23話 ペンギンは可愛くない
そっと氷の扉の取っ手に手を掛ける。
バキッ。
「あれ?」
取っ手だけが外れて、僕の手の中に残った。
僕達は顔を見合わせる。
「……溶けていますね」
ハルさんが右手の指輪を見つめる。
指輪は赤く光り続けていた。
「とてつもない熱源を感知しています」
「熱?」
「でも、ここ氷のダンジョンだよ?」
僕が首を傾げる。
その時だった。
「この扉、柔らかいよ」
ユカリが氷の扉をコンコンと叩く。
「えいっ!」
ドゴッ!
軽く拳を当てただけで、巨大な氷の扉は真っ二つに割れた。
その瞬間。
ゴォォォォッ!!
灼熱の熱風が部屋の外へ吹き荒れる。
「熱っ!」
「うわっ!」
思わず全員が後ろへ飛び退いた。
◇◇◇
一度上の階まで避難する。
「ここ、氷のダンジョンだよな?」
シオンはダウンジャケットを脱ぎながら汗を拭く。
「何でこんな暑いんだよ」
「恐らく、最下層の主が原因でしょう」
ハルさんもダウンのチャックを下ろした。
「この先は防寒着は不要ですね」
僕達はダウンを脱ぎ、ユカリの上着も脱がせる。
すると、
「あ、こんなのあるぜ」
シオンが『おもちゃ箱』を覗き込みながら笑った。
「『あべ○べクリーム』だってよ」
「暑い場所では涼しく、寒い場所では暖かく感じるらしい」
「便利そう!」
シオンはさっそく腕に塗る。
「おっ、本当だ!」
「暑くねぇ!」
みんなでクリームを塗り合う。
「あったかーい!」
ユカリも嬉しそうだ。
「念のため、もう一度結界を張っておきましょう」
ハルさんが言う。
「ユカリさん、『せいちゃん』お願いします」
「うん!」
ユカリは人形を抱き上げた。
「せいちゃん、みんなを守って!」
『せいちゃん』は両手を合わせて祈る。
淡い緑色の光が僕達を優しく包み込んだ。
「これで大丈夫です」
「よし」
シオンが拳を合わせる。
「行くぞ」
◇◇◇
戻ると、さっきまであった氷の扉は完全に溶けて消えていた。
シオンは火の剣から氷の剣へ持ち替える。
「相手が炎なら、こっちの方がいいか」
僕達は慎重に部屋へ足を踏み入れた。
そこにいたのは。
「ペンギン?」
巨大なペンギンだった。
頭は天井につくほど大きく、身体からは炎が立ち上っている。
「ギョオオオオオ!!」
大きなくちばしを開き、超高温の火炎を吐き出した。
「みんな、集まって!」
ハルさんが叫ぶ。
僕達はユカリを中心に円を作る。
ドォォォォン!!
炎が結界へ直撃する。
緑色の結界が大きく揺れるが、破れない。
「よし!」
しかし、安心したのも束の間。
ズシン。
ズシン。
巨大なペンギンが迫ってくる。
「ギョオオオ!」
ドガァァァン!!
鋭いくちばしが結界を突いた。
バチバチッ!!
雷のような音を立てながら結界が揺れる。
「思ったより力が強いですね」
ハルさんが冷静に分析する。
「ユカリ!」
シオンが叫ぶ。
「決めろ!」
「うん!」
ユカリが杖を持った『まーくん』を前へ出す。
「まーくん!」
「ペンギン、小さくして!」
『まーくん』が杖を振る。
青い魔法陣がペンギンを包み込む。
ギギギッ……。
巨大な身体がゆっくり縮み始めた。
どんどん。
どんどん。
小さくなっていく。
「ギョ……」
最後は手のひらほどの大きさになり。
パッ。
光となって消えた。
ボン。
ボン。
床へ二つの宝箱が落ちる。
赤い宝箱。
そして青い宝箱。
「あのペンギン、可愛くなかったから嫌!」
ユカリがぷくっと頬を膨らませる。
「……人形様々だな」
シオンは苦笑した。
「皆さん、ご無事で何よりです」
ハルさんもほっと息をつく。
僕は青い宝箱を開けた。
中には一本の鍵。
「三本目だね」
「皆さん、鍵を集めているのですか?」
ハルさんが尋ねる。
「はい」
「全部集まったら何が起こるのかなって、ちょっと楽しみで」
僕が笑うと、ハルさんは少し考え込んだ。
「……そうですか」
「でしたら、今後は赤い宝箱の品を選んでください」
「何だよ」
シオンが首を傾げる。
「何かあるのか?」
ハルさんは真剣な表情で頷いた。
「それは」




