12話 魔道具オタクの王子さま
「飛んでる君達! 待ってくれ!」
声を掛けられ、僕は機体を安定させる。
「誰ですかー?」
目の前に浮かんでいたのは、全身白ずくめの男の人だった。
ふわふわと宙に浮かんでいると思った次の瞬間、少しずつ高度が下がっていく。
「わっ!」
ガシッ!
慌てたように機体の後部を掴むと、そのまま後部座席へと乗り込んできた。
「君達だよね?僕達を起こしてくれたのも、マーマン達から助けてくれたのも」
「それに、この空を飛ぶ魔道具!なんて素晴らしいんだ!」
「もしよかったら、じっくり見せてもらえないかな?」
興味を持ってくれるのは嬉しい。
でも……。
「圧が凄い……」
思わず小さく呟いてしまった。
すると、下の方から声が響く。
「王子!何をしているんですか!我々も乗せてもらえるよう交渉してください!」
見下ろすと、黒いローブを着た魔法使い達が大声で叫んでいた。
「あ、そうだった」
男性はポンと手を叩く。
「挨拶が遅れてごめんね。僕はバロック魔術大国の第三王子、ハル・ドーンだよ。よろしく」
「ユカリだよ。よろしくね」
「よろしくね、ユカリちゃん」
ユカリとハルさんが握手を交わす。
「寝てるのはシオン」
ユカリが紹介する。
「気絶しているみたいだね。起こそうか?」
「あ、寝かせておいてください」
「いいの?」
「それより、みんなも空の入り口に行きたいんですよね?」
下では、まだ魔法使い達が騒いでいる。
「そうなんだよ!」
ハルさんは嬉しそうに頷いた。
「でも僕達魔法使いでも、ここまで高く飛べる魔法はまだ開発されていなくてね」
「だから、何か良い魔道具があれば貸してもらえないかと思って来たんだ」
そう言って、ハルさんはパンッと手を叩いて頭上にやった。
「うーん……」
僕はスマホを取り出し、『おもちゃ箱』の中を確認する。
画面をスクロールして探してみるが……。
「ないですね」
「え!?」
ハルさんが驚いた顔をする。
「まーくん、下の台と空の入り口を繋げられないかな?」
ユカリのリュックから顔を出していた『まーくん』は、少し考えるような仕草をした。
そして両手を掲げ、小さな声で呪文を唱える。
すると。
空に浮かんでいた入り口が、ゆっくりと動き始めた。
ドンドンとせり出していき、そのまま下の台座へと重なっていく。
「え……?」
ハルさんは目を見開いた。
「今の魔法は……一体?」
「まーくんの魔法だよ!」
ユカリは嬉しそうに言う。
「まーくん、何でもできるんだよ!」
そしてズイッと、まーくんをハルさんの目の前へ差し出した。
ハルさんは興味津々で、まーくんをじっと見つめる。
しかし、まーくんは嫌だったのか、ハルさんの手から離れると、すぐにユカリのリュックの中へ戻ってしまった。
「下に降りますね」
僕は機体を旋回させ、ゆっくりと高度を下げていく。
そして台座の横へと着陸する。
「王子!」
ハルさんの仲間らしき人達が駆け寄ってきた。
しかし当の本人は……。
「……これは……いや、しかし……」
何やら小さく呟きながら、自分の世界に入り込んでいる。
「あー……ダメだ。自分の世界に入っちゃってる」
「何!?そうなったらしばらく戻ってこないぞ!」
「仕方ない。我々だけで先に行こう。王子なら一人でも問題ないだろう」
「そうですね」
え?
王子様、一人にしていいの?
でも、他の国の人達も次々と次の階層へ進んでいるもんね。
「では少年達よ。このご恩、決して忘れません!」
「何かあれば、ハル王子にお伝えください!」
そう言い残し、仲間達は入り口へ向かって走っていった。
「少し休憩しようか」
僕は眠っているシオンを見る。
「シオンも寝てるし、まだ入り口には入れそうにないしね」
「うん。ユカリ、お腹空いた」
「もう3時半か。おやつの時間だね」
僕は飛行機を収納すると、ドールハウスを取り出して設置する。
一応ハルさんにも声を掛けたけど、完全に自分の世界に入り込んでいて返事はなかった。
仕方なく、シオンをベッドへ寝かせる。
そしてユカリと一緒にホットケーキを作り、のんびりとおやつの時間を楽しむことにした。




