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21話 ハルのスマホは有料



『ハル』


『聞こえておるか、ハル』


『ハル』


『ハルーーッ!!』


「は、はい!」


突然響いた声に、ハルは飛び跳ねた。


辺りは真っ暗。


しかし部屋の中央には、無数の光の泡が集まり、一人の美しい女性が姿を現していた。


「め、女神様……?」


光り輝くその姿に、ハルは思わず正座する。


『ハルよ』


『お前がワタル達の仲間になった者じゃな?』


「は、はい!」


『神が何度も呼んでおるのに返事をせぬとは、あまり感心せぬな』


「あ、あの……集中していまして……」


『言い訳はよい』


ハルは慌てて背筋を伸ばす。


「僕は、バロック魔術大国元第三王子、ハル・ドーンと申します!」


「現在は王位継承権を放棄し、アレス公国へ移住しました」


『それで?』


「サミュエル・アレス国王より、ワタルさん達三人の特別保護補佐官に任命されています」


『ほう』


女神は少しだけ目を細めた。


『元は他国の王子であったお前が、なぜそのような役目を望んだ』


ハルは真っ直ぐ女神を見つめる。


「僕は王族として生きるより、魔道具職人として生きる道を選びました」


「そして……」


少し照れ臭そうに笑う。


「ワタルさん達と一緒にいれば、魔道具職人としてもっと成長できると思ったんです」


「もちろん、それだけではありません」


「僕は彼らを利用するつもりも、神器を悪用するつもりもありません」


「困った時は助け、支える」


「それが僕の役目です」


しばらく沈黙が流れる。


やがて女神は静かに頷いた。


『……嘘は申しておらぬようだな』


ハルの表情が少し緩む。


『ならばハル』


『お前を正式に、ワタル達の保護者の一人として認めよう』


フワァァァ……。


温かな光がハルの身体を包み込む。


光が消えると、腰には見慣れないポーチが巻かれていた。


そして、その手には。


「こ、これは……!」


スマホ。


ワタル達が使っている物とよく似た神器だった。


『それはお前専用の神器』


『ワタル達の物とは異なるが、お前を助ける力となる』


『彼らを頼むぞ、ハル』


そう言い残し、女神アローナは光と共に姿を消した。


「お、おおおおおお!」


「女神様に認められたぁぁぁーーーっ!!」


◇◇◇


「……うるさい」


その叫び声で目が覚めた。


スマホを見る。


午前二時。


「ハルさん、元気だなぁ……」


そう呟いて、僕はもう一度布団に潜り込んだ。


◇◇◇


翌朝。


「昨日、何騒いでたんだよ」


目玉焼きトーストを頬張りながら、シオンが聞く。


「ふふふ♪」


ハルさんは満面の笑みで胸を張った。


「じゃーん!」


右手に掲げたのは、一台のスマホ。


「なっ!?」


シオンが驚いて立ち上がる。


「スマホじゃねぇか!」


「昨夜、女神アローナ様が現れてくださいまして!」


「僕を正式な保護者として認め、この神器を授けてくださったのです!」


「このポーチも神器ですよ!」


ハルさんは嬉しそうに何度も見せびらかしている。


本当に嬉しかったんだね。


「良かったね、ハルさん」


「ありがとうございます!」


◇◇◇


朝食を終えると、ダンジョンへ向かう準備を始めた。


フード付きのダウンジャケット。


ネックウォーマー。


厚手の手袋。


防寒ブーツ。


食料は温かいまま食べられるよう、マジックバッグへ入れてある。


準備は万端だ。


しかし、正規の登山道は冒険者でいっぱいらしい。


僕達は別のルートを選ぶことにした。


飛行機はシオンが断固反対。


だから車で進む。ちなみに屋根付きに変化した。


「行けるかな……」


少し不安だったけれど。


結果は。


「行けた」


車が進むたび、木々がぐにゃりと曲がって道を開けていく。


まるで森そのものが僕達を通してくれているようだった。


一本道を走り続け、ついに氷洞ダンジョンがあるという湖へ到着する。


ところが。


「……あれ?」


僕達は思わず言葉を失った。


問題は二つ。


一つ目。


湖が広すぎて、中央にあるはずの氷洞ダンジョンがまったく見えない。


そして、二つ目。


「湖の水が……ない?」


巨大な湖は、底が見えるほど完全に干上がっていた。


「これ……どうなってるんだ?」


誰も答えられなかった。




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