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黒の人形使い〜女神に貰った神器で無双する。  作者: ボアの本棚


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37/48

37話 宗教



今日も朝から治療を求める人々が、治療所の前に長い列を作っていた。


「次の方、どうぞ」


診察室へ入ってきたのは、両目に大きな傷跡を残した若い男の人と、その付き添いの女の人だった。


番号札を確認し、僕は二人に椅子へ座ってもらう。


「この人は強盗に襲われ、両目を失いました。どうか女神アローナ様のお力で治していただけないでしょうか」


女性が頭を下げる。


「お願いします」


男性も震える手を差し出した。


『せいちゃん』はその手を優しく握る。


そして、祈りを捧げ始めた。


淡い光が男性の両目を包み込む。


しばらくすると、その光はゆっくり消えていった。


傷跡は跡形もなく消えている。


「終わりましたよ」


男性は恐る恐る目を開く。


「……見える」


「見える……!」


「ゼシカ!」


「イアン!」


二人は抱き合い、涙を流した。


「ありがとうございます!」


「本当にありがとうございます!」


何度も頭を下げながら、二人は嬉しそうに帰っていった。


「次の方、どうぞ」


今日も忙しい一日になりそうだ。


◇◇◇


日が沈み始めた夕方。


ようやく治療所の仕事が終わった。


「やーっと終わったな」


シオンが空になった薬箱や道具を片付ける。


「今日もよく売れたぜ!」


雑貨屋の方も大盛況だったらしい。


「せいちゃんもお疲れ様でした」


「ゆっくり休んでね」


せいちゃんは小さく頷くと、ユカリのリュックの中へ戻っていった。


「ユカリを部屋まで運ばないと」


「私がお手伝いします」


突然、声を掛けられた。


振り返ると、そこには白い服を着た年配の男性と、灰色の服を着た体格の良い男性、そして同じ灰色の服を着た少女が立っていた。


誰だろうか。


「え?」


灰色の服の男性が、眠っているユカリを抱き上げる。


「ちょっと! 待ってください!」


僕が止めようとすると、灰色の服の少女が前に出た。


「御使い様のお世話は、私にお任せください!」


「み、みつかい?」


「はい」


少女は真剣な表情で頷く。


「貴方方は女神アローナ様より神器を授かった選ばれし御方」


「女神様の御使い様でございます」


白い服の男性も一歩前へ出た。


「本日はここでお休みいただき、明日の朝、本教会のあるライトアル聖教国へご案内いたします」


「……」


頭が追いつかない。


今日はハルさんが城へ呼ばれていて、この場にはいない。


そんな時に……。


「待ってください!」


灰色の男性がユカリを抱えたまま、扉へ向かう。


ドアノブに手を伸ばした瞬間。


ふわり。


ユカリの身体が浮かんだ。


そして、扉が勝手に開く。


「え?」


一瞬の出来事だった。


僕は慌てて駆け込み、閉まる扉の隙間から中へ入り込む。


すぐに鍵を掛けた。


「シオン!」


「分かってる!」


いつの間にかシオンも部屋の中にいた。


シオンはユカリを肩に担ぎ上げる。


「まーくんを出せ!」


「開けてください、御使い様!」


ドンドンドン!


「御使い様!」


外から何度も扉を叩く音が響く。


僕は急いでリュックから『まーくん』を取り出した。


「まーくん、ごめん!」


「今すぐハルさんのところへ転移させて!」


まーくんは頷き、杖を振る。


その瞬間。


ドッ!


外から強烈な衝撃音。


「ギャアアア!」


「な、何故ですか女神アローナ様!!」


◇◇◇


ドササッ!


「ぐっ……」


「いてぇ……」


目を開けると、見覚えのある部屋だった。


でも、何かがおかしい。


視界が逆さまになっている。


どうやら、転移の勢いで床に転がったらしい。


「大丈夫ですか!」


ハルさんが慌てて駆け寄ってくる。


サミュエルさんの執務室だった。


ハルさんとサミュエルさんが、僕達を起こしてくれる。


「何があったんですか?」


ハルさんが心配そうに聞く。


「ライトアル聖教会の奴らが、俺達を攫いに来たんだよ」


シオンが服についた埃を払いながら答える。


「何ですって……!」


ハルさんの表情が険しくなる。


「手紙を送ったその日に、誘拐まがいの行動を起こすとは……」


サミュエルさんも驚きを隠せない。


「一体、何を考えているのでしょう」


僕には何が起きているのか、まだ理解できなかった。


ただ一つ分かることは。


僕達は今、女神アローナを信仰する教会から狙われているということだった。






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