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20話 暴走車



「ちょ、ちょっと休憩させてください……」


「足と腰が……」


橋を渡り終えたところで、僕は車を止めた。


ハルさんはゆっくり外へ出ると、腰に手を当てて大きく伸びをする。


「う、うぅぅぅ……」


その姿は、どう見ても疲れたおじさんだった。


「おっさんみてぇだな」


シオンが呟く。


「そんなこと言わないでくださいよ!」


ハルさんが悲しそうな顔をする。


「でも、この車は僕達の体格に合わせてるからハルさんには少し小さいですよね」


「だから!」


ハルさんが勢いよく手を挙げる。


「僕に運転させてください!」


「え?」


「操作方法は後ろでずっと見て覚えました」


「実際に動かせば、すぐ理解できます!」


自信満々に言うハルさん。


……大丈夫かな。


少し不安だったけど、他に方法もない。


「それしかないかな……」


「それより、橋を片付けた方がいいぜ」


シオンが遠くを見る。


「フレナリアの兵士が来る」


見ると、遠くから馬に乗った兵士達がこちらへ向かっていた。


「急ごう!」


僕達は急いで橋をバッグにしまい、車へ乗り込む。


そしてハルさんが運転席のドアに手をかけた瞬間。


車体が拡大した。


「え?」


さっきまで僕達がいつも使っているサイズだったのが、大人でも乗れる大きさになった。


どうやら、運転する人に合わせて変化するらしい。


「では、行きます!」


ハルさんは勢いよくアクセルを踏み込んだ。


「うわっ!」


次の瞬間。


車は風のような速さで走り出した。


一瞬で、近づいていたフレナリアの兵士達を通り過ぎる。


「あああ!すげぇ!」


シオンが目を輝かせる。


「ハハハ!もっと飛ばせ!」


……。


シオンって、高い場所は苦手だけど速度は平気なんだ。


「ハルさん!」


僕は慌てて叫ぶ。


「速すぎる!少し落として!」


「はーい!」


ハルさんが慌ててアクセルを戻す。


少しずつ速度が落ちていった。


「すみません。ペダルを踏み込みすぎました」


「でも……」


ハルさんは嬉しそうに車を見る。


「凄まじい魔道具ですね!」


「僕の飛翔靴とは比べ物になりません!」


「ハルさん、魔道具を自分で作っているんですか?」


僕が聞くと、ハルさんは嬉しそうに頷いた。


「はい!」


「僕は魔道具職人になるのが夢だったんです」


そう言って右手を見せる。


そこには小さな指輪があった。


「例えば、この指輪」


「これは通信魔道具です」


「遠くにいる相手と会話ができます」


「俺達のスマホじゃねぇか」


シオンが呆れた顔で笑う。


「はい!」


ハルさんは即答した。


「サミュエルから聞いた時は驚きました」


「僕は今まで、自分が作った物が神器と同じ領域にあるなんて知らなかったんです!」


「……」


シオンの表情が嫌そうに歪む。


嫌な予感がする。


「そして確信しました!」


ハルさんは拳を握る。


「やはり君達について行けば、僕は魔道具職人としてさらに高みへ行ける!」


「……」


僕達は何も言わなかった。


たぶん、何を言っても無駄だ。


◇◇◇


それから車を走らせ続け、夕方頃。


僕達は氷洞ダンジョンへ向かう山の麓の街へ到着した。


周囲は一面の雪景色。


空は厚い雲に覆われ、白い雪がちらちらと舞っている。


「寒い……」


吐いた息が白くなる。


僕達は街へ入る少し手前の草原で車を止めた。


ここなら人目につかない。


「ドールハウスを出そう」


魔法の家を設置する。


外から見れば小さな平屋。


でも、中はちゃんとした家になっている。


「……暖かいですね」


ユカリをベッドへ寝かせながら、ハルさんが感心したように言う。


「外は雪なのに、中は春みたいです」


「荒野にいる時も涼しかったしね」


どうやらこの家は、外の季節に左右されないらしい。


その時。


「おい、腹減ったぞ」


シオンが顔を出した。


手にはレトルトカレーの箱。


「晩飯にしようぜ」


今日は少し早めの夕食にすることにした。


新しい仲間が増えたことで、ドールハウスも変化していた。


外から見れば平屋。


だけど中は二階建てになっている。


二階の左側がハルさんの部屋。


右側がシオンの部屋だ。


「明日はいよいよ……」


僕は窓の外を見る。


雪に覆われた山。


その奥にある氷洞ダンジョン。


「ダンジョン攻略だ」


新しい仲間と共に挑む、初めての冒険。


少し不安だけど……。


楽しみでもあった。





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