魔物屋再び
感想をいただきました!ありがとうございます。
返事などは作者多忙の為出来ませんが、この場を借りてお礼申し上げます!
セレナ、モネと別れた俺は路地裏を突き進む。
なんせ約二ヶ月振りに来るからな。
っと、確か…おぉ、有った有った。
大きな看板には『ヴァネッサの魔物屋』とデカデカと書かれていた。
からんからんと鐘の音が響く中店内に入った俺を女の子が迎える。
その女の子は明るい声と共に手に箱を抱えながら俺を出迎える。
「いらっしゃいませ!あら?この魔力は…ソラトさんですか?」
目元に布を巻いたメデューサの血を引く少女、アンナが俺を迎えてくれた。
魔力で特定出来るんだな、すげえ!
「よぉ、アンナ。ヴァネッサは居るか?それと俺には石化効かないから包帯解いていいぞ」
「はい、ご主人様は奥に居ますよ!あ、そうでした!髪、ほとんど真っ白になっちゃいましたね…?」
シュルシュルと音を立てて包帯を解き相槌を打つアンナ。
「ん?あぁそうだな。これ、お土産。後で食べてくれ。それとヴァネッサを呼んでくれないか?」
俺は髪を一房掴み左手に持った菓子入りの袋をアンナに渡した。
アンナに指摘された通り俺の髪はどんどん白髪化していき今では全体の七割が白だ。全部白くなったら魔王として覚醒するんじゃないかと危惧しているが多分当たってるだろう。
「わー!ありがとうございます!すぐ呼んできますね!」
嬉しそうに菓子入りの袋を抱えるとテッテと奥へアンナは下がった。
包帯を解く時に手に持っていた一抱えほどある箱が視線に入る。
まだ幼いのに店の手伝いをして立派に働いてるんだな。
アンナの持っていた箱の中を覗くと中には何冊かの本が入っていた。
【娼婦の嗜み 基礎編】
【娼婦の嗜み 応用編】
と書かれている。
その他にも性にまつわる本が沢山…
うん、見なかった事にしよう。
そういやヴァネッサは娼館を経営していたんだったか。
こっちが副業と聞いていた気がする。
それでもこんな若い子供に何を教えるつもりだ?
少し興味を惹かれたが、敢えて心を静める。
「お待たせ。随分約束の時間より遅れて来たじゃない。言い訳なら一応聞いてあげるけど?」
長い艶やかな赤髪を揺らし大きな胸も揺らして近づき、俺にしなだれかかってくるヴァネッサ。
男を誘惑するのはお手の物ってか?
「釈明はない。セレナ達と町を散策していただけだ。」
「あら、前に見たあの二人ね?随分お盛んですこと。」
クスクスと笑いながら俺の頬に手を添えるヴァネッサ。
それを無視して俺は近くのソファに腰掛ける。
「それで…俺を呼び出した事について聞きたいんだが。」
「あら、随分せっかちね。でも私、そうゆう男が好きよ。時間は大切なものだからね」
アンナを下がらせ、向かいではなく俺の隣に、自然と腰掛けるヴァネッサはからかいながらも本題を話し始めた。
「正直、遊びたいけど我慢しましょうか。貴方を呼び出したのはね。例の件よ。」
奥に居るであろう魔物、魔族が生活する区画を指差しヴァネッサはニヤリと笑う。
「貴方が魔王に覚醒した事を話したら貴方の下に着きたいって子が多くて多くて。正直手を妬いてるのよ。身請け…配下に加えてくださらないかしら、魔王様?」
蠱惑的な表情を浮かべヴァネッサが懇願した。
そう、俺の魔王化に伴いエルフの里で捕虜問題について合議するため、
再会したヴァネッサがいち早くこれに気付いた。
魔族の勘ってやつが働いたのだろう。
ヴァネッサ、アンナと共に足代わりに来たスレイプニルのハヤセも同様だ。
やはり魔族、魔物には魔王の誕生が気付かれてしまうらしい。
多分魔人にも…
あの洞窟で会った魔人、シュザークはいつか殺す。
それまで力を蓄えねば…。
クロッセアに戻り、話し合った結果俺の元に身を寄せたいという魔族、魔物が量産された。
「俺に内緒で勝手な話だ」
「そうね…でも皆期待してるのよ。貴方にね。」
俺の手に指を絡め、耳元で囁く。
その時数多の視線を感じた。
店内の魔族、魔物やアンナと同世代くらいの幼い魔族の姿も見えた。
俺とヴァネッサの会話を盗み見ているのだろう。
…正直、期待が重すぎる。
それでも本当に俺に着いて行って良い結果になると確信し信頼しているのだろう。
そんな思いが視線から犇々(ひしひし)と伝わった。
「私もそう。皆、新しい魔王の誕生に喜んでるのよ。なんせ百五十年振りだから」
「今は駄目だ、やることがある。…そうだな、数ヶ月後また来る。その時にまたこの話をしよう。…じゃあな」
俺はヴァネッサを振り払うと立ち上がる。
「あぁん…いけずぅ…!」
ヴァネッサの言葉を無視して俺は店を出た。
今はこれで良い、俺の計画には人手が足りない。
魔族、魔物なら尚更だ。
正直望んで手に入れた力じゃないが、有効に使わせてもらおう。
俺は歩を早め、去ろうとした。が、
「おやおや、これはソラト様。こんな所で会うとは偶然ですな!」
「ローアインか。ヴァネッサに用か?」
偶然すれ違ったローアインが声を掛けてきた。
書類の束と護衛の兵を数人連れているのでヴァネッサに何か用事があるのだろう。
「ええ、都市内の政策について相談が有りましたので。屋敷まで送らせましょうか?」
「いやいい。少し町を見たいからな。俺は行くぞ?また何かあったら連絡する」
「ええ、お待ちしてます。それでは。」
ローアインと別れ歩き出すとまた呼び止める声が聞こえる。誰だ?
「ソラト、待ってくれ!」
後ろから制止する声に振り返る。
「ハヤセか…」
「俺が送ろう。ヴァネッサから今日付けで暇を貰ってな。困ったな…行く宛がない。仕方ないお前の屋敷で世話になってやるか。」
「ははっ…勝手な奴だ。好きにしろ」
俺はハヤセに背を向け歩きだした。
「言質は取った。ソラト…いや、我が主よ。これから宜しくお頼み申す!」
ハヤセは黒い毛並みを風に漂わせながら地に伏せ頭を垂れ俺に叫んだ。
路地裏だったから良かったものの大通りでこんな騒ぎはごめんだ。
「俺の進む道は険しいぞ?死ぬかもしれない、それでも着いて来れるか?」
「我が命、主の為なら朽ちても構わぬ。我が背に乗せ共にこの足で何処までも突き進む所存。共に行かせてくれないか?ソラト…主の覇道を!」
俺を主と定めた瞬間これだ。義理堅い奴だな。全く…
俺はハヤセの背に跨った。
「分かった。帰ったらお前を魔物から魔族にしてから夕食だ。あぁ、そういえば…ハヤセは牛肉って食えるか?」
俺はそうおどけた。
単純に疑問だったのだが確認しておかねばならない。
もし野菜食主義者なら別途で用意しなきゃいけないから大事なことだ。
「魔物舐めんなよ、俺は肉食だ!」
と返されたのは余談だ。
こうして俺は強力な配下を一人増やした。
ハヤセが仲間になった!▽
まぁちょこちょこ出しててキャラ創作時には仲間になることは確定してたんですが…
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