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黒の人形使い〜女神に貰った神器で無双する。  作者: ボアの本棚


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25/40

25話 戦闘表現は難しい



巨大な城門をくぐると、街はまるでお祭り騒ぎだった。


大通りには赤や青、金色の旗が何本も掲げられ、『剣術大会開催』の文字が大きく描かれている。


道の両側には数え切れないほどの露店が並び、焼き肉や串焼き、焼きたてのパン、色鮮やかな果物、甘いお菓子の香りが街中に漂っていた。


「すげぇ!」


シオンは目を輝かせる。


街を歩く人の多くが腰に剣を差していた。


軽装の冒険者。


重厚な鎧を纏った騎士。


各国から来たと思われる兵士。


そして、ただ歩いているだけなのに強者だと分かる老人剣士。


「あの人、すごい筋肉……」


思わず見てしまう。


「あっちはウサギさん!」


「ネコさんもいる!」


ユカリは獣人達を見つけるたびに嬉しそうに指を差した。


街のいたるところでは、子供達が木剣を振り回して遊び、大人達は酒を片手に試合の予想を語っている。


鍛冶屋では剣を打つ音が響き、店先には大会限定と書かれた剣や盾が並んでいた。


「さすが剣術大国だぜ!」


シオンは感動したように叫ぶ。


「大会期間中は世界中から剣士が集まるんだ」


シオンが説明する。


「宿屋は満室。商人にとっても一年で一番稼げる時期なんだぜ!」


街の中央には巨大な円形闘技場がそびえ立っていた。


何万人も収容できそうな巨大建築。


中からは地響きのような歓声が聞こえてくる。


「始まってる!」


シオンは待ちきれない様子で走り出した。


「早く行こうぜ!」


その姿を見て、僕は苦笑する。


ダンジョンを攻略したばかりなのに、まだそんな元気があるんだ……。


◇◇◇


「前の席は無理だったか」


人気の席はすでに埋まっていて、僕達が座れたのはかなり遠い場所だった。


闘技場の中央にいる人が小さく見える。


「ほらよ」


シオンが何かを渡してきた。


「これ……?」


「双眼鏡だ」


覗いてみる。


「うわっ!」


遠くの選手が目の前にいるように見える。


「すごい!」


「ユカリにも見せて!」


「ほら」


「わぁ!」


ユカリは嬉しそうに双眼鏡を覗き込む。


その時。


ジャーン!!


ジャーン!!


銅鑼の音が響いた。


「始まるぞ」


シオンが身を乗り出す。


大会はトーナメント形式だった。


しかし今年は突出した実力者が少なかったらしく、観客席からは不満の声も多かった。


「つまらねぇな」


途中からシオンはスマホで遊び始める始末だった。


そして、あっという間に決勝戦。


現れたのは銀色の鎧を纏った女の人。


その姿を見た瞬間、会場の空気が変わった。


「フレナリア帝国第一王女……アロマ様だ」


誰かが呟く。


試合開始。


そして。


一瞬だった。


二人がすれ違った瞬間、相手選手が膝をつく。


「え?」


僕は目を疑った。


剣を振ったようには見えなかった。


ただ、歩いてすれ違っただけ。


会場がざわつく。


「そりゃブーイングも出るよね……」


素人の僕でも、これでは試合というより一方的な勝負に見える。


その時だった。


アロマ王女が突然、司会者から拡声器を奪った。


「『黒の人形使い』共!」


会場中に声が響く。


「ここへ降りて来い!」


「私と勝負しろ!」


王女は懐から一本の鍵を取り出し、掲げた。


「勝ったならば、この鍵を渡す!」


「え……」


僕達は顔を見合わせる。


「あ?」


シオンの表情が変わった。


「今、鍵って言ったか?」


アロマは続ける。


「お前達が魔王復活を目論み、七つの鍵を集めていることは調べがついている!」


「この私、フレナリア帝国第一王女アロマ・フレナリアが、そのうちの一本を所持している!」


「欲しければ取りに来い!」


会場が騒然となる。


「黒の人形使いって……最近噂の冒険者か?」


「魔王復活ってどういうことだ?」


「帰ろう」


僕は小さく呟いた。


「そうだな」


「おい!いつまで待たせる!」


アロマが叫ぶ。


「早く来い!」


「うるさい」


ユカリが眉をしかめる。


「まーくん、あの人静かにして」


『まーくん』は大きく頷き、杖を振った。


「このおくびょっ」


「……!」


アロマが突然声を失う。


必死に口を動かしているが、音が出ない。


「でも……」


ユカリが小さく呟く。


「鍵、欲しい」


「……」


僕とシオンは顔を見合わせた。


「そうだな」


シオンが笑う。


「鍵は貰っておくか」


やっぱり、こうなるんだ。


◇◇◇


僕達は闘技場へ降りた。


対戦相手は、想像以上に大きな女性だった。


ハルさんより背が高い。


「……」


アロマは黙って剣を抜く。


ユカリは『けんくん』を前へ出した。


僕とシオンは後ろで見守る。


ジャーン!!


試合開始の銅鑼が鳴る。


次の瞬間。


ギィン!!


二人の剣がぶつかった。


一撃。


二撃。


三撃。


観客は息を呑む。


速すぎて、目で追えない。


アロマの剣は鋭かった。


無駄がない。


最短距離で相手の急所を狙う。


対するけんくんの剣は完璧だった。


受ける。


流す。


反撃する。


まるで何十年も修行した剣士のようだった。


アロマが笑う。


『素晴らしい』


けんくんはただ剣を構える。


そして。


アロマの動きが変わった。


速い。


いや、速いだけではない。


フェイント。


体重移動。


視線誘導。


相手の判断を狂わせる技術。


けんくんが初めて一歩下がる。


「王女様が押している!」


観客が沸く。


しかし、けんくんは倒れない。


むしろアロマの剣を理解していく。


二撃。


三撃。


五撃。


十撃。


少しずつ対応していく。


『……成長している?』


アロマが驚く。


ならば、と。


アロマは地面を蹴った。


フレナリア王家秘伝。


『流星剣』


無数の斬撃が飛ぶ。


普通なら防げない。


しかし。


けんくんは目を閉じた。


そして。


一歩。


二歩。


最小限の動きで全てを避ける。


最後の一撃だけを剣で受け止めた。


ドォン!!


衝撃が闘技場を揺らす。


「すげぇ……」


シオンが呟く。


「あの王女、本当に強ぇ」


僕も頷く。


「でも……けんくんも」


アロマは息を整える。


そして剣を上段へ構えた。


『最後だ!この一撃で決める!』


けんくんも構える。


剣に炎が宿る。


観客席が静まり返る。


『王家奥義』


『天翔一閃!!』


アロマが駆ける。


音が消える。


光だけが走る。


その瞬間。


けんくんも動いた。


抜刀。


炎の軌跡が一本走る。


カキィィィン!!


二人がすれ違う。


数秒。


誰も動かない。


そして。


アロマの剣が地面へ落ちた。


会場が騒然となる。


しかし。


けんくんの鎧にも一本の傷が刻まれていた。


完璧な勝利ではない。


アロマは剣を拾い、笑った。


けんくんは静かに剣を鞘へ戻す。


二人は握手を交わした。


その瞬間。


闘技場全体が大歓声に包まれた。







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