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第59話 風呂カフェ・いこい



 出版商会との面会を終えた私とユーリさんは、王都を見て回った。


 私が子供の頃に遊びに行っていた下町、オススメの料理屋さん、観光地などをユーリさんに案内した。


 ユーリさんはずっと楽しそうに私の話を聞いてくれて、ずっと私も楽しかった。


 そして、最後に王都に新装オープンする風呂カフェを見に行くことにした。


 店はもう完成している。あとはオープンに向けて準備を進めるだけだ。


「おぉ、ここが新しくオープンする風呂カフェか……!」

「そうよ。名付けて、“風呂カフェ・いこい”よ!」


 ユードレイスの「風呂カフェ・ほっと」は、“ほっとできる場所”という意味で付けた。

 今回の「風呂カフェ・いこい」は、お客さんの憩いの場所になったらいいなという願いを込めて付けたのだ。

 やわらかい語調で親しみやすいし、なかなかいい店名じゃないかしら。


「リディアさんがいてくれるところなら、いつでもほっとできるし、どこでも憩いの場所になるから、とてもいい店名だな」

「んふふ、ユーリさんったらお上手ね」


 ユーリさんに煽てられて上機嫌になった私は、彼の手を引いて店内に入っていった。


 店の中は温かみを重視した「風呂カフェ・ほっと」とはかなり違う。


 水色をベースにしたタイルに、淡い色の壁紙。壁には金のラインがアクセントとして入っていて、高級感がアップしている。


 寒い地域の温かな場所をイメージした「ほっと」とは違い、「いこい」は都会の洗練されたイメージが強いだろう。


「王都には商人や貴族が集まってるからね。その人たちが入りやすいように注文したの」

「なるほどな」


 私はチラリと時計を見た。ちょうどおやつの時間に良さそうだ。


「ちょうどいいから、メニューの試作品でも食べない? ちょっとだけ材料を買ってきたの」

「それはぜひお願いしたい。メニューは何があるんだ?」

「えっとね、これこれ! この紙に書いてあるのがメニュー(仮)よ!」


 私は鞄からメニュー案がまとめてある紙を出した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


〜食事〜

・王様ステーキ定食

 王城で出されてもおかしくない(⁈)ほどの柔らかいサーロインステーキと野菜・スープセット。


・お日様ロコモコ定食

 お日様をイメージした目玉焼きとハンバーグの定食。オレンジジュース付き。


・黄金の冠スープとバゲット

 冠型の容器に入ったコーンスープと焼きたてバゲットのセット。


〜スイーツ〜

・「いこい」のひだまりパフェ

 オレンジを丸ごと練り込んだアイスクリームとチョコレートのパフェ。


・イチゴのドレスケーキ

 ドレスをイメージしたケーキ。甘いイチゴをたっぷり使用。


・王城チョコレートフォンデュ

 チョコレートフォンデュが専用の魔法道具から流れる様は、まるで王城のよう。果物をディップして、甘いひと時を。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 雪をテーマにしたり、ユードレイスの特産品を使っている「風呂カフェ・ほっと」に対して、「風呂カフェ・いこい」は太陽をイメージにした料理にしている。これは王家の紋章が太陽の形を模していることから連想している。

 そして、他にも「王様」や「王城」など王家に関わる言葉も結構使わせてもらっている。


 というのも、先代国王から直接許可をもらっている。


 国王との一件が終わった後、なんと私は先代国王と文通友達になっていた。


 きっかけは、先代国王がその後の王子の様子を綴った手紙をくれたことだった。「わしの指導のもと勉学に励んでいるから、リディア嬢に危害を及ぼすことはないから安心してくれ」とのことだった。


 それにお返事を書いたら、またまたお返事をもらって、それにお返事をして……という感じで、今では月に1〜2回くらい先代国王から手紙がくる。


 そして、前に手紙で「風呂カフェ2号店で、王家に関わる言葉を使ってもいいですか?」と聞いたら、「よいよい。自由に使ってくれ〜」と返ってきたのだ。


 といわけで、「王様ステーキ」やら「王城チョコレートフォンデュ」やらが名付けられたのだった。


「ちなみに今日はチョコレートフォンデュの材料しか買ってないから、これしか食べれないの。ごめんなさい」


 私がそう言うと、ユーリさんは少しだけ笑って頷いた。


「大丈夫。それが一番気になるしな。王城みたいって、面白そうだな」

「そうなの! 専用の魔法道具を作ってもらっててね」


 ドライヤーを作ってくれた魔法道具専門の商会に頼んで、チョコレートフォンデュの魔法道具を作ってもらったのだった。


 チョコレートフォンデュの魔法道具は、お城を模した形になっていて、いくつかの塔の上からチョコレートが流れ出る仕様になっている。


 私は苺やバナナなど果物やマシュマロお皿に並べて、道具のスイッチを入れた。


 さっそく苺を串に刺して、チョコレートにつける。


 それを口に入れた瞬間に苺の甘酸っぱさとチョコレートの甘さが口いっぱいに広がる。うーん、美味しいわ。


「なるほど。風呂カフェのメニューのチーズフォンデュのようなものか」


 そう言ったユーリさんは私に倣って、マシュマロをチョコレートにつけた。


「ん、溶けたチョコレートが甘くて濃厚だな。つけて食べる楽しさもあって、人気が出そうだ」

「そうでしょう? こうやってたくさんの人が楽しんでくれたら嬉しいわ」

「応援してる。まずは、ロマンス小説とのコラボを成功させ、通常の五倍の売り上げを出すところから、だな」

「そうね! きっといい返事をもらえるでしょうし、その時は頑張るわよ!」


 そんな会話をして私達は笑い合う。そうして、新しい風呂カフェを見て気合いを入れたんだけど……。


 数日後。出版商会にて。


「大変申し訳ございません。コラボの話はなかったことにしていただけませんか?」


 前向きに検討してくれるってことだったのに……一体、どういうこと⁈


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