18話 ダンジョン行きたい病
その後、僕達はこの世界に呼ばれた経緯と、女神アローナ様から受け取った手紙、そして授かった魔道具について説明した。
「勇者の魔道具は、女神アローナ様が授けた物だったのか……」
サミュエル王は驚いた表情で呟いた。
僕達はマジックバッグやスマホを見せる。
けれど、不思議なことが起きた。
「……動かないな」
王様がスマホに触れても、何の反応もない。
マジックバッグも同じだった。
どうやら、この魔道具は僕達三人にしか使えないらしい。
「三人にしか扱えない魔道具か」
サミュエル王は考え込む。
「この『スマホ』という魔道具の存在が広まれば、大きな騒ぎになる可能性があるな」
「心配いらねぇよ」
シオンが懐から一枚のシールを取り出した。
「普段はこれを使ってる」
四角い紙。
そこには太い赤い丸と、斜めの線が一本描かれているだけだった。
「これは?」
サミュエル王が尋ねる。
「認識阻害シールだ」
シオンが説明する。
「これを貼った物は、俺達三人以外には認識できなくなる」
「つまり、見えなくなるということか?」
「ああ」
シオンがスマホにシールを貼る。
すると。
「……え?」
後ろに控えていた騎士さんが目を見開いた。
「消えた……?」
さっきまで机の上にあったスマホが、騎士さんには見えなくなっている。
僕達には普通に見えているのに。
「本当に……私には何も見えない」
騎士さんが困惑した表情を浮かべる。
シオンがシールを剥がすと、再びスマホが姿を現した。
「なるほど」
サミュエル王は静かに頷いた。
「様々な魔道具があるのだな」
少し考えた後、王様は続ける。
「ならば、この魔道具の存在を無理に隠そうと騒ぎ立てる方が、かえって不自然になるか」
「今まで通り、必要以上に見せない。それでいいだろう」
僕達は頷いた。
そして、しばらく沈黙した後。
サミュエル王は、僕とユカリを見る。
「最後に、一つ聞きたい」
「ワタル、ユカリ」
「君達は元の世界へ帰りたいか?」
「それとも、この世界で生きていきたいか」
「君達自身の気持ちを聞かせてほしい」
僕は少し考えた。
元の世界。
家族。
友達。
以前の生活。
だけど……。
今は、この世界で出会った人達がいる。
ユカリがいる。
シオンがいる。
「僕達は……この世界で生きていきます」
「元の世界には戻りません」
隣を見ると、ユカリも頷いていた。
「そうか」
サミュエル王は優しく微笑んだ。
「それでは、今この瞬間から君達はアレス公国の民だ」
「ただし……」
少し困ったような表情になる。
「子供だけで生活しているというのは、やはり少し心配ではある」
すると、すぐにシオンが口を挟んだ。
「俺達の生活には干渉しないでくれ」
「俺達は俺達だけで生きていける」
サミュエル王は少し驚いた後、静かに笑った。
「分かった」
「ならば、こちらから無理に手を出すことはしない」
「ただ、困った時は頼ってほしい」
「国として、君達を見守る」
その後の話し合いは、ほとんどシオンと王様の会話になった。
僕には難しい話ばかりだった。
商売のこと。
国との関わり方。
冒険者について。
聞いているうちに、だんだん眠くなってしまった。
気づいた時には。
「……あれ?」
僕は帰りの馬車の中にいた。
どうやら、話し合いは終わったらしい。
結局、生活は今まで通りでいいことになった。
明日からも治療所を頑張ろう。
そう思ったのだけど……。
何となく嫌な予感がする。
この感じ……。
そろそろ来る。
「新しいダンジョン行きたい!」
ほら来た。
そう。
ユカリのダンジョン行きたい病である。




