34話 誤解
魔大国・白雪城。
会議室には、ハル、ソーマ、そして魔王側近のシエルマンが集まっていた。
「早速ですが、あなた方は魔王様の復活に協力してくださるのですね」
シエルマンの言葉に、ハルは無言になる。
「その事ですが」
シエルマンかま遮る。
「アレス公国が『黒の人形使い』を保護していることは聞いております」
「4本もの封印の鍵を集めていることも」
「そして今回、魔大国を救うために来てくださった」
シエルマンは深く頭を下げる。
「ありがとうございます」
「我々は……もう誰にも見捨てられたと思っていました」
「しかし、魔王様を想う者達がまだ存在していたのですね」
「お待ちください」
ハルが手を上げる。
「大変申し上げにくいのですが……」
「いくつか重大な誤解があります」
「誤解……ですか?」
「はい」
ハルは額に手を当てる。
「まず第一に、アレス公国は魔王復活を望んでいません」
「え?」
シエルマンが目を見開く。
「ですが、鍵を集めているのでは?」
「違います」
「正確には……集めてしまったのです」
「……?」
ハルは説明する。
「ワタルさん達は冒険者として活動している途中、偶然ダンジョン攻略報酬として鍵を入手しました」
「魔王復活の目的で探していたわけではありません」
「鍵の危険性を知った後は、アレス公国で厳重に管理しています」
「では……」
シエルマンは困惑する。
「『黒の人形使い』とは?」
ハルは少し遠くを見る。
「関係ありません」
「ワタルさん達は……」
「ただ困っている人を助けているだけです」
「魔族だから」
「人間だから」
「そんな区別をしていません」
そこでソーマが口を挟む。
「シエルマン」
「ワタルさん達は、僕とエミリアが魔族だと知っても何も変わりませんでした」
「むしろ、僕達が苦しんでいることを心配してくれました」
シエルマンは黙る。
「……では」
「魔王様を助けるためではなく……」
「我々を救うために?」
「はい」
ハルは即答する。
「魔大国の民を救うためです」
しかしシエルマンはまだ納得できない。
「ですが……」
「魔王様は現在も苦しんでおられます」
「あなた方ほどの力があれば、封印を解くことも可能なのでは?」
その言葉にハルの表情が少し変わる。
「……可能かもしれません」
「ですが、しません」
「なぜです?」
ハルは静かに答える。
「それは、魔王様ご本人が望むことなのか分からないからです」
「ユカリさんは、魔王様と会っています」
「え!?」
シエルマンが立ち上がる。
「それで?」
「封印を解かなかった?」
「ただ……エミリアさんを会わせただけです」
シエルマンは絶句する。
「……魔王様に?」
「はい」
「会ったのに……何も要求しなかった?」
「はい」
ハルは最後に告げる。
「もし我々が魔王復活を目的としているなら」
「わざわざ他国に支援要請などしません」
「瘴気の浄化も、人々の救助も必要ありません」
「ただ鍵を集め、封印を解けばいい」
「ですが、我々が守りたいのは魔王様ではなく」
「今苦しんでいる人達です」




