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黒の人形使い〜女神に貰った神器で無双する。  作者: ボアの本棚


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31話 希望



「エミリア……どうやってここへ来たのだ?」


魔王は驚いた表情で娘を見つめた。


エミリアは涙を拭い、ユカリの方を振り返る。


「ユカリさんが、連れて来てくれたの」


「そうか……。そなたがエミリアをここまで」


魔王はユカリに深く頭を下げた。


「感謝する」


「ソーマお兄ちゃんもいるよ。向こうに」


「おじさんも一緒に行こうよ」


ユカリは後ろの黒い魔法陣を指差した。


しかし、魔王は寂しそうに微笑むだけだった。


「私は行けない」


「どうして?」


「お父様、どうしてですか?」


エミリアが不安そうに尋ねる。


「ソーマお兄様も、お母様も、ずっとお父様に会いたがっています。一緒に帰りましょう!」


魔王はゆっくりと首を横に振った。


「エミリア……私はこの城に封印されている」


「この城から一歩たりとも出ることはできないのだ」


その言葉に、エミリアの瞳が揺れる。


その時だった。


まーくんがユカリの服の裾を引っ張る。


振り返ると、魔法陣が小さく揺らぎ始めていた。


「まーくん?」


まーくんは慌てた様子で何度も魔法陣を指差す。


「テンイマホウが切れちゃうの?」


まーくんは大きく頷いた。


「エミリアちゃん、帰ろう!」


しかし、エミリアは首を横に振る。


「いや!」


「お父様と一緒に帰る!」


魔王は娘を見つめると、静かにしゃがみ込み、もう一度強く抱きしめた。


「エミリア」


「お前が生きていてくれただけで、私は十分幸せだ」


「ソーマとお母様を……頼んだぞ」


「お父様……」


エミリアは泣きながら父の服を握り締める。


だが魔法陣の揺らぎは、ますます激しくなっていく。


魔王は決意したように目を閉じた。


「また必ず会おう」


そう言うと、エミリアをそっと抱き上げ、そのままユカリと一緒に魔法陣へ向かって押し出した。


「きゃあっ!」


ズザァァァッ!


二人は魔法陣を抜け、勢いよく地面を滑った。


「いたた……」


ユカリが体を起こす。


エミリアはすぐに立ち上がり、涙で滲む目で魔法陣を見つめた。


しかし、そこにはもう何もなかった。


魔法陣は静かに消え去っていた。


「お父様ぁぁぁ!」


「あああああっ!」


泣き叫ぶエミリアの声が辺りに響く。


「エミリア!」


その声を聞きつけ、ソーマたちが慌てて駆け寄ってきた。


「どうしたんだ、エミリア!」


エミリアは兄の胸に飛び込み、声を上げて泣いた。


ソーマは何が起きたのか分からず、ユカリへ視線を向ける。


「ユカリさん、何があったんですか?」


「ユカリケンカでもしたの?」


僕はユカリの目線まで腰を降ろして聞いた。


「してないよ」


ユカリは首を横に振る。


「まーくんのテンイマホウでエミリアちゃんをお父さんに会わせてきたの」


「……え?」


その場にいた全員が固まった。


「会わせて……きた?」


僕は思わず聞き返す。


「うん!」


「まーくんがテンイマホウを使ってくれたの」


「まーくんって、本当に何でもできるんだね……」


僕は苦笑するしかなかった。


ソーマは震える声で妹に尋ねる。


「本当に……お父様に会ったのか?」


エミリアは涙を拭いながら、力強く頷いた。


「はい」


「お父様に会えました」


「私が、お父様に会いたいってわがままを言ったら、ユカリさんが叶えてくれたんです」


「お父様は……とても優しかったです」


ソーマは目を閉じる。


そして妹をそっと抱き寄せた。


「そうか……」


「お父様は、ご無事だったんだな」


堪えていた涙が頬を伝う。


その涙は悲しみだけではなかった。


離れ離れになっていた父が、今も生きている。


その事実が、ソーマに再び希望を与えていた。






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