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終末巫女の王国作り~祈りは終末を呼ぶが、国の繁栄には欠かせない〜  作者: 片名葉
発展編

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お土産は玉手箱

竜宮城での宴を終えた後。私たちは沢の入り口でカーフィと別れの挨拶を交わしていた。


「また来てね巫女さんたち!あと、エイデンも、ね?」


水面から顔を出すカーフィは艶やかな仕草で流し目を送る。エイデンはまな板の上に乗った活きのいい魚みたく跳ねた。その顔は樹らしからぬ淡い赤に染まっていた。


「は、ははいつか訪ねるとするかの」

「いつかていつ!?エイデンが来なかたら鉱石全部ドブに捨てる!取引なんてしてやんないから!」

「エイデン、つれない男は嫌われるわよ」「社交辞令もできないようでは世界樹失格ですね」

「お主ら他人事だと思って……」


昨晩の内に人魚たちと商談を済ませておいた。青緑の鉱石に赤紫の鉱石。両方を破格で売ってくれるとのこと。

お試しでいくつか石を持って帰ることになった。石がずっしりと詰まった風呂敷を背負うツバキはひいひいと悲鳴を上げる。


「巫女ざーん…重いんやけど、これ…」

「ツバキだってきっといけるわよ!だって小柄なルティナが軽々持ち上げられてるんだから!」

「騙されてるんよそれ!絶対魔力で身体強化しとるし!」

「わ、童はそんないかさましない」


ツバキとルティナが仲良くいがみ合うのを他所に私はカーフィと固く握手をした。柔らかそうなほっぺがほころんで白い歯が覗く。

仰々しい言葉はいらない。

同じ死の地に住む者同士、これから顔を合わせる機会はいくらでもあるだろう。……場合によってはエイデンの元に押し掛けてくるかもしれないし。


「巫女さん、ありがとう。国作りが上手くいくこと願てる」


透き通る歌声が耳朶を撫で、天井へ吸い込まれていく。

私たちはそうして色濃い思い出の残る竜宮城を後にしたのだった。





「随分長い間国をあけちゃったわね、どうなってるかしら……」

「何言っているんだ巫女さん、たかが二日くらいではないか」


体感では二日よりももっといたような、と不思議な感覚に首を傾げながら鉱山を出る。


すると、眼前に巨大な村が出現した。


大小さまざまな平屋が軒を連ねていて、槌の音が軽快に響いてくる。行き交うダークエルフたちは何の違和感もなく浴衣を着こなし、籠を頭の上に乗せている。籠の中では川魚がぴちぴちと踊っていた。

故郷でよく見た景色だ。

皆が言葉を失って呆然と立ち尽くす。


「……あ、あららっ?出る場所間違えたんじゃないわよね……?」


独り言を零した瞬間だった。前の小路から飛び跳ねてやってくる小さな黄緑の影がちらついた。

まんままりもの魔物、モスアトマだ。


「そこにいるのは巫女さんたちじゃねぇかー!?よかった、失踪したわけじゃなかったんだな、よかった!!」

「モスアトマ…老けた?」


飛び込んできたモスアトマを腕で抱え、気付く。緑色の体毛にちらほら白いものが混じっていることに。

白いものの正体が白髪と悟り、私は戦慄した。


「うそっ、どうしたの心労!?水質の問題!?ふわふわだった毛が薄くなってるわよ!」

「そういう巫女さんは全然変わらないな……。二年も経つのに」

「に、にねん?」


思わず素っ頓狂な声を上げた。

二年ということはお日さまが八百近く登って沈んで。赤ん坊だった子が自力で歩くようになって。

混乱に陥る私たちに次に声をかけたのはダークエルフのおかみさんだった。


「ありゃ、伝説の巫女さん御一行に似た方たちがおるねえ!どうしたんだい観光かい!?」

「で、でんせつのみこさんごいっこう!?」


いつの間にそんな通り名が!仲間たちと顔を見合わせる。どうやら壮大なドッキリではないことは確からしかった。


「ど、どうしましょう竜宮城が異様に時間の進みが遅かったとかいうアレですかね……」

「アレじゃのぅ……。わしの畑はどうなっておることやら」

「うっ、うちの楽しみにしとったお菓子がーッ!」


小鬼が達観したような面持ちを浮かべ、エイデンとツバキが残してきたものを憂いて叫ぶ。

しっかり者のルティナだけは冷静に事実に対処していた。


「ねぇモスアトマとやら。童たちが不在の間、誰がこの国を取り仕切っていたの?」

「えーっと、狐の美女だったかな、九本尾っぽがある人で…」

「ミタマさんや!」


ツバキは一足先に屋敷がある方へ駆け出す。困惑する私たちもそれに続いた。

精神安定剤代わりのモスアトマを携えて。





街並みが何もかも変わった中で、屋敷だけは元のまま私たちを迎えてくれた。

狐の門番に話を通して中へ入っていく。庭園から鹿威しの長閑(のどか)な音が響いてきた。

尼の格好をした美女は縁側に座って茶をすすっているところだった。


「ミタマ!」


呼びかけた途端、湯呑みが滑り落ちた。ミタマはわなわなと震えながら立ち上がる。


「巫女さん……!?それにエイデンさん、小鬼さん、ツバキ!初めましてのダークエルフさんも!やっと、帰ってきたんですね!」

「ええ!二年もお留守番してくれてありがとう!」


涙を伝わせるミタマを正面から抱き締める。ツバキも尻尾を振って取りついた。

二年もの歳月が流れていたなんて、実感がわかない。


「無事に帰ってきたようで、本当に良かったです…!皆さんの帰りを待って死の地を守り抜いてきたんですよ…!」

「ありがとう。貴方が喜びそうないい報告を持ち帰って来れたのよ」


私は風呂敷を解いて輝く鉱石を露わにした。

青緑に、赤紫。きらきらと日の光を照り返している。


「これが、竜宮城のお土産よ」



読んでいただきありがとうございます。

巫女たちがいなかった二年間モスアトマに何が起こったのかと言いますと、

ダークエルフの子供たちに追いかけ回されて終いには苔扱いされストレスが溜まりに溜まり禿げ……かけました。

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