30話 再会
ワタルたちが慌ただしく動き回っている頃。
ユカリはあることで困っていた。
「ううぅ……お父様ぁ……お母様ぁ……」
エミリアが泣きじゃくり、何を言っても首を横に振る。
「会いたい……会いたいぃ……」
「うーん……」
困ったユカリは、リュックから『けんくん』『まーくん』『せいちゃん』の三体の人形を取り出した。
「まーくん、エミリアちゃんをお父さんとお母さんに会わせてあげたいの」
「テンイマホウして」
まーくんは首を横に振る。
「だめ?」
今度は小さく頷く。
「ううぅぅぅ!」
エミリアの泣き声は大きくなるばかりだった。
「あっ」
ユカリは何かを思いついたように顔を上げる。
「まーくん、ここにね、お父さんのお顔を映せる?」
両手で大きな丸を描きながら尋ねる。
まーくんは頷き、杖を掲げて呪文を唱えた。
ブオン。
二人の前の空中に大きなスクリーンが現れる。
そこには瘴気に覆われた暗い玉座の間が映し出されていた。
玉座には、大柄な男が苦しそうに座っている。
『ぐっ……ううぅ……』
『あああああっ!』
全身を黒い瘴気に蝕まれ、苦しみに耐えるその姿にエミリアは息をのんだ。
「お父様……」
ユカリはスクリーンを見つめる。
「黒い煙で、よく見えないね」
「まーくん、この黒い煙、消せない?」
まーくんは、そっとせいちゃんの方を見た。
せいちゃんは少し考え、涙を流すエミリアを見つめる。
そして静かに、大きく頷いた。
胸元の首飾りを握りしめ、両手を合わせて祈りを捧げる。
その瞬間、せいちゃんの体が柔らかな光に包まれた。
同時にスクリーンの中にも光の球が現れ、渦を巻きながら瘴気を次々と吸い込んでいく。
ゴオォォォ……。
濃い黒い瘴気はみるみる薄くなり、やがて完全に消え去った。
玉座の間に静寂が訪れる。
まーくんは再び杖を振る。
二人の目の前に黒い魔法陣がゆっくりと浮かび上がった。
「まーくん?」
まーくんは親指をぐっと立て、任せてとでも言うように笑う。
「行こう、エミリアちゃん!」
ユカリはエミリアの手を握り、二人で魔法陣へ飛び込んだ。
視界が一瞬黒く染まる。
次の瞬間。
二人は、先ほどまでスクリーンに映っていた玉座の間へと立っていた。
エミリアは目の前の男を見つめる。
男もまた、信じられないものを見るように娘を見つめていた。
「……エミリア」
震える声で、その名を呼ぶ。
「お父様!」
エミリアは涙を流しながら駆け出し、その胸へ飛び込んだ。
男は強く、しかし壊れ物を抱くように優しく娘を抱きしめる。
「無事で……よかった……」
その声は震えていた。
二人が再会できた姿を見て、ユカリはほっと胸をなで下ろす。
「よかったね」
そう呟くと、ユカリは嬉しそうに微笑んだ。




