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終末巫女の王国作り~祈りは終末を呼ぶが、国の繁栄には欠かせない〜  作者: 片名葉
建国編

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九尾の村 後編

風に揺れる竹の葉のざわめき。それを聞きながら、雲一つない空を仰ぐ。


「良い天気ね……」

「ほ、本当に行くんか!?九尾の村を壊しに!?」


巫女流の瞑想をする私に、狐の少女が縋りついてきた。少女の名はツバキ。淡い桃色の髪に、きめ細やかな肌。そして猫の耳と狐の尾。半化けである彼女は、可憐な顔を蒼白にしている。


「壊すんじゃないの、ただちょっと……偉い人とお話をしたくなってね」

「わーっ、絶対ケンカする気やん!うちは別に、村を変革する気なんかないんやけどっ!?」

「こんな目に遭ってまで?」


私は地面に伸びている狐人たちを指差す。

彼らは本当に、殺すことも辞さない覚悟で襲いかかってきた。そして、無理やりにでもツバキを連れ戻そうとしていた。彼女の意志など省みずに。


「それは、そうやけど……。何があっても逆らえんよ、村には。この人らは『一尾』のようやけど、村にはずっと強い『九尾』や『十尾』もいる……」


そういえば、狐は尾が多いほど強大な力を持っているのだったか。少女は不安げに尻尾を左右に揺らしている。そんな少女の頭に、細長い蔓が置かれた。

エイデンだ。


「わしは世界樹で、こっちは巫女に小鬼と精鋭ぞろいじゃ。たとえ百尾の狐がいたって大勝をおさめるじゃろうよ。それにのぅ、わしらはそんなに血迷っとらん。そこの巫女はともかく」

「失礼な!!」

「そうです、まずは神代麦を売ってからです!」

「え、ええのかなぁ……」


取り合えず、村の実情を知ってからでも遅くはないだろうという方向で落ち着いた。



竹林を出ると、開けた盆地に出た。

盆地の中心には何本もの巨大な柱に囲まれた土地があった。柱は円を描くように等間隔に並んでおり、その間には桜の木が植えられていた。遠目では、中の様子を伺うことは到底できない。


「あれが九尾の村や……でも、そもそも入ることはできひんとちがうかな。警備が厳重になってしもてるから」

「ふむ……なら、わしに任せい!根の足(テルヴィエン)!」


と、地面を突き破って現れたのは、タコ足のような見た目の太い根だった。

次の瞬間、それに足元から押し上げられ――私たちは宙に放り出される。

こう、射出器(カタパルト)のように。


「ちょっとー!?せめて心の準備ぉー!?」


稲荷村が眼前に迫ってくる。必死の叫び虚しく、猛スピードで急降下していく。

その時、私は初めて鳥になった気分を味わった。




「う、ぇぇ……グロッキー」

「エイデンさん、そういうところですよ。もうちょっとデリカシーを持って……」

「きゅうぅ……あれ、うち生きとる……?」

「すまん、飛ばし過ぎた。でもほら、根で衝撃は吸収したし何の支障もないじゃろ」


私たち四人は、洗濯物のような格好で桜の枝に引っかかっていた。全ては紳士性に欠けるどこかの樹のせい。……何故か荷車だけは無傷だった。


「狐たちに見つかる前に早く移動しなきゃ……この道を真っ直ぐ行けばいいのね?」


痛む腰をさすりながら、桜の樹から飛び下りる。目の前には、壮観な光景が広がっていた。

幾重にも重なり、ずっと奥まで続く丹塗りの鳥居。その脇には、微かな光を放つ灯篭と、幻想的な桜並木がある。私は、思わず見惚れてしまった。


「眺めはなかなかに良い村なんじゃが。温泉とやらもあるらしいしな」

「そうですねー、どうせなんでひと風呂浴びて行きましょーよ」

「うひゃぁ、本当に帰ってきてしもた……い、一応化けとるからバレへんよな?」

「尻尾でバレバレよ……そもそもこんなすんなり村に入れるなんておかし……ん?」


そう、おかしい、おかしいのだ。

村には結界があるはずで、無理やり侵入しようとした者は弾かれる仕組みなのに。

ということは――


「結界が、ない?」


顔を振り仰ぐ。

が、頭上にはだだっ広い青空があるだけで、結界の痕跡は確認することができない。

慌ててツバキに詰め寄る。


「貴方、さっき、逃げ出してきたって言ってたわよね?どうやって逃げ出してきたの?」

「それが、村の中央でえらい騒ぎがあったらしくてな。そのせいで監視の目が緩んで……」

「中央!」


気付けば叫んでいた。普通、集落の中央にあるものと言えば、霊石。


「霊石が壊れたんだ……それで結界も消えた!じゃあ、今の稲荷村は――」


そこで。

薄氷を割るような鈴の音が、朗々と響き渡った。

まるで、私が辿り着いた答えを肯定するかのように。


「お見事です、巫女。そう、今ここは、狐の『幻術』が物を言う世界。ここを支配するのは狐の化かし合いです」


振り向くと、そこには、たくさんの鈴が付いた笠を被った女がいた。

長い金髪を引きずるようにしてこちらに歩み寄ってくる。


「魔力が使えないから、『幻術』に頼らざるを得ないってこと?……貴方は?」

「質問よりも先に状況の把握に努めるのですね。聡明なお方。私はミタマといいます。貴方を招待しに来ました」


どこへ、という疑問が口を吐く前に、目元を笠で隠した狐の女は言い放った。

()本の尾をうねらせながら。


「わたくしたち、村に抗う狐の根城……『楼閣』へ」


読んでいただきありがとうございます。

霊石があると何がお得か。その一つに、魔力が使えることがあげられます。魔力で身体強化するもよし、技能の底上げに使うもよし……魔力とは十徳ナイフなのです。

あと、狐の『幻術』は魔法でないので霊石がなくても普通に使えます。


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