3話 実力テスト
黄色いオープンカーが荒野を駆け抜ける。
スマホで調べたところ、ダンジョン塔の周辺には大きな街が築かれており、入場には銀貨一枚と身分証明書が必要らしい。
街までは約三十分。
高い城壁が見えてくると、僕は車を止めた。
「小さくなれ」
そう呟くと、オープンカーは手のひらサイズまで縮み、ボディバッグへ収まる。
「すごーい!」
ユカリが目を輝かせた。
門へ向かい、僕は門番に銀貨を差し出す。
「あの、街に入りたいんですけど、身分証明書を持っていません。どうすればいいですか?」
門番は僕たちの顔を見ると、小さく頷いた。
「初めてか。なら仮の入場証を発行する。一週間以内に正式な身分証明書を取得しろ」
そう言って銀貨を受け取り、木札と街の地図を渡してくれた。
「ありがとうございます」
僕は頭を下げ、ユカリと一緒に街へ入る。
「冒険者ギルドは……左上みたいだね。」
「はぐれたら危ないから、手をつないで行こう」
「うん!」
ユカリは嬉しそうに僕の手を握った。
街は多くの人で賑わっていた。
武器屋、防具屋、宿屋、屋台。
初めて見る景色ばかりで目移りしてしまう。
しばらく歩くと、大きな木造の建物が見えてきた。
看板には『冒険者ギルド』と書かれている。
「ここだね」
重い扉を開けると、中は多くの冒険者で賑わっていた。
鎧姿の戦士、ローブを着た魔法使い、獣人らしき人までいる。
その視線が一斉に僕たちへ向く。
『なんか……すごく見られてる気がする』
少し緊張しながら受付へ向かった。
「あの、僕たち冒険者登録をしたいんですけど」
受付のお姉さんは優しく微笑む。
「はい。では、この水晶に手を触れてください」
カウンターに置かれたのは、ユカリの頭ほどもある大きな水晶玉だった。
僕が手を触れると、水晶が淡く光る。
「はい、登録は完了です。カードを発行しますので少々お待ちください」
お姉さんは奥へ下がり、しばらくして二枚のカードを持って戻ってきた。
「こちらが冒険者カードです」
カードの右上には、大きく『F』の文字。
「以上で登録は完了です。依頼はあちらの掲示板から受けられます」
お姉さんが指差した先では、多くの冒険者が依頼書を見比べていた。
「Fランクは薬草採集や雑用など、簡単な依頼から始めるのがおすすめですよ」
「ありがとうございます」
すると、隣で退屈そうにしていたユカリが口を開く。
「終わった?」
「ダンジョン行く?」
受付のお姉さんの笑顔が固まる。
「えっ!? ダンジョンですか?」
「今登録したばかりですよね!? Fランクでダンジョンなんて危険すぎます!」
ユカリはぷくっと頬を膨らませた。
「やだ!」
「ダンジョン行く!」
「けんくん達がいるから大丈夫だもん!」
「だから危ないんです!」
「大丈夫!」
「危ないです!」
受付のお姉さんとユカリは、互いに一歩も譲らない。
隣の受付嬢まで仲裁に入るが、二人の言い合いは終わる気配がなかった。
僕はどうすればいいのか分からず、ただ見守るしかなかった。
やがて、お姉さんは大きく息を吐いた。
「……分かりました」
「そこまで言うのであれば、あなたにダンジョンへ入る実力があるか、テストを行います」
ユカリはぱっと笑顔になる。
「うん!」
「テストする!」
こうして僕たちは、思いもよらないダンジョン適性試験を受けることになった。




