63話 クソ野郎
『と、言う事だから後はよろしくね』
それだけ言うとヴァル様は消えた。
突然重要な夢を見せられ、本当にそれだけに言って、まだ日が上がらない内に起こされたハルは思った。
「クソ野郎」
◇◇◇
「以上、これが『まーくん』『けんくん』『せいちゃん』のお話です」
「正体は200年前の勇者方だったわけですが、貴方達が授かった力は彼等の願いが詰まった大事な力です」
「ないとは思いますが、注意してください」
「暴走や魔力枯渇が心配です。私が近くにいない時に絶対に使わないでください」
「いいですね」
「はい」
「はーい!」
「ん」
その後もハルさんは魔法の危険性を僕達に説いた。
特にシオンに向かって。
そしてサミュエルさんに報告があるからとお城に出かけて行った。
◇◇◇
ズガアアアンッ!!
ズウウウンッ
何事!と外に出てみると、南にそびえ立っていた大きな山が二つに割れていた。
「やっべぇ、やっちまった」
シオンが言う事を聞く訳もなく、けんくんの基準で斬撃を放ってしまったそうだ。
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン
別荘の方の呼び鈴だ。
「はい」
「ハルはいないのかい!」
「ホムラさん。こんにちは」
「ハルさんならお城にいっています」
「ユカリがクラスの子とけんかして、特大の氷魔法で氷らせちゃったんだよ」
よく見たらホムラさんの後ろにユカリが隠れている。
「ケンカした子は魔法が使える子で、使えないユカリをからかったんだよ」
ホムラさんは困った様にため息をつく。
「そ、それでその子は、怪我は?」
「大丈夫だよ、すぐに助けたから
「良かったです」
「ハルが来たら話があるから来いって言っといとくれ」
「はい、ご迷惑おかけしてすみませんでした!」
僕は頭を下げた。
◇◇◇
「貴方達は私を何だと思っているのでしょうか」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「はぁ、シオンさん。朝に散々魔法の危険性を教えましたよね」
「ユカリさん。魔法は人に向けて撃ってはいけませんと教えましたよね」
「向こうから先に撃ってきたんだもん」
「事情は聞いています」
「しかし、貴方達の魔法は普通ではないのです」
ハルさんがユカリのコップを手にしてジュースを飲みだした。
「あ!ユカリのオレンジジュース!」
「普通の人の魔力がこのコップの底をつく量しかなかったとしたら」
「貴方達の魔力はこれぐらいです」
ドン!
そう言って満杯の2リットルペットボトルを置いた。
「あー。なんか分かるわ」
シオンが呟く。
「力のコントロールも出来る様になるまでは魔法を使わないでください」
それだけの格差があるなら、聖女さんの力を受け継いだ僕が患者を治療したら、どうなるんだろう?
そう思ったら少し怖くなった。




