第九章 幾つもの世界が息づく街
エリアスが最初に気づいたのは、道がもはや旅人たちだけのものではなくなっていたことだった。
ここ数日、彼は野原や小さな集落を通り抜け、荷馬車が時折通る程度の森の中の道を進んできた。だが今、道は人で埋め尽くされていた。商人たちは荷を積んだ家畜を引き、御者たちは声を張り上げて指示を飛ばし、騎馬の一団が通り過ぎていく。歩行者たちは車輪を避けようと、道の端を歩いていた。
荷馬車も大きさはさまざまだった。樽を運ぶものもあれば、色鮮やかな布で覆われた箱を積んだものもある。一台の荷車には青みがかった羽を持つ鳥たちの籠が載せられ、誰かが近づくたびに鳥たちはさえずった。少し先では、鍋を山ほど積んだ手押し車を男が押しており、そのそばでは二人の女がエリアスには聞き覚えのない言葉で言い争っていた。
デリクはすっかり慣れた様子だった。
旅人たちに挨拶を交わし、別の者たちを巧みに避け、時折立ち止まっては知り合いと二言三言言葉を交わしていた。
一方のエリアスは、目に入るものすべてを一度に見ようとしていた。
「そのうち首が回らなくなるぞ」とデリクが言った。
「見るものが多すぎるんです」
「ただの道だぞ」
「人でいっぱいの道です」
「人のいない道のほうがいいのか?」
「時々は」
デリクは笑った。
「街に着いてからが本番だ」
それほど待つ必要はなかった。
道は緩やかな丘を上っていった。荷馬車が頂上に差しかかると、目の前に広がる景色が一気に開けた。
ヴィレデン。
街は谷間から斜面にかけて広がり、淡い色の石壁に囲まれていた。高さの異なる塔が屋根の上にそびえ立ち、色鮮やかな丸屋根を載せたものもあれば、尖った屋根と風にはためく旗を掲げたものもあった。陽光は窓ガラスや建物の金属装飾に反射し、街の一角には大きな滝が流れ落ちていた。その周囲の建物には、薄い水煙が漂っている。
エリアスは荷台の上で立ち上がった。
「これ、全部ひとつの街なんですか?」
デリクはゆっくりと手綱を引いた。
「そうだ」
「空を脅かすために造られたみたいだ」
「ヴィレデンは、初めて訪れる者のために造られた街じゃない。権力を持つ者、命令を下す者たちのために造られた街だ」
デリクは帽子を取って額をかいた。
「まあ、きれいなのは確かだ。そこは否定できないな」
エリアスは見つめ続けた。
街そのものが、いくつもの街を内包しているようだった。高台には優雅な建物が並び、城壁の近くには石造りの塔がそびえ、市場の周囲には密集した地区が広がっている。谷のあちこちを結ぶ橋も見えた。大通りは大きな広場へと集まっていたが、無数の細い道が建物の間へと消えていく。
「首都って、偉そうな人たちが大きな家に住んでるだけだと思ってました」
「そういうところもある」
「ヴィレデンは?」
「ここにも人に命令する奴はいる。だが、魚を売る奴もいれば、金を失う奴も、仕事を探す奴も、財布を盗む奴も、自分がどこにいるのか分からなくなる奴もいる」
「ずいぶん詳しいんですね」
「ここでは三回道に迷ったことがある」
「それは詳しいとは言いませんよ」
「危険な場所を知ってるってことだ」
荷馬車は斜面を下っていった。
近づくほどに、街はますます大きく見えた。城壁はエリアスが想像していたよりもずっと高かった。一定の間隔で見張り塔がそびえ、正門の両脇には翼を広げた巨大な石造りの獅子が立っていた。
獅子たちは翼を広げ、前脚を石の台座に載せている。顔つきは厳めしく、どこか人間じみていた。近づいてくる旅人たちを、彫像たちは一人残らず見定めているようだった。
エリアスは見上げた。
「どうして獅子なんでしょう?」
「馬じゃ、あまり怖くなかったんじゃないか」
「デリク」
「さあな。古いものだ。俺が生まれる前からここにあった」
門の前には長い列ができており、ゆっくりと進んでいた。衛兵たちは書類や荷物、通行許可証を確認している。入口の脇には木造の詰所があり、係員たちが荷馬車を記録し、通行料を徴収していた。
二人の番が来ると、デリクは輸送書類を差し出した。
衛兵は書類に目を通し、それから荷物を見た。
「行き先は?」
「ヴィレデンの市場だ」
「積み荷は?」
「布地、乾燥薬草、生活道具」
「乗っているのは?」
「俺とこの若者だ」
衛兵はエリアスに目を向けた。
「名前は?」
「エリアス・サーンです」
「入市の目的は?」
「軍への出頭です」
デリクが彼の鞄を指さした。
「書類は本人が持っています」
衛兵はエリアスに手で合図し、手紙を見せるよう促した。封印を読み、署名を確かめると、書類を返した。
「許可する。街に入ったら、手紙に記された詰所へ行くように」
「ありがとうございます」
衛兵は先へ進むよう合図した。
門をくぐった瞬間、エリアスは別の世界に足を踏み入れたような気がした。
大通りは広く、荷馬車の重みですり減った灰色の石板が敷き詰められていた。小さな広場には噴水があり、古い建物と新しい建物が並んでいる。磨き上げたガラスを並べる市場、鉄細工の施されたバルコニーを持つ宿屋、刺繍のタペストリーで飾られた神殿もあった。
小さな礼拝堂の鐘の音は、商人たちの呼び声と競い合うように響いていた。
色とりどりの旗がバルコニーではためいている。焼きたてのパンの香りに、香辛料や革、切りたての木材、塗りたての塗料の匂いが混じり合っていた。
だが、エリアスが最も驚いたのは、その多様さだった。
遠い土地から来たと思われる服装や肌の色、訛りを持つ男女が、珍しい品を運んだり、聞いたこともない王国の硬貨で値段を交渉したりしていた。花模様の外套をまとった魔術師たちが、物静かな修道士たちと肩をぶつけている。細い目をした職人たちは、南方の料理人たちと寸法について議論していた。服に小さな鈴を縫いつけた旅人たちの一団もいれば、薄いヴェールで顔を覆った者たちもいた。
エリアスは目を離せなかった。
「また見とれてるぞ」とデリクが言った。
「仕方ないですよ」
「なら、存分に楽しめ。ただし屋根を眺めている間に鞄を盗まれるなよ」
エリアスは鞄を体に引き寄せた。
「デリクも盗まれたことがあるんですか?」
「俺が? ないな」
「ずいぶん経験豊富そうですけど」
「他人が盗まれる瞬間に気づく経験なら豊富だ」
荷馬車は曲がりくねった街路を進んでいった。
デリクは道中、二人を迎えてくれる男について話し始めた。
「ブレナーはいい奴だ。口数は少ないが、話すときは率直だ。サルメスの港で乾燥薬草を売っていた頃に知り合った。あいつは徴税船の書記だった。今まで見た中で最悪の仕事だったが、本人は楽しそうにやっていたな。人間よりインクの匂いのほうが好きだと言っていた」
「今は記録官なんですか?」
「出世したってことだ。見栄を張るのは嫌いだが、そこらの隊長より影響力がある。ただ、政治だけは大嫌いだ。それに客が来るのもな」
「客?」
「本人はそう言ってる」
「人を迎えるのが嫌いなんですか?」
「前もって知らせてくれる人を迎えるのは好きらしい」
エリアスは笑った。
「知らせたんですか?」
デリクは聞こえなかったふりをした。
「あいつには三つ借りがある。だから今、そのうちの二つ目を返してもらうところだ」
「一つ目は何だったんです?」
「馬を貸した。そしたら二日後に川に落ちた」
エリアスは彼を見た。
「ブレナーに馬を貸したんですか?」
「ああ」
「馬は死んだんですか?」
「知らん。川に流された」
「それは答えになってませんよ」
「俺にできる答えはそれだけだ」
デリクは再び通りに目を向けた。
「妻のマエリスは料理がうまいし、俺みたいな人間にも我慢強い。子どもたちはおしゃべりだが、いい子たちだ。乾いたベッドで眠って、温かい飯を食って、楽しい話を聞ける。森の真ん中で天幕に泊まるよりずっといいだろ?」
「もちろんです」
「ただし、娘に惚れるなよ」
エリアスは顔を向けた。
「娘がいるんですか?」
「いや。だが、用心するに越したことはない」
荷馬車は果物や布地、金属製品を売る商人たちが集まる小さな広場を通り過ぎた。女が小さな香水瓶の値段を大声で叫んでいる。その近くでは、肩にオウムを乗せた老人が、太陽の下で考えを溶かす方法について何やら宣伝していた。
エリアスは横目で眺めた。
「ここでは、あれが普通なんですか?」
「街へようこそ。ここには狂人も聖人も、不遇な人間もいる。全部同じ街区にな」
エリアスはその言葉を心の片隅にしまっておいた。
ブレナーはまだ仕事中だった。
淡い色の石で造られた建物は中央広場の近くにあった。特別に壮大というわけではないが、幅の広い正面玄関と高い窓があり、書類を抱えた職員たちが出入りする部屋がいくつも連なっていた。
中は慌ただしい空気に包まれていた。
書記たちは書類の山を整理し、使者たちは壁際で待機している。職員たちは小さな木箱を抱えて広間を行き来していた。羽ペンが羊皮紙を引っかく音に、印章を押す音や話し声、引き出しの開閉音が混じっていた。
ブレナーは比較的小さな机の向こうに座り、書類に囲まれていた。
眼鏡をかけ、髪を後ろへ撫でつけている。目の前の書類一枚一枚が個人的な侮辱であるかのような、集中しきった表情をしていた。
デリクに気づくと、顔を上げた。
「デリク」
商人は両腕を広げた。
「ブレナー!」
「まだ生きていたのか?」
「おかげさまでな。お前は相変わらず、誰かを埋葬しているような顔をしているな」
ブレナーは立ち上がった。
「仕事をしようとしていたところだ」
「奇遇だな。俺もここまで来ようとしていた」
「どれくらいの間、来ようとしていたんだ?」
「数字の話はやめよう」
ブレナーは短く笑い、友人の腕を握った。
それからエリアスに目を向けた。
「その若者は?」
「エリアスだ。いい子だよ。数日、泊めてやってほしい」
ブレナーは複雑な契約書でも読むような目で、若者を見定めた。
「いいだろう。寝床ならある。ただし静かに過ごせるとは限らんぞ。子どもたちが広場で歌うための曲を作るのに夢中な時期でな」
「部隊の軍歌よりはましでしょうね」とエリアスが言った。
ブレナーは笑った。
椅子の後ろに掛けてあった外套を手に取る。
「ちょうど早めに切り上げるつもりだった。行こう。妻に、印章に飲み込まれたと思われる前にな」
デリクは笑みを浮かべた。
「頼りになると思っていたよ」
「調子に乗るな」
「まさか」
ブレナーは机に目をやり、それから書類の山を見た。
「誰かが今日中にこれを片づけなければならん」
「いつもそう言っているな」
「いつも新しい仕事が増えるからだ」
三人は建物を出た。
ブレナーの家は、市場の喧騒から離れた、比較的静かな通りにあった。
道すがら、石造りの細い路地や、タペストリーや古道具を扱う店の並ぶ建物の前を通った。小さな花咲くバルコニーのある家もあれば、大きな建物の間に隠れるように建つ工房もあった。午後の早い時間だというのに、最初の客を迎え始めた酒場も見えた。
デリクは歩きながら昔話を始めた。
「前にブレナーの家に泊まったとき、息子の一人が、兄弟にパイを分けたくないって理由で、内側から浴室に鍵をかけたんだ」
ブレナーはため息をついた。
「やめてくれ」
「おかげで俺は鶏小屋の裏で用を足す羽目になった」
エリアスは笑った。
「誰かに怒られたんですか?」
「どっちにだ? 子どもか、父親か?」
「子どものほうです」
「いや。生き残る訓練をしていたと言っていた」
ブレナーはデリクを見た。
「お前も手助けしなかっただろう」
「俺は自分が生き残るのに忙しかったんだ」
鉄細工の施された門の向こうに、家が姿を現した。門には青銅の装飾があしらわれている。
二階建ての建物で、淡い色の壁に沿って蔦が伸びていた。前庭にはきれいに刈り込まれた低木が並び、小道に身を傾けるように小さな木が一本立っている。
ブレナーがノックする前に、玄関の扉が開いた。
赤毛をまとめ髪にした女性が顔を出した。
「ブレナー? もっと遅くなると思っていたわ」
「早く切り上げた」
「それは見れば分かるわ」
彼女はデリクに目を向けた。
「あなた」
デリクは笑顔を浮かべた。
「マエリス! ヴィレデンで一番我慢強い女性は元気か?」
「誰が来たかによるわね。一人で来たの?」
「そういうわけでもない」
マエリスはエリアスを見た。
「お客さんも一緒なのね」
「エリアスだ」とブレナーが説明した。「数日、うちに泊まることになった」
「ようこそ」
女性は微笑み、三人が入れるように扉の脇へ退いた。
家の中には、蝋燭の蝋と焼きたてのパン、乾いたインクの香りが漂っていた。壁の一部を高い書棚が占め、そこには本や整理された箱がぎっしり並んでいる。遠い土地の風景を描いた絵が飾られ、刺繍の施された敷物が足音を和らげていた。
エリアスは興味深そうに辺りを見回した。
「きれいな家ですね」
「ありがとう」とマエリスが答えた。「ブレナーは、飾りつけのほとんどを私が選んだと言うのよ。彼は脚のぐらつかない家具が好きなだけ」
「理にかなった好みだ」とブレナーが言った。
「それに、カーテンは不要な発明だと思っているの」
「埃がたまる」
「カーテンよ、ブレナー」
デリクは大声で笑った。
「言っただろう。楽しい話が聞けるって」
マエリスはエリアスに、用意してある部屋へ鞄を置いてくるよう頼んだ。部屋は二階にあり、細長い窓と寝心地のよさそうなベッド、小さな書き物机が備えられていた。
机の上にはインクと紙、それにランプが置かれている。
エリアスは鞄をベッドの足元に置き、しばらく腰を下ろした。マットレスは彼の好みには柔らかすぎた。体が少し沈み込み、滑り落ちないように座り直さなければならなかった。
木の天井を見上げる。
ブレイデンを出て以来、次にどうするかをすぐに決めなくてもいい場所に身を置いたのは、これが初めてだった。
しばらくして、彼は台所から漂う香りに誘われるように階下へ降りた。
台所は広く、橙色を帯びたレンガがむき出しになった壁で囲まれていた。高い窓から夕暮れの光が差し込み、壁を黄金色に染めている。パンを焼いたばかりの埋め込み式の窯はまだ熱を帯びており、作業台の上には銅鍋が吊るされていた。
長い食卓には陶器の食器が並べられていた。
肉をほぐした野菜スープに焼きたてのパン、濃い色の果実のジャム、そして薄めたワインが入った水差し。
二人の少年が隣り合って座っていた。
二人は双子で、どちらも十五歳だった。一人は少し長めの髪をしていて、話すときに手をよく動かす。もう一人は落ち着いた表情をしていたが、兄弟の動きを一つ残らず目で追っていた。
「こちらがラウンとリリスだ」とブレナーが紹介した。
「どっちがどっちですか?」とエリアスが尋ねた。
二人は互いを指さした。
「こっちがラウンだ」と、同時に言った。
マエリスが料理の皿を食卓に置いた。
「小さい頃からずっとこれなのよ」
「だって、こいつがラウンだから」と、少年の一人が言い張った。
「違う、僕がラウンだ」
ブレナーは席についた。
「双子だからな。一貫性を期待するな」
エリアスは二人に挨拶し、椅子に腰を下ろした。
食事は質問攻めから始まった。
どこから来たのか。ブレイデンはどんなところなのか。どんな仕事をしていたのか。剣は使えるのか。魔術師を見たことがあるのか。小さな村では本当に誰もが互いを知っているのか。
エリアスは答えられる限り答えた。
父親の工房を手伝っていると話すと、ラウンは剣を作れるのかと尋ねた。金具や釘、道具ならよく知っているが、と説明すると、リリスは錠前を直せるかと聞いた。
「錠前によるよ」
「うちに開かないのがあるんだ」
「鍵屋を呼べばいいんじゃない?」
「父さんが直すって言ったから」
ブレナーは皿から顔を上げた。
「直すとは言っていない。見てみると言っただけだ」
「もう三か月だよ」
デリクは笑いすぎて、危うくスープを吹き出すところだった。
「この家は最高だな」
マエリスはスープをよそい足した。
「二人の言うことは真に受けないでね。何でも競争にしたがるのよ」
「そんなことない」とラウンが言った。
「僕のほうが得意だけどね」とリリスが付け加えた。
言い争いが再び始まった。
エリアスはしばらくの間、家族の様子を眺めていた。
ブレイデンとは違う。家はもっと大きく、部屋には家具が多く、あちこちに本が置かれている。それでも、マエリスが子どもたちを叱る様子も、ブレナーが聞こえないふりをする様子も、デリクがすっかりくつろいでいる様子も、どこか懐かしく感じられた。
もしかすると、人と人との距離は、場所と場所との距離ほど遠くないのかもしれない。
夕食の後、ブレナーは紹介状について尋ねた。
エリアスは鞄から手紙を取り出し、彼に渡した。
ブレナーは封印を調べた。
「ヴルヴェか」
「門の衛兵もそう言っていました」
「これは軍事訓練機関の印だ」
「でも、メルガヴァはヴィレデンで出頭するようにと言っていました」
ブレナーは書類を読み直した。
「矛盾はない。首都で出頭することを認める紹介状だ。ヴルヴェは訓練機関の一つだが、首都にはさまざまな権限を持つ者や部隊から送られてくる志願者を受け入れる窓口がある」
「それなら、ここに滞在していてもいいんですか?」
「数日ならな。ただし、指定された詰所へ行って、登録を確認する必要がある」
エリアスはうなずいた。
ブレナーは手紙を返した。
「後回しにするな。書類というものは、忘れられている間に厄介事へと変わる、実に困った性質を持っている」
デリクは杯を持ち上げた。
「この人の言うことを聞いておけ。生きている人間の中で、紙に詳しいことでは誰にも負けん」
「それは褒め言葉じゃないぞ」とブレナーが言った。
「俺に出せる中では最高の褒め言葉だ」
その後、エリアスは部屋へ戻った。
家の中は静かだったが、離れた部屋から双子が言い争う声がまだ聞こえていた。
彼は窓を開けた。
そこからは屋根の一部と、小さなランタンに照らされた塔が見えた。遠くで礼拝堂の鐘が時刻を告げた。さらに遠くからは、滝の絶え間ない水音が聞こえてくる。
ヴィレデンは完全には眠らない街だった。
いくつもの窓に明かりが灯り、遅い時間の荷馬車が通りを横切り、まだ営業している店から人々の声が響いていた。
エリアスはポケットからカエルにもらった石を取り出した。
それを机の上に置く。
次に、修道院で見つけた小さな青い欠片を取り出し、その隣に並べた。
最後に、メルガヴァの手紙を広げた。
自分の名前と封印、それに記された指示をもう一度読み返す。
明日、彼は出頭しなければならない。
明日から、ブレイデンを離れたということが本当は何を意味するのか、知り始めるのだ。
彼はランプの火を消した。
外では、街が眠らずにいた。
エリアスは、自分の知らないところで、ほかの者たちもまた、書類や地図、そして決断を前に夜を過ごしていることを知らぬまま眠りについた。
その中には、街を守るために働く者たちもいた。
街を傷つける方法を探している者たちもいた。
そして、まだ誰一人として、自分たちの道がいつか交わることを知らなかった。




