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黒の人形使い〜女神に貰った神器で無双する。  作者: ボアの本棚


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76話 奴隷



呪いが晴れた。


そのことを祝って、今夜は村を挙げての祭りが開かれていた。


あの後、村人達は総出で狩りに出かけた。


獲物を捕まえ、森から果物を採り、村の広場にはたくさんの料理が並べられていく。


「すごい……」


僕が初めて見る魔物の解体作業は、かなり迫力があった。


大きな魔物を、村人達が手際よく解体していく。


「これ……食べるの?」


最初は少し怖かった。


見たこともない魔物の肉だ。


でも、焼き上がった肉を一口食べてみると。


「……美味しい」


思わず声が出た。


「おかわりもあるぞ!」


村人が笑顔で皿を差し出してくれる。


「ありがとう!」


僕はありがたくいただいた。


祭りの中心では、村人達が歌い、踊っている。


僕はというと。


村の英雄として、総長さんとユーリさんの間にカノンくんと並んで座らされていた。


少し恥ずかしいけれど、みんなが嬉しそうなので、僕も一緒になって歌や踊りを楽しんだ。


そんな中。


カノンくんが、ぽつりと話し始めた。


「数十年前の話だ」


「うん」


「時渡りをしたという人間が、私達の前に現れた」


カノンくんは、祭りの明かりを眺めながら続ける。


「私達は、その男の世話をしてやった」


「家を与え、仕事を与えた」


「この村に馴染めるように、皆で気を遣った」


「……」


「その礼だと言って、男は父上に一つの箱を差し出した」


「箱……?」


「そうだ」


カノンくんの表情が曇る。


「父上が箱を開けると」


「中から黒い瘴気が噴き出した」


「そして、その瘴気が村全体を覆った」


僕は黙って話を聞いていた。


「それからだ」


「目に、常に黒いモヤがかかったようになった」


「何を見ても、ぼんやりとしている」


「そして……」


カノンくんの声が震える。


「村から、女子供が根こそぎ誘拐された」


「……!」


「奴隷として売られたんだ」


僕は言葉を失った。


「それを問題視した世界各国の王達が奴隷制度を禁止し、取り締まった」


「ようやく、村へ戻って来られた者もいる」


「だが……」


カノンくんが拳を握る。


「戻って来られたのは一部だけだ」


「ほとんどの者は、未だに行方不明のままだ」


「……」


「私の弟、フランも」


カノンくんが小さく呟く。


「フラン……」


「その後も、いろいろな人間がこの村へ来た」


「『目の呪いを解いてやる』と言って、多額の金を要求する者もいた」


「……」


カノンくんは、それ以上何も言わなかった。


僕も何も言えなかった。


ただ、祭りの喧騒の中で、カノンくんの言葉だけが頭に残っていた。


◇◇◇


その後、僕は少し疲れたので、部屋を借りて休ませてもらうことにした。


ベッドに横になり、天井を見つめる。


今日聞いた話が、頭から離れない。


『みんな……なんで、そんな酷いことができるんだろう』


『自分が同じことをされたら、嫌じゃないのかな』


『僕は嫌だよ』


目を閉じる。


『カノンくんの弟さん……行方不明なんだ』


『弟さんがいなくなって……寂しいよね』


「…………」


しばらく考える。


そして。


「よし!」


僕はベッドから飛び起きた。


バッグからスマホを取り出す。


アプリ『おもちゃ箱』を開く。


何か使えるものがないか、必死に探す。


「……あった!」


《遠見の鏡》。


これなら。


「フラン・エリンピットくんを見せて」


鏡面が、ぐにゃりと歪む。


そして、別の場所の光景が映し出された。


「……!」


暗い。


じめじめした、古い木造の部屋。


そこには、首輪を付けられたエルフ達が何人もいた。


狭い部屋に、ぎゅうぎゅうに詰め込まれている。


痩せ細った身体。


汚れた服。


怯えた表情。


その中に。


「いた……!」


カノンくんと同じ、銀色の長い髪。


年齢は、まだ幼い。


その少年は、部屋の隅で苦しそうに体育座りをしていた。


「フランくん……」


間違いない。


カノンくんの弟だ。


「待っててね」


僕はバッグから《転移魔法シール》を取り出す。


そして、鏡に映る部屋へ向けてシールを投げる。


「よし……!」


部屋全体を覆うように、巨大な魔法陣が天井に展開された。


「エルフさん達を、外のダンス会場へ転移!」


魔法陣が一気に広がる。


天井から床へ向かって、巨大な光がエルフ達を包み込んでいく。


「えっ!?」


「な、何!?」


「何が起きてるの!?」


次々とエルフ達の姿が光の中へ消えていく。


そして。


◇◇◇


村の祭り会場。


突然、上空に巨大な魔法陣が出現した。


「な、何だ!?」


「魔法陣!?」


パアアアアアッ!!


魔法陣が輝く。


そして、その中心から次々とエルフ達が現れた。


子供。


女性。


何人ものエルフ達が、突然村の広場へ転移される。


「……え?」


「ここは……?」


「何……?」


誰もが混乱している。


「デイト?」


「ザラ?」


「うわああああああ!!」


「帰ってきた……!」


「本当に……生きていたのか!」


行方不明になっていた家族を見つけ、抱き合う者。


涙を流しながら、その場に崩れ落ちる者。


突然の出来事に、ただ呆然と立ち尽くす者。


反応は様々だった。


「……あ!」


僕は大事なことを思い出した。


「目の呪いを解かなきゃ!」


僕は両手を組む。


そして、強く祈った。


『みんなの目に掛けられた呪いが』


『みんなをこんな酷い目に遭わせた人達へ、全部返りますように』


パアアアアアッ!!


緑色の光球が、エルフ達を包み込む。


そして、ゆっくりと消えていった。


「……あれ?」


一人の女性が目を瞬かせる。


「目が……」


「見える……」


「見える!」


「ここは……」


女性が辺りを見渡す。


「エルフの村……!」


「お母さん!」


「お父さん!」


再び、あちこちから歓喜の声が上がった。


僕はその様子を窓から見つめていた。


そして。


「……よかった」


これで、みんな家に帰れる。


カノンくんも、きっと喜んでくれる。


「……」


「そうだ!」


僕はふと思い出した。


「ついでに、あれも!」


僕は《遠見の鏡》をもう一度覗き込む。


「鏡さん、大樹の苗木を見せて」


鏡面がゆっくりと歪んでいく。


僕がこの時代へ飛ばされる原因となった、大樹の苗木が映し出された。


「これだ!」


僕は《転移魔法シール》を取り出す。


苗木の頭上に魔法陣を展開させる。


「苗木を、この部屋に転移!」


パアアアッ!


魔法陣が光った次の瞬間。


ボトッ。


「おっと!」


苗木が僕の部屋の床に落ちた。


「よし!」


僕は苗木を拾い上げ、用意した鉢へ移す。


土をかぶせ、根元をしっかりと固定する。


「これで大丈夫」


「僕もユカリ達に会いたくなったな」


今頃、どうしてるかな。


シオンは怒ってるかな。


ユカリは泣いてないかな。


「…………」


僕は少しだけ寂しくなった。


そして、カノンくんにあてて手紙を書く。


『何も言わずに帰ってごめんなさい』


『ありがとうございました』


『ワタル』


「これでよし」


僕は手紙をベッドの横のチェストに置いた。


そして、バッグから新しいアイテムを取り出した。


《時の指輪》。


指輪を指にはめ、ダイヤルを確認する。


「……これで帰れるかな」


僕はダイヤルに手を掛けると、ゆっくりと回した。




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