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黒の人形使い〜女神に貰った神器で無双する。  作者: ボアの本棚


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70/98

70話 え?怒られてる?



「……ん」


ゆっくりと目を開ける。


「ここは……?」


見慣れない部屋だった。


「僕の部屋……?」


そう呟いた瞬間。


『やっと起きたね』


「え?」


どこからか、男の人の声が聞こえた。


『僕だよヴァル』


「ヴァルさん?」


その瞬間。


ザザザッ。


視界が乱れた。


◇◇◇


「まずいなぁ……」


鍛冶神ヴァルは、額に手を当てて困った顔をしていた。


「この子、時の迷宮に迷い込んでる」


目の前には、眠り続けるワタルの姿がある。


「このままじゃ、永遠に目覚めない」


「どうしよう……」


ヴァルは頭を抱えた。


◇◇◇


「……ん」


また、目を開ける。


「ここは……?」


「……どこ?」


ガシャンッ!


突然、ガラスが割れる音が響いた。


「うわっ!」


驚いて上体を起こす。


部屋の入り口には、シスター服を着た女の子が立っていた。


少女は僕を見ると、大きく目を見開く。


「……」


何も言わない。


ただ、驚いたような顔をして。


足早に部屋から出て行った。


「……何だったんだ?」


僕は辺りを見回す。


石造りの壁。


大きな窓から差し込む、暖かな日差し。


ベッドに、小さな机。


どこか懐かしいような部屋だった。


でも。


「やっぱり、ここは知らない場所だ」


ベッドから立ち上がろうとする。


「うっ……」


足元がふらついた。


慌てて壁に手をつく。


「……体が重い」


何度も同じような時間を繰り返している。


起きて。


知らない場所にいて。


また眠って。


そして、また同じように目を覚ます。


何度繰り返したのか、もう分からない。


「……疲れた」


僕はベッドに腰を下ろした。


その時だった。


ふと、部屋の隅に置かれた鏡が目に入った。


「……鏡?」


近づいてみる。


そこには、僕の姿が映っていた。


「……」


鏡の中の僕が、こちらを見ている。


当たり前のことのはずなのに。


なぜか、違和感があった。


すると。


『起きろ』


「……え?」


鏡の中の僕が口を動かした。


『夢から目覚めなさい』


「……!」


僕は一歩後ずさった。


「今……」


鏡の中の僕が、もう一度口を開く。


『目覚めなさい』


「夢……?」


僕は呟いた。


「これが……夢?」


鏡の表面が、波紋のように揺れ始める。


ぐにゃり。


映っていた僕の姿が歪む。


そして。


鏡に別の光景が映し出された。


「……!」


そこにいたのは、眠っている僕だった。


その横には、シオンがいる。


「ワタル!」


必死に僕を呼んでいる。


そして、その隣にはユカリ。


泣きそうになるのを必死に堪えながら、僕を見つめている。


「ユカリ……」


「シオン……」


僕の胸が締めつけられた。


『僕だよ。ヴァル』


声が響く。


『君は今、夢の迷宮に迷い込んでいる』


「夢の……迷宮?」


『そう』


『何度も同じ時間を繰り返しているのは、そのため』


「じゃあ……」


「ここは本当の世界じゃない?」


『そう』


『夢』


『僕が作ったおもちゃ』


鏡の中の光景が揺れる。


眠り続ける僕。


その傍で、僕を呼び続けるシオン。


そして、じっと涙を堪えるユカリ。


『認識しないとダメ』


『これは夢だと』


「……」


『君自身が、夢だと認識しなければならない』


『そして』


少しだけ間が空く。


『いい加減、起きて!』


「え?」


思わず目を丸くする。


「怒ってる……?」


『怒ってない!』


「怒ってるじゃん……」


『君が何度起こしても起きないからでしょ!』


「……ごめんなさい」


『謝ってる暇があったら、さっさと起きて!』


鏡の中のジーンの声が大きくなる。


その瞬間。


目の前の景色が大きく歪んだ。


部屋が崩れていく。


壁が。


床が。


天井が。


全てが光の粒へと変わっていく。


「うわっ!」


僕は思わず目を閉じた。


『ワタル』


最後に、ジーンの声が聞こえた。


『君を待っている人たちがいるでしょ?』


「……!」


「ユカリ……」


「シオン……」


「ハルさん……」


僕は三人の名前を呟く。


そして。


「帰らなきゃ」


その瞬間、世界が真っ白になった。






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