↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒の人形使い〜女神に貰った神器で無双する。  作者: ボアの本棚


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
43/95

43話 そらとぶくるま



迎賓館。


王都でも最高級の客人を迎えるために造られた建物。らしい。


白い石造りの広間には美しい絨毯が敷かれ、壁際には砂漠に咲く珍しい花が飾られていた。


「こちらでお待ちください」


マリベルさんに案内され、僕たちは部屋へ入る。


しばらくすると。


「お待たせしました」


扉が開いた。


入ってきたのは、ジャスミン王女だった。


「ライオンさん……」


ユカリが緊張したように呟く。


「静かに」


僕は人差し指を口元に当てる。


ジャスミン王女の後ろには、一組の男女がいた。


「……」


ハルさんはすぐに立ち上がった。


服装。


立ち振る舞い。


その雰囲気。


一目で分かる。


この二人は王族だ。


「グリンバル獣王国国王、レオル・グリンバルだ」


「そして妻のエリザだ」


ハルさんはすぐに頭を下げる。


「お初にお目にかかります」


「ハルと申します」


「こちらは私の仲間です」


僕たちも続いて挨拶をする。


「ワタルです」


「シオンだ」


「ユカリ!」


「……」


タイミングよく挨拶するユカリに、少しだけ空気が和らいだ。


「楽にしてくれ」


国王陛下が笑う。


「今日は謁見ではない」


「遠い国から来た客人をもてなしたいだけだ」


ハルさんは少しだけ表情を緩めた。


「ありがとうございます」


全員が席につく。


目の前には豪華な料理と飲み物が並べられた。


しかし、ハルさんはすぐには手を付けなかった。


それを見ていた王妃様が尋ねる。


「警戒していますか?」


「失礼でしたら申し訳ありません」


ハルさんは正直に答える。


「ですが、相手が王族である以上、最低限の警戒は必要だと考えています」


国王陛下は怒るどころか、楽しそうに笑った。


「正直で良い」


「力を持つ者ほど、油断して身を滅ぼす」


「警戒できる者は信用できる」


ジャスミン王女も微笑む。


「やはり思った通りですね」


「黒い人形使いという名前だけを聞けば、危険な存在だと思う者もいるでしょう」


「ですが、あなた方は違う」


ハルさんは静かに答えた。


「名前がどう呼ばれているかは重要ではありません」


「大切なのは、その力を何のために使うかです」


一瞬、部屋が静かになる。


王妃様が優しく微笑んだ。


「素敵な考え方ですね」


その後は食事をしながら、穏やかな会話が続いた。


そして頃合いを見て国王陛下が口を開く。


「さて……」


「そなたたちを呼んだ理由を話そう」


「砂漠の奥に眠る古代ダンジョンについてだ」


空気が変わった。


「そなた達はグランデスバルのソーマ王と親しいと聞く」


「魔王復活に協力するつもりなのか?」


「いいえ」


ハルさんは迷わず答える。


「我々に魔王復活の意思はありません」


「ではなぜ、ダンジョンを巡っている?」


「鍵を集めているのではないのか?」


ハルさんは首を横に振る。


「集めているわけではありません」


「彼らは、その鍵が持つ意味を知らずに手にしてしまっただけです」


「偶然手に入った鍵は、現在アレス公国にて厳重に管理しています」


国王陛下は続ける。


「では、なぜグランデスバルを助けた?」


「彼らが運営する治療所に患者として来たのが、ソーマ王とエミリア王女でした」


「私たちは彼らを治療しました、一人の患者として」


「そこに国は関係ありません」


ハルさんの声は静かだった。


「その者が誰であろうと、病に苦しんでいるなら治す」


「それが『黒い人形使い』の活動方針です」


「病に苦しむ民を救いたい」


「ただ、それだけです」


「魔王復活とは別の問題です」


僕は隣で聞きながら、場の緊張感に冷や汗が止まらなかった。


しばらく沈黙した後。


国王陛下が口を開く。


「少なくとも、今この場でそなたたちを敵と判断する理由はない」


「だが王として、完全に警戒を解くこともできぬ」


ハルさんは頭を下げる。


「それで構いません」


「信用とは、求めるものではなく積み重ねるものですから」


「うむ」


国王陛下は満足そうに頷いた。


「子供らには退屈な時間だったかな」


「ジャスミン」


「食事も済んだことだ。部屋に案内してやりなさい」


「はい、お父様」


「お母様、失礼いたします」


◇◇◇


「あなた方のご活躍! 何度も聞いて楽しみにしていましたわ!」


ジャスミン王女の私室は、とても広かった。


大きな窓からは涼しい風が入り、砂漠の暑さを忘れさせてくれる。


ハルさんは国王陛下とまだ話があるらしく、僕たちだけで王女様の部屋に来ていた。


「縮小拡大する家に、空を飛ぶ乗り物!」


「ぜひ見てみたいです!」


王女様はキラキラした目で僕たちを見る。


「じゃあ、空飛ぶ車に乗せてやるから、国を案内してくれよ」


シオンが笑う。


「姫様に対して、その口調は」


マリベルさんが注意する。


しかし。


「いいのよ、マリベル」


王女様は楽しそうに笑った。


「くるまというのですね!」


「分かりました! 私が国をご案内いたします!」


「姫様!」


マリベルさんが慌てる。


「得体の知れない物に乗せるわけには参りません!」


「嫌です!乗ります!」


しばらく言い争いが続いた。


そして―。


「……はぁ」


ついにマリベルさんが折れる。


「分かりました」


「ただし、兵士を一人護衛として同行させます」


「車は五人乗りだから、乗れるのは王女様とあと一人だけだぜ」


シオンがニヤニヤしながら言った。


「なぜ、それを早く言わないのです!」


マリベルさんは疲れた顔で頭を抱えた。


こうして。


ジャスミン王女による、空からの王都観光案内が始まった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。