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黒の人形使い〜女神に貰った神器で無双する。  作者: ボアの本棚


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73話 勇者と魔王



「お前も、よくやるよな」


シオンがベッド脇に腰掛けながら言った。


「あの勇者達、生き返ったばっかだってのに、もう魔王討伐に向けて旅立ったぜ」


「よくやるよね」


僕の横で寝込んでいたユカリが言う。


「ははは」


「ふふふ」


僕達は顔を見合わせて笑った。


どうやら、勇者達は僕が蘇生した直後だというのに、休むことなく魔王城へ向かったらしい。


「で、お前のおかげで俺達は用済みになったわけだけど……」


シオンが苦笑する。


「王国は、まだお前を帰す気はないらしいぜ」


「勇者さん達、また怪我して帰ってくるかもしれないしね」


「だろ?」


シオンが呆れたように言う。


「あいつら、完全にお前を回復要員として見てるぜ」


「……そうみたいだね」


僕は苦笑する。


せっかく勇者達を蘇生させたのに、今度は僕まで戦争に付き合わされることになりそうだ。


「そこで、これだ」


シオンが何かを取り出した。


「転移魔法シール?」


「そうだ」


シオンはシールを僕に渡した。


「勇者と討伐隊を、魔王城の近くまで飛ばしてやった」


「え?」


「わざわざ馬車で何日もかけて行く必要なんてねぇだろ」


「確かに……」


そしてシオンは、もう一つ何かを取り出した。


「そして、これ!」


「鏡?」


「ただの鏡じゃねぇ」


シオンは得意げに胸を張る。


「遠見の鏡だ」


そう言って、僕の胸の上に鏡を置いた。


すると。


鏡の表面が、ぐにゃりと歪み始める。


やがて、そこに別の場所の光景が映し出された。


「勇者達、魔王城にいる魔王以外の魔族は、全部倒してたらしいな」


「すごい……」


「マジで、魔王さえ倒せば完全勝利だ」


◇◇◇


ドバンッ!


魔王城の大広間。


勢いよく扉が開かれた。


「ぐっ!?」


玉座に座っていた魔王が立ち上がる。


「勇者ども……復活したか!?」


その視線の先には、武器を構えた三人の勇者達。


「久しぶりだな、魔王!」


「今度こそ、決着をつけましょう!」


「ええ!」


三人が一斉に構える。


その戦いを、僕達は遠見の鏡越しに見ていた。


「ユカリ」


「うん」


「魔王に特大の雷と竜巻だ」


「任せて」


僕が指示すると、ユカリが魔力を込める。


「雷と竜巻!」


◇◇◇


ズガアアアアアンッ!!


バリバリバリバリッ!!


ブワアアアアアッ!!


「ギャアアアアアッ!!」


魔王の頭上から、無数の雷が降り注ぐ。


同時に巨大な竜巻が発生し、魔王の身体を容赦なく切り裂いていく。


「な、何だ!?」


「何が起きている!?」


勇者達が混乱する。


「分かりません!」


「感じたことのないほどの魔力量を感じます!」


「きゃあああああっ!」


その凄まじい威力に、勇者達まで慌てふためいている。


そして。


「ぐ……」


地面に倒れた魔王は、もはや虫の息だった。


「と、トドメを刺すぞ!」


勇者が剣を構える。


「ええ!」


「はい!」


三人が一斉に武器を構えた。


その瞬間だった。


魔王の身体を、緑色の光が包み込んだ。


「なっ!?」


みるみるうちに、魔王の傷が癒えていく。


「ま、マジかよ!?」


勇者が叫ぶ。


「ここに来て全回復かよ!」


「さっきから、何者かの意思を感じます!」


「物凄い量の回復魔力です!」


三人は魔王の反撃に備え、身構える。


魔王がゆっくりと立ち上がった。


「ふ……ふふ……」


「神は、私の味方をしたようだな!」


魔王が腕を突き出す。


「喰らえ、勇者ども!」


「土に還るがいい!」


「ぐっ!」


勇者達が防御の構えを取る。


しかし。


突然、魔王の身体を白い光が包み込んだ。


「な……!?」


「ぐあああああっ!!」


魔王が頭を抱え、苦しみ始める。


「な、何だ!?」


勇者が叫ぶ。


「魔王の身体から、瘴気が抜けていくぞ!」


「魔王が……浄化されています!」


聖女が驚愕する。


「か、神よ……」


「魔王を許せと、仰るのですか!?」


「ぐあああああああああっ!!」


魔王の絶叫が大広間に響き渡る。


そして。


ドサッ!


魔王の身体が床に倒れた。


「…………」


三人は、しばらく動けなかった。


「……終わったのか?」


勇者が恐る恐る尋ねる。


「分かりません」


賢者が魔王を見つめる。


そして、静かに首を横に振った。


「ですが……魔王から悪の気が感じられません」


「完全に浄化されたようです」


「浄化……?」


三人が戸惑っていると。


「う……」


魔王がゆっくりと身体を起こした。


「うぅ……」


フラフラと立ち上がる。


しかし、その姿は先ほどまでとはまるで違っていた。


禍々しい瘴気も、邪悪な魔力も感じられない。


ただ、疲れ果てた一人の男のようだった。


「私は……何をしていたのだ……?」


魔王が呟く。


「あなたは……人類を滅ぼし、世界を征服しようとしていたのです!」


聖女が叫ぶ。


「世界征服……?」


魔王は自分の手を見つめる。


「人類を滅ぼす……?」


「私は、そんな馬鹿なことをしていたのか……」


そして魔王は、ゆっくりと玉座へ戻った。


「……済まないことをした」


「だが、今の私がそう言ったところで、許せるものではないだろう」


魔王は目を閉じる。


「討つといい」


「私は、もう何もしない」


勇者達は顔を見合わせた。


「どうすりゃいいんだよ……」


勇者が困ったように呟く。


「……あの様子では、もう悪事を企てることはないと思います」


賢者が答える。


「魂の穢れも感じません」


聖女も頷く。


「信じてみても……いいのではないでしょうか」


「そうだな……」


勇者が剣を下ろした。


その時だった。


ギィ……。


大広間の扉がゆっくりと開いた。


◇◇◇


「後は、あの王子達が決めるだろ」


遠見の鏡を見ながら、シオンが言った。


「そうだね」


僕も頷く。


そして。


パアアアアアッ!


突然、僕達の頭上から黄色い光が降り注いだ。


「え?」


「何だ!?」


「きゃっ!」


光は僕達三人の身体を包み込んでいく。


次の瞬間。


僕達は、自宅のソファーに座っていた。


「……帰ってきた?」


僕が周囲を見渡す。


見慣れた部屋。


見慣れた家具。


間違いなく、僕達の家だった。


「全く……」


シオンがソファーから立ち上がる。


「神共には、いい加減にしてほしいぜ」


「本当にね……」


僕も苦笑する。


しばらくすると、シオンが何か言いづらそうに僕を見る。


「なぁ、ワタル」


「何?」


「俺が……」


シオンが少しだけ言葉を詰まらせる。


「生き返らせてほしい人がいるって言ったら……」


「生き返らせてくれるか?」


僕は少しも迷わなかった。


「いいよ」


「……え?」


「生き返らせてあげる」


僕は即答した。


「いいのかよ!」


シオンが驚いた顔をする。


「うん。いいよ」


僕は頷く。


「僕だって、ユカリが死んだら……生き返らせるよ」


ユカリが僕を見上げる。


「……ワタル」


シオンはしばらく黙っていた。


そして。


「……そうか」


それだけ呟くと、シオンは自分の部屋へ戻っていった。


「……」


閉じられたドアを、僕とユカリは黙って見つめる。


シオンは誰を生き返らせたいのだろうか。






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