第十一章 泥と火薬の三週間
夜明け前に鐘が鳴った。
エリアスは目を開けたが、起き上がらなかった。
鐘がもう一度鳴った。
広間の向こうで誰かがうめいた。ひとりの少年が窓の方へ枕を投げつけた。
別の少年は毛布を頭まで引き上げた。
そして、怒鳴り声が響いた。
「起床!」
リアンが寝台から飛び起きた。
「レジーナ! 荷物を頼むぞ!」
壁のどこかに隠れているゴキブリは、返事をしなかった。
エリアスは身を起こした。なぜ世界はこんな時間に自分を起こそうとするのか、まだ理解できずにいた。筋肉が、これまで経験したことのない痛みを訴えている。実のところ、ここ数日で、自分がそんな筋肉を持っていたことすら知らなかったと気づかされたばかりだった。
「急げよ!」すでにブーツを履き始めていたリアンが急かす。「遅れたら軍曹に走らされるぞ」
「もう遅れてるのか?」
「知らない。でも、遅れてるとわかる前に走った方がいい」
その後の三週間で、エリアスの日々は命令と砂埃と疲労の連続へと変わっていった。
鐘の音で目を覚まし、中庭に整列し、足が自分のものではなくなったように感じるまで行進する。仲間との間隔を保つこと、全員が同時に向きを変えること、そして最初のうちは混乱させるために考案されたとしか思えない号令に従うことを学んだ。
その次に待っていたのはマスケット銃だった。
エリアスが初めて銃に触れたときの感想は、想像していたほど華々しいものではなかった。機構は重く、火薬で手は汚れ、発砲の臭いは煙が消えた後も長く空気に残った。
教官たちは装填、準備、発射の手順を教えた。銃身を清潔に保つこと、弾薬を確認すること、そして火薬を無駄にしないことを繰り返し説いた。
「手入れの悪い銃なんぞ、偉そうな顔をした木切れにすぎん」
ある軍曹はそう言った。
エリアスは機械的な部分が気に入った。間近で観察し、分解し、どの部品がどう働いているのかを確かめられると、仕組みをよく理解できた。あるとき、訓練用の銃のひとつで機構が動かなくなっているのに気づいた。金属部品がわずかに変形していたせいだった。
教官はその部品を調べた。
「こういうものを扱ったことがあるのか?」
「銃はありません。でも、父の工房で働いています」
「なら、手を出す前に目を使え。それから、見つけたものを何でも直そうとするな」
エリアスはうなずいた。
その日の午後、彼は追加の仕事を命じられた。演習から戻り、泥だらけになったマスケット銃一式の清掃だった。
リアンはそれを不当な罰だと考えた。
「仕事ができるってだけで、ご褒美をもらったんだな」
「ご褒美には見えないけど」
「ここじゃ、ご褒美ってのはそういうものさ」
誰もが同じように順応できたわけではなかった。
行進はうまくできても、標的に当てられない者がいた。射撃の腕はよくても、隊列訓練では自分の足につまずく者もいた。体力には自信があり、どんな負荷にも不平を言わないのに、マスケット銃の轟音を前にすると顔が青ざめる者もいた。
最初の週に、二人の少年が逃げ出した。
ひとりは宿屋で見つかった。厨房の手伝いとして働かせてもらおうとしていたらしい。
もうひとりは戻ってこなかった。
教官たちは、いなくなった者について多くを語らなかった。ただ名簿から名前を消し、隊列を組み直すだけだった。
エリアスは、ヴィレデンにやって来た者の全員が、自分の意思でここにいるわけではないのだと理解し始めた。
農家の息子、職人の見習い、商家の若者、読み書きもろくにできない少年たち。親に付き添われて来た者もいれば、いくつもの州をひとりで越えてきた者もいた。
サヴェルという少年は、寝る前に小さな声で祈るのが常だった。
ある晩、エリアスは彼に尋ねた。
「怖いのか?」
「怖いよ」
「何が?」
「帰ってこられなくなること」
エリアスには、適切な返事が見つからなかった。
サヴェルは毛布を胸元まで引き上げた。
「母さんは、ここで一人前の男になるんだって思ってる」
「君は?」
「行進ができるようになると思ってる」
エリアスは天井を見つめた。
「どっちもそうなるかもしれない」
サヴェルは答えなかった。
一方、リアンはあの生活を生き抜くために生まれてきたかのようだった。
規律正しさが人一倍あったわけではない。むしろ、訓練中のおしゃべりや場違いな質問、簡単な仕事をわざわざ変わったやり方でこなそうとすることで、しょっちゅう注意されていた。
だが、動きを覚える能力には不思議なものがあった。
隊列を三度間違えても、四度目には正しくこなす。走っていて転んでも、次からは同じ失敗をしない方法を見つける。意識がどこかの馬鹿げた会話に向いているときでさえ、身体の方は動きを覚えているらしかった。
そして、姿を消すことにかけても並外れた才能を持っていた。
ある朝、新兵の点呼で、彼の名前が二度呼ばれた。
返事はない。
軍曹は列を端から端まで見渡した。
「リアン!」
沈黙。
「エリアス。お前の仲間はどこだ?」
エリアスは隣の空席を見た。
「わかりません、軍曹」
軍曹は一瞬、目を閉じた。
「だろうな」
リアンが見つかったのは、それからほぼ一時間後のことだった。補給用の荷車に積まれた小麦粉の袋の上で眠っていたのだ。
そこで何をしていたのかと尋ねられると、彼は答えた。
「物資を守っていたんです、軍曹。中から。誰かに盗まれないように」
軍曹は彼に中庭を走って回るよう命じた。
リアンは走った。
エリアスには、彼が楽しんでいるようにさえ思えた。
エリアスがボルレンとミロに出会ったのは、二週目のことだった。
その晩の夕食は、ことさらひどかった。スープはほとんど水で、パンはあまりに硬く、リアンは寝台の木枠を叩くのに使っていた。
「穴でも開けるつもり?」とエリアスが尋ねた。
「まだ食べられるか確かめてるんだ」
「そんな確かめ方はしないよ」
「じゃあ、もっといい方法があるのか?」
「あるよ。かじるんだ」
リアンは試してみた。
パンはびくともしなかった。
「ほらな? 石だよ、これ」
隣の寝台から大きな笑い声が上がった。
笑っていた男は、まばらな髭にがっしりした肩、いつも愉快そうな顔つきをしていた。空になった椀を手に持っている。
「そんなに叩き続けたら、弁償させられるぞ」
「俺はリアン。こっちはエリアス。こいつがまずい飯の責任者だ」
エリアスは眉を上げた。
「どういうことだよ?」
「君は物を直せそうな顔をしてる。料理人を直してやればいい」
男はまた笑った。
「ボルレンだ」と名乗り、手を差し出した。「それで、あそこにいるのがミロ」
ミロは壁に背を預けて座っていた。どちらかといえば物静かで、穏やかな顔をしており、会話を控えめな笑みを浮かべながら眺めていた。
「ボルレンの言うことは聞かない方がいい」と彼は言った。「腹が減ると、いつも以上にしゃべるから」
「じゃあ、俺は一日中しゃべってることになるな」
「もうそうだろ」
ボルレンは傷ついたふりをして胸に手を当てた。
「ひどい裏切りだぞ、ミロ」
エリアスは二人と握手した。
「ここにはどれくらいいるの?」
「本物の飯が恋しくなるくらいにはな」とボルレンが答えた。
「噛めるものなら何でも恋しがってるだけだ」とミロが言った。
「昨日、俺のパンを三切れも食べたくせに、よく言うよ」
「君がくれたからだ」
「俺は親切にしてやったんだ」
「君は寝てたけどね」
リアンはエリアスを見た。
「こいつら、気に入った」
その夜から、四人は頻繁に顔を合わせるようになった。
食事のときに一緒に座ることもあれば、訓練の後、中庭のベンチを分け合いながら息を整えることもあった。
一番騒がしいのはボルレンだった。ヴィレデンに来る前に出会った人々の話をし、自分の腕前を大げさに語り、腕相撲ならどんな男にも勝てたと豪語した。
ミロはあまり話さなかった。人の話を聞くのが好きだったが、ボルレンの話が現実離れしすぎると、ためらわずに訂正した。
リアンは、二人のそれぞれ違うところに興味を持っているようだった。
ボルレンはいつも何か食べ物を隠し持っている。
ミロは小さな袋に入れて持ち歩いている木製の駒を使う盤上遊戯を知っていた。
エリアスは二人と話すのが好きだった。ミロが急かすことなく話を聞いてくれるところにも、ボルレンがどんな不平も冗談に変えてしまうところにも、心が安らぐものを感じていた。
ある晩、干し肉を分け合っていると、ボルレンが尋ねた。
「それで、エリアス。どうしてここに来たんだ?」
「ほかの土地を見てみたかったんだ」
「それだけか?」
「いろいろ学びたくもあった。父が工房をやってるから、ほかの技術を知れたらと思って」
ボルレンはゆっくりと肉を噛んだ。
「俺は、何をしたらいいのかわからなかったから来た」
リアンが顔を上げた。
「それはひどい理由だな」
「俺の理由なんだよ」
「もっといい理由を選べただろ」
「お前はどうして来たんだ?」とボルレンが尋ねた。
リアンは数秒考えた。
「わからない」
ミロが短く笑った。
「それが一番ひどい理由だな」
「違う。すごく幅の広い理由なんだ」
エリアスは笑った。
しばらくの間、彼らは故郷について話した。
ボルレンは家族のことを話したが、詳しいことにはあまり触れなかった。ミロはエリアスの知らない町について語り、古い橋や、商人たちがよく集まっていた広場の様子を描写した。リアンは旅芸人の一座に育てられたという話をでっち上げたが、話し終えるまでに内容を三度も変えた。
エリアスはブレイデンのことを話した。
テオの工房、風車小屋、レメト川、収穫祭について語った。タレン、ライレン、エリン、カエル、ハーレンのことも話した。仲間たちとの悪ふざけや、家の前に現れた案山子のことも説明した。
リリアの名を口にしたとき、ボルレンは彼の声色が変わったのに気づいた。
「ほう。女の子がいるのか」
「何もないよ」とエリアスは答えた。
「じゃあ、女の子がいるんだな」
「友達だよ」
「なるほどな」
ミロは椀越しにエリアスを見つめた。
「彼女が恋しいか?」
エリアスは焚き火に目を向けた。
「恋しいものは、ほかにもたくさんあるよ」
それ以上、誰も尋ねなかった。
日々は続いていった。
行進し、訓練し、銃を掃除する。隊列を組み、連続して射撃する手順を覚える。考えなくても身体が動くようになるまで、同じ訓練を繰り返した。
エリアスは、連携がどれほど重要なのかを理解し始めていた。兵士ひとりが強く、腕が立ったとしても、隊列全体は一人ひとりが自分の役割を果たさなければ成り立たない。
規律を身につけても、恐怖が消えるわけではないことも学んだ。
発砲の前にまだ震える者もいた。銃が爆ぜる瞬間に目を閉じてしまう者もいた。教官たちは失敗を叱責したが、若い者たちが轟音に怯えることまでは防げなかった。
エリアスは周囲を観察した。
彼は最も優秀な新兵でもなければ、最も劣っているわけでもなかった。長時間の行進には苦労したが、道具や機構、修理に関わる訓練ならすぐに覚えた。リアンは予測がつかなかったが、教わったことを忘れることはめったになかった。ボルレンは力も持久力もあったが、注意を払うよう何度も言われる必要があった。ミロは慎重で几帳面で、誰かが間違いを犯したときに気づくのが得意だった。
少しずつ、四人は互いの習慣を知るようになった。
ボルレンはいつも朝食に文句を言う。
ミロは鐘が鳴る前に目を覚ます。
リアンは寝言を言う。
エリアスは家に手紙を書こうとしていたが、いつも書き終えるだけの時間が見つからなかった。
三週目になって、ようやく一通を送ることができた。
街のこと、ブレナーとマエリスのこと、双子のこと、新しくできた仲間たちのことを書いた。
ときどき感じる恐怖や、どれほど故郷を恋しく思っているかについては書かなかった。
ミラを心配させたくなかったのだ。
手紙は、ほかの何十通もの手紙と一緒に使者へと渡された。
いつブレイデンに届くのか、エリアスにはわからなかった。
それでも、旅立ってから初めて、故郷を自分のそばにつなぎ留めるために何かをしたのだと感じられた。
三週目の最後の朝も、鐘はいつもどおりに鳴った。
新兵たちは中庭に整列した。
軍曹が各隊列の前を歩き、ひとりひとりのブーツ、制服、姿勢を確かめていく。
「今日は評価を行う」
隊列の中をざわめきが走った。
「静粛に!」
中庭は静まり返った。
「お前たちはこの数週間、基礎を学んできた。行進、隊列、武器の扱い、そして規律だ。これから評価を行い、その結果に応じて今後の配属先を決める」
リアンはエリアスの方へ、わずかに首を傾けた。
「レジーナも評価されるのかな?」
エリアスは彼を見なかった。
「黙ってろ」
「彼女には才能がある」
軍曹が二人の前で足を止めた。
「何か問題でもあるのか?」
「ありません、軍曹」
二人は声をそろえて答えた。
男はもう一瞬、二人を見つめた。
「結構。なら、評価を受けるだけの体力は残っているだろうな」
リアンは笑みを浮かべた。
エリアスは胃が締めつけられるのを感じた。
この段階の先に何が待っているのか、彼にはわからなかった。メルガヴァの手紙によってヴィレデンまで来ることはできたが、初期訓練を終えた後にどの道へ進むべきなのかまでは書かれていなかった。
彼は仲間たちを見た。
ボルレンはベルトを直していた。ミロは教官から目を離さない。リアンはこれから何が起こるのかを知りたくてたまらない様子だった。
鐘が最後にもう一度鳴った。
そして、隊列が動き始めた。




