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黒の人形使い〜女神に貰った神器で無双する。  作者: ボアの本棚


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72話 勇者召喚 



僕達は今、非常に困っている。


どうやら僕達は、別の異世界で行われた勇者召喚に巻き込まれてしまったらしい。


そして今、目の前には、僕達をこの世界へ連れてきたという女神、マーレさんが姿を現している。


『異世界の勇者ワタル、ユカリ、シオンよ』


『そなた達の活躍、しかと見ておった』


『この世界は今、かの魔王討伐戦争によって傷ついておる』


『どうか、その力でこの世界を救ってほしい』


『王子よ、勇者達を頼んだぞ』


「はっ、お任せください!」


王子が深々と頭を下げる。


するとマーレさんの姿が、淡い光に包まれていく。


その言葉を最後に、マーレさんは消えてしまった。


僕達の後ろには、膝をついた王子様と大勢の騎士達がいる。


「皆様の御身は、王城にて保護いたします」


王子がそう告げた瞬間だった。


「おい。黙って聞いてりゃ勝手なこと言ってるが……この世界の勇者達はどうした?」


実戦訓練の途中で連れてこられたシオンが、疲れ切った表情で尋ねる。


その隣では、ユカリが僕に寄りかかり、すっかり眠っている。


「勇者様方は、魔王討伐戦争の際に相討ちとなり、深手を負われてしまいました」


王子が静かに答える。


「三人とも、命からがら帰還されたのですが……その後、力尽きてしまわれたのです」


『勇者様達を復活させれば、僕達は必要ないってことだよね』


僕がそう考えていると、王子はさらに続けた。


「そして魔王は、現在も生きています」


「は?」


シオンが目を見開く。


「討伐する奴がいないのに、魔王は生きてるのか!?」


「はい」


王子は苦々しい表情で頷いた。


「現在は深手を負い、動くことすらままならない状態だと聞いております。しかし、もし魔王が完全に回復すれば……今度こそ、この世界は終わります」


「なるほど……」


僕は少し考える。


どうやら、この世界ではかなり切羽詰まった状況らしい。


「わかりました」


僕は王子を見る。


「僕達を、勇者様達のところへ連れていってください」


「勇者様達のところへ?」


「はい」


僕は頷いた。


「僕が勇者様達を蘇生させます」


「……え?」


王子の顔が固まった。


「死者を……生き返らせるのですか!?」


その言葉に、周囲から一斉にざわめきが起こる。


「お前、死者蘇生もできるのか!?」


シオンが僕の肩を掴む。


「分からないけど……」


僕は困ったように答えた。


「やってみないと分からないよ」


「おいおい……」


「でも、勇者様達に復活してもらわないと、僕達も帰れないでしょ?」


「確かにそうだけどよ!」


シオンが頭を抱える。


王子はしばらく呆然としていたが、やがて我に返った。


「……わかりました」


「御三方の墓前までご案内いたします」


「どうぞ、馬車へお乗りください」


◇◇◇


僕達が連れてこられたのは、見晴らしの良い丘だった。


そこには三つの墓が並んでいる。


「こちらが、御三方の墓でございます」


王子が指し示す。


僕は墓を見つめる。


そして、その奥にあるものを見て、思わず息を呑んだ。


「……え?」


「こちらが、御三方のご遺体です」


「……」


そこにあったのは、三人分の白骨だった。


ほ、本当に骨しか残っていない……。


「本当によみがえらせることができるのですか?」


王子が不安そうに尋ねる。


シオンとユカリは、先に城へ戻り、休ませてもらっている。


この場にいるのは僕と王子、それから大勢の騎士達だ。


みんな、固唾を呑んで僕を見つめている。


「ダメかもしれません」


僕は正直に答える。


「でも……やってみます」


僕は三人の白骨死体を前にして、両手を合わせた。


そして、必死に祈る。


『勇者様……聖女様……賢者様……』


『戻ってきてください』


『魔王から、この世界を救ってください!』


すると。


三人の白骨死体を、眩い光が包み込んだ。


「なっ!?」


「光が……!」


「これは……!」


周囲から驚きの声が上がる。


光はどんどん強くなっていく。


そして。


ドンッ!!


まるで爆発したかのように、凄まじい光が辺り一面を包み込んだ。


「うわっ!」


思わず腕で顔を覆う。


やがて光が収まる。


僕は恐る恐る前を見る。


「……!」


肉体が……戻っている。


三人の白骨だった身体には、かつての肉体が完全に蘇っていた。


「ん……?」


一人の男が、ゆっくりと身体を起こす。


「あぁ……」


続いて、もう一人。


「うぅ……」


そして三人目も、ゆっくりと立ち上がった。


「私は……一体……?」


聖女らしき女性が、不思議そうに辺りを見回す。


「俺達は魔王と相討ちになって……」


勇者が自分の身体を確認する。


「そうだ。命からがら帰ってきたんだったな」


賢者も周囲を見渡す。


その瞬間、勇者の表情が変わった。


「そうだ!魔王は!?」


「……!」


「魔王はまだ死んでねぇ!」


勇者が叫ぶ。


「あいつが回復しちまったら大変だ!」


「そうですね」


賢者が頷く。


「早急に討伐する必要があります」


「回復はお任せください!」


聖女が力強く胸を張る。


「さあ、行きましょう!」


「「「おう!」」」


三人が力強く声を揃えた。


その光景を前に、王子達は誰一人として言葉を発することができなかった。


しばらくして。


勇者が大勢の人々を見渡す。


「あれ?」


そして、その中に見知った顔を見つけた。


「あ?なんだ、クライブじゃねぇか」


勇者が王子に声を掛ける。


「どうしたんだ?こんなに大勢集まって」


「……」


王子は答えられない。


代わりに、震える声で呟いた。


「……蘇った」


「え?」


「勇者様達が……蘇ったぞ!」


「「「おおおおおおおおおお!!!」」」


次の瞬間。


地面が揺れるほどの大歓声が巻き起こった。


「良かった……!」


「レオン!セリア!ロイター!」


「本当に……良かった!」


王子は涙を流しながら、蘇った三人を見つめている。


勇者達は困惑した様子で顔を見合わせる。


「なあ……なんでみんな泣いてるんだ?」


「何かあったのでしょうか?」


「……私達が眠っている間に、何か大きなことが起きたようですね」


すると王子が、僕の方を振り返った。


「あら?」


聖女が僕に気づく。


「こちらの子は?」


「聖者ワタル様です」


王子が僕を紹介する。


「君達が亡くなった後、魔王復活の兆しが見えたため、新たな勇者召喚の儀が執り行われたんだ」


「そして、このワタル様が……」


王子は涙を拭いながら続けた。


「君達を蘇らせた」


「何!?」


勇者が驚きの声を上げる。


「俺達、死んでたのか!?」


「死者蘇生……?」


聖女が僕を見つめる。


「それって、聖者の神域魔法じゃない……!」


「まさか……」


賢者も驚愕している。


「死者を蘇らせるほどの力を持つ聖者が、この世界に召喚されたということですか」


「はい!」


王子が力強く頷く。


「これで、魔王を討伐できます!」


「「「ありがとうございます、ワタルさん!」」」


三人が揃って僕に頭を下げる。


「……」


僕は三人を見つめる。


とりあえず。


僕の役割は終わったかな。


これで魔王を倒せば、僕達は元の世界に帰れるはずだ。


それにしても……。


「さすがに疲れた……」


突然、身体から力が抜けていく。


「ワタル様!?」


王子の声が聞こえる。


「おい、ワタル!」


誰かが僕を支えようとしている。


でも、もう無理だった。


視界が暗くなっていく。


そして、僕の意識はそこで途切れた。







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