準備期間
ヴァネッサの魔物屋を訪れて二週間、俺がこの世界に来てから四ヶ月が経った。
そろそろベニートのおっさんに頼んでいた防具が仕上がる頃合いだ。
この二週間ではダンジョン50階層で主に新規メンバーのレベル上げを行っていた。
アリシア、エルフ兄妹、ジン、シノン、アークコボルト達と翼竜達だ。
ブルース達一軍に連れられパワーレベリングを行い三日間で100~150まで急激に力を与えた。
ハヤセは名付けを行い名を変えた。
彼がハヤセという名に執着してなかったからか、俺の支配を容易に受け入れてくれた。
新しい名はコクラン(黒嵐)。
その毛並みと足の早さから名前を取った。
魔族となったハヤセ、もといコクランは人の形を成し、足は馬のまま、人の腕が四本というかなり厳つい容姿になった。その厳つい容姿とは相反するように紫掛かった黒髪のハンサムイケメンである。クソ、イケメン死すべし!慈悲はない!
鬣の様に伸びた髪は背まで生え、その背中に四対の羽を持っている。
ザ・魔族といった見た目だが、その人当たりの良さと面倒見が良い性格が功を奏し皆には受け入れられている。
現在は東屋で一人暮らしている。
これが現状のコクランのステータスだ。
名前 コクラン
種族 【暗黒天馬人】独自進化
年齢 121才
レベル 148
職業 魔王ソラト配下魔王軍武官
称号 【魔王の配下】【天地の覇者】
能力
物理攻撃力 2700
物理防御力 2400
魔法攻撃力 2500
魔法防御力 2600
敏捷 3200
運 2000
所持品 鉄剣 鉄槍 鉄斧 鉄盾 革鋲の鎧(特注品)革のズボン
魔法 土魔法 大地魔法 風魔法 風嵐魔法
スキル 疾駆 空翔 連撃 全体指揮 武芸達者 凶化 威圧 瞬間強化
見たことのないスキルばかりだ。
冷静さを持つ狂者、コクランは戦闘面でその才を発揮した。
ある日コクランの能力を見ようと、一緒にダンジョン50階層に潜ると、野生の勘なのかすぐに魔物へと襲いかかった。
左右二対の腕にはそれぞれ異なる武器を持ち、斬り、突き、割る。
相手の攻撃を防ぐと大地魔法の岩破散弾で磨り潰す。
全く隙がないその動きは当軍の新人であるジンと二対の双璧となってくれるだろう。
今後の更なる成長に期待している。そのうち良い武器を贈ってやると心に決め、ダンジョンから屋敷に戻った。
ブルースの直属の部下ピーちゃんとキーちゃんには王国と帝国の監視を頼んでいたのだがこの際だからとついでに名前を就ける事にした。ピーちゃんこと赤い方がサクラ、キーちゃんこと黄色い方にモミジと名付けた。
うん、これまた安直なネーミングセンスだが、本人達が喜んでいるので良しとする。
名付けをした後二人にはブルースの配下として活動してもらい、それぞれサクラには帝国の監視を、モミジには王国の監視を命令した。直情的なサクラだけでは不安だというモミジの意見を聞き入れチトセの部下である翼竜人を二人付ける事にした。連絡員としてブルースの細胞を取り込んだサクラ、モミジの妹の様なスライムを五体ずつ付けている。
防具を待つ二週間の間、俺はかなり忙しかった。ギルドの連中や貴族、冒険者が屋敷を訪れてきたからだ。その応対に俺やセレナは追われ大変だった。俗物の貴族なんかは門前払いやその場で切り捨てるなどして少し問題になったがクロッセアでの評判は上々だ。これが白金級になった弊害なんだろうか。空いた時間にセレナとティアを交え攻略の戦略を練ったりした。
レギオンも申請した。名前は面倒だからそのまま《天拳》にした。
屋敷に訪問してきた冒険者が増えたのもこれが原因だろう。
数の増えたうちの奴らを纏めあげないといい加減統制が取れない。
クロッセアの冒険者達が注目したのか、挙って入りたいと志願してきたが、当面はカインさんのみだ。他の冒険者を雇う意味がないのだから。
今までレギオンが出来てもすぐにクロッセアを離れていったらしいし、物珍しさから興味が湧いたのだろう。
しかし、ここでギルドが口を出す。主にガイのおっさん。
あろうことか自分の甥っ子ナッシュとそのパーティメンバーを俺のレギオンに捩じ込んで来やがった。
当然俺は文句を言いに言ったが、門前払いを食らう。何故か聞く耳持たなかった。俺はおっさんの対応が良く分からない。これは少し付き合い方を考えなくてはいけないと思ったがアンリエッタのことを思うと少し踏み留まった。だが俺の中ではガイのおっさんの評価は暴落だ。
その何日か後、おっさんの手紙を甥のナッシュがパーティメンバーと持ってきて先日の事を詫びてきた。
「あの時は申し訳ございませんでした、深く反省しています…これ、叔父からの手紙です」と。
ガイの手紙にはこう書かれていた。
あまり表沙汰にしたくないのはギルドも一緒だがカイン一人では他の冒険者に示しが着かん。
故に新人育成を依頼という形で請け負ってほしい。
皆お前のレギオンに期待しているんだ。と…
俺は頭を掻くと直ぐに返事をした。
「責任は持たん、勝手に強くなれ。根性があるなら精々戦える様にはしごいてやる。ただし一週間の期限を付ける。」と
それからガイのおっさんには会っていない。手紙も届かない。
ならば俺に出来ることをこいつらに仕込むだけだ。
俺にもやらねばならない事がある。
100階層を目処に一旦冒険者を辞めるつもりだ。
このような些事には付き合ってられないのだ。
俺はナッシュパーティを全員分け、ブルース、ティア、アンリエッタ、ジン、コクランに任せた。
ナッシュパーティは前衛に片手剣と盾装備のナッシュ、斧使いのヴェン、中衛に槍使いのゴーズ、後衛に治癒術士のセラ、攻撃魔法使いのイオとバランスの良いパーティだ。
全員帝国貴族の子でボンボン。甘ったれた根性から叩き直す。
ナッシュにはアンリエッタを、ヴェンにはジンを、ゴーズにはコクランを、セラにはティア、イオにはブルースを付け長所を伸ばすことにした。
拳闘士が居れば俺が見てやってもよかったんだが、居ないのならば仕方ない。
餅は餅屋、その専門職に任せるのが楽だ。
比較的高い階層で急速的にレベルを上げさせ、24時間徹底的にパワーレベリングを行った。
一週間経った今ではメキメキとその実力を延ばし飛躍的にレベルを上げた。
全員LV150前後まで上がった。ダンジョンから出た際全員がその場で倒れ込むというハプニングも起きたが…
クロッセアを将来背負うパーティになってくれるだろう。
だがまだ未熟。これから経験を経て更なる成長を期待だな。
そのうちミンストレイルを訪れて勇者に協力してやれと言付けをして俺のことは黙ってる様に言った。
まぁ、その頃には俺もダンジョンを攻略してるか。だが、慢心はいけない、何事も段取りが重要だからな。
契約の一週間が過ぎた後は自己鍛練に勤しむ様に告げ、レギオンから追い出した。
新人育成を含め、諸々の準備を終えた俺は期限の二週間を迎えたのでベニートのおっさんから手足の防具を受け取った。
状態は良好、重くなくそれでいて防御力は落ちていない。
「良い仕事を見せてもらった」
俺はそう呟くと追加の金貨五十枚をカウンターに置く。
「なんのつもりじゃ、坊主!」
「わからないか…?手切れ金だ。精々余生を楽しめ」
俺は冷たく言い放つ。
これ以上俺に関わると命が危険だと暗に伝えた。
俺は武具の製作を依頼しおっさんはそれを作る。
ギブアンドテイクの関係だ。
俺は魔王、これ以上はおっさんに迷惑がかかる。
だからその為の手切れ金だった。
「こんなもん貰えるか!」
「いや、納めてもらう。今まで世話になった、じゃあな」
「おい、ちょっと待て!坊主ーー」
俺はベニートに一方的に別れを告げ、屋敷に戻った。
良い職人だったが仕方ない。命には代えられないからな。
これから準備をして俺達はダンジョンを攻略する。
しばらくクロッセアに戻る気はない、本格的にやってやる!
俺は案外気に入ってしまった葉巻に火を付け、クロッセアの街並みを今では魔眼となってしまった両目に焼き付けると煙を燻らせながら屋敷へと向かった。
はい、と言うわけで前言っていた青年枠にハヤセ改めコクランを当てました。これからどんどん増やしますよ?多分作者も忘れるくらい出るのでは…?と少し恐々としております。
次回から本格的にダンジョン攻略に乗り出します。お楽しみに!




