「無事だったんだね!」
「うん!」
シオンも僕の姿を確認すると、安心したように息を吐いた。
「まったく……」
「心配させやがって」
「ごめん」
僕は頭を下げる。
「で?」
シオンが僕の腕を見る。
「また神か?」
「たぶんね」
僕は苦笑する。
「これも持って帰ってきた」
「また鍛冶神ヴァルのおもちゃか?」
「通信ができないから分からないけど……」
僕は苗木を見る。
「たぶんね」
「その名前は、二度と聞きたくなかったですね」
「……え?」
ドキリ。
聞き覚えのある声。
恐る恐る、部屋の入口を見る。
そこには。
腕を組み、真剣な表情を浮かべたハルさんが立っていた。
「ハルさん……」
その隣には、成長したカノンくんの姿もある。
「ワタル」
「カノンくん!」
僕は嬉しくなって駆け寄る。
「やっぱり、治療所に来た患者さんがカノンくんだったんだね!」
「ああ」
カノンくんは笑う。
「あの時は世話になった。この通り、元気だ」
「良かった!」
僕達は固く握手を交わした。
「お前には、何度も助けられたな」
カノンくんが僕の持っている苗木を見る。
「そして、その苗木もそうだ」
「え?」
カノンが苗木を指差す。
「それをお前が持ち去ってくれたおかげで、エルフの村に迷い込む者は、もういなくなった」
「感謝する」
「そっか……」
僕は苗木を見る。
「役に立ったんだね」
「ふふふ」
その時だった。
ハルさんが静かに口を開く。
「ところで」
「それは、この後どうするつもりですか?」
「え?」
「まさか……」
ハルさんの目が細くなる。
「育てるつもりですか?」
「あ……」
「それとも……」
ハルさんが一歩近づく。
「あの」
「か・み・さ・ま、が引き取ってくださるのですか?」
「…………」
僕は答えられない。
「いや、その……」
「ワタルさん」
ハルさんの笑顔が怖い。
「少し、お話があります」
「ふ、そんなにいじめてやるな、ハル」
カノンが苦笑する。
「いいえ!」
ハルさんが即座に反論する。
「今度という今度は、はっきり言い聞かせなければいけません!」
「後にしろ」
「しかし!」
「ワタル、その苗木は我らエルフが管理することにした」
カノンが助け船を出してくれた。
「え?」
「鍛冶神ヴァル様から神託があったのだ」
「ヴァル様が作られた魔道具の、いくつかのうちの一つだそうだ」
「…………」
僕は苗木を見る。
「やっぱり……神のおもちゃかよ」
シオンがクッキーをかじりながら呟く。
「いっそ全部回収しちまった方がいいんじゃねぇの?」
「どこにあるか分からない神器をですか?」
ハルさんが深いため息をつく。
「また、世界会議ものだな」
カノンが苦笑する。
「どうなっているんですか、この世界の神々は!」
ハルさんが頭を抱えて叫んだ。
僕達は顔を見合わせる。
……本当に。
どうなってるんだろう、この世界の神様って。




