44話 古代古城ダンジョン
「風が気持ち良いですわー!」
「ひ、姫様!速度を落としてくださいませええ!」
「ジャスミンさん!ペダルから足を離して!」
「はやーい!はやーい!」
「もう慣れたぜ」
僕はため息をつく。
こうなることは分かっていた。
ジャスミン王女が、
「私が操作してみたいですわ!」
なんて言い出した時点で。
なぜかハルさんと同じ匂いがしたのだ。
好奇心旺盛で、一度興味を持つと止まらないタイプ。
「皆さんには、私の好きな場所をご紹介しますわ!」
ジャスミン王女は楽しそうに言う。
まず向かったのは、王都の中心。
そこには巨大な湖が広がっていた。
「こちらが、王宮が建つ大オアシスです」
「砂漠の国では、水は何よりも大切なもの」
「このオアシスは、我が国の象徴なのです」
湖の周囲には緑豊かな森や色鮮やかな花畑が広がっている。
どこまでも続く砂漠の中に、まるで別世界が存在しているようだった。
「この水があるからこそ、私たちはこの砂漠で生きていけるのです」
その景色に思わずスマホを向ける。
カシャッ。
砂漠に映える青と緑。
そして白い王宮。
写真に残したくなるほど美しい光景だった。
「続いて、砂時計塔ですわ」
次に訪れたのは、王宮の隣に建つ巨大な塔。
「数百年前の魔法技術によって作られた巨大な砂時計で、今もなお時を刻み続けています」
「王都のどこからでも見えるため、街の人々にとっては『帰る場所を示す目印』のような存在ですね」
「こんなに大きな砂時計、初めて見ました!」
僕は目を輝かせながら見上げた。
その後も。
闘技場。
巨大な市場。
そして大神殿。
王都の名所を次々と案内してもらった。
この国では、男神シャール様が信仰されているらしい。
神殿には多くの人々が訪れ、祈りを捧げていた。
「姫様」
一通り見終わった頃、マリベルさんが声をかける。
「そろそろお戻りになりませんと」
その言葉に。
「最後に、古代ダンジョンっていうのを見ておきたい」
シオンが言った。
「良いですね!」
ジャスミン王女が即答する。
「行きましょう!」
「姫様!」
マリベルさんの叫び声が王都に響いた。
◇◇◇
「ここが古代ダンジョンですわ」
空飛ぶ車から下を見る。
そこには、巨大な円形の街が広がっていた。
「中心部分に入口があります」
「地上からでは分かりにくいのですが、地下深くに続いているのです」
「じゃあ、降りてみようぜ」
「はい!」
「あなたは先ほどから何なのですか!」
マリベルさんがシオンを睨む。
しかし、シオンは気にした様子もない。
地上へ降りる。
目の前にあったのは、古びた石造りの入口だった。
「小さいですね」
僕は思わず呟く。
入口は僕の背丈ほどしかなく、扉は外されて横に置かれている。
長い年月の間に風化し、ところどころ崩れていた。
「中に入れば広いそうですが」
ジャスミン王女が説明する。
「いつの時代に作られたものなのか、未だに詳しいことは分かっていません」
「攻略自体は何度もされています」
「ですが……」
少し困ったように眉を下げる。
「不思議なことに、攻略報酬が一度も発見されていないのです」
その話を聞いて、シオンはしばらく入口を眺めていた。
そして。
「ユカリ」
「まーくんを出してくれ」
「いいよ」
ユカリはリュックに手を入れる。
そして、ユカリの腰丈ほどの人形を取り出した。
「まあ……それがユカリ様の人形ですのね」
ジャスミン王女が興味深そうに見る。
「可愛らしいお顔ですわ」
「まーくんだよ!」
ユカリは嬉しそうに答える。
シオンはまーくんを見る。
「頼む」
「この下に埋まっているダンジョンを、外に出してくれ」
まーくんは少し考えるように首を傾げる。
そして小さく頷いた。
両手を掲げる。
「……」
次の瞬間。
ゴゴゴゴゴゴゴ……!!
大地が震え始めた。
「え?」
「な、何ですの!?」
ズズズズズ……。
砂が大きく動く。
そして。
ズザアアアアア!!
地面の下から、巨大な石造りの建造物が姿を現した。
まるで城。
いや、古代の巨大神殿。
砂に埋もれていたダンジョンそのものが、地上へと押し上げられていく。
「きゃあああああ!」
「ひ、姫様!!」
「ユカリ、こっちに!」
僕は慌ててユカリを抱き寄せる。
「すごい!」
「おおきいおしろ!」
ユカリだけは目を輝かせていた。
突然現れた巨大な古代遺跡。
その光景に、王女も、兵士も、冒険者も、街の人々も言葉を失う。
ただ一人。
シオンだけが。
「やっぱりな」
そう呟き、ニヤリと笑った。




