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終末巫女の王国作り~祈りは終末を呼ぶが、国の繁栄には欠かせない〜  作者: 片名葉
発展編

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御伽噺の終わり

「巫女さん!連れてきたで、ダークエルフの鍛冶士!」


頭上から舞い降りてきたのはツバキと小鬼、それから筋骨隆々の褐色肌の男性だった。

男性は小脇に作業台と土を抱えている。洞窟でクセのある鉱石を加工してきた、優れた技術と知恵を持つであろう匠。


「なんだなんだ、剣を打ってもらいたいってやつはここにいるのか!?」


地面に着地した鍛冶氏はすぐさま道具を広げる。呆然としていた私はそこではっと我に返った。


「エイデン、ルティナ、ごめん!この場をお願いできる!?」

「もちろんじゃ!足止めは任せい!」


脱皮した鎧竜が鼻から泡を吹き出してふしゅうと唸る。背中に吸いつく視線を振り切るように飛び出す。今一番役に立っていないのは私。エイデンたちに申し訳が立たない。


「ビルジー!!どこー!?」


竜宮城中に届く大音声で呼びかける。すると、ビルジーが荷車を引きながら塔の陰から現れた。

荷台に詰まった赤紫の石が鈍い光を放っている。


「巫女さん、注文通り倉庫にあった石を持ってきたぞ!だがどうすればいいんだ、こんなもの!?」

「助かったわビルジー!ありがとう!」


不揃いの鉱石を手に取り、その潤いのある色を認めると鍛冶士へ投げ渡した。


「鍛冶士さん!この石で剣を打って!なるべく早く!」

「この石で、なぁ……。随分加工しにくそうな頑丈な石だが、洞窟で偏屈石どもを叩き直した俺からすりゃあ、大したことねぇな!」


ぼうっ、と作業台に火が灯る。魔力をより集めて作られたものだ。水中でも変わらず激しく揺らめいている。

赤紫の鉱石が炎の中に投げ込まれ、熱い舌でちろちろと舐められる。少しずつ表面が溶けていくのを見て私は目を見張った。

頑丈さが取り柄の鉱石のはずが、まさかこんな簡単に液状になってしまうとは。

ダークエルフは朗らかに言った。


「俺たちは暗い穴蔵の中で石の声とずっと向き合ってきたんだ……。魔力の注ぎ方も火の扱い方もお茶の子さいさいだ。なめてもらっちゃぁ困るぜ」


日にあたると溶け、暗闇だと固まる灰翡翠(ルジェライト)の石のことを思い出す。

彼らはエルフたちに追いやられ日の元に出ることも叶わず石を打ち続けていたんだ。改めてダークエルフのすごさを思う。

私は彼らのことをなめていた。

カン、カンと歌うように鎚が打ち付けられ、石がぐにゃりと曲がっていく。先がどんどん赤く、鋭くなっていく。

瞬き厳禁の早業で一振りの剣が作り上げられた。


「仕上げだ。—―白き精、荒涼たる大地、銀世界の讃美歌。樹々には薄化粧を、厚い雪煙の中で。『冷却魔法』」


冷気が発散され、熱を帯びた剣が一瞬で凍てつく。鍛冶士がそれを作業台に乱暴に打ち付けると、氷が割れて赤みがかった銀の輝きが露わになった。

おずおずと剣を手に取り、塔に向けて振るう。青緑の壁面に切っ先が触れた。

それだけでぱっくりと壁が割れた。こう、絹豆腐みたく。

……ちなみに私は非力な巫女である。


「うえっ!?斬れちゃった……!?」

「み、巫女さん、剣こっちに向けないでくれん?」

「ぼ、ぼくたちのことは斬らないでくださいね?」

「そんなことするわけ――あ」


振り返るのと同時に剣の刃が水底に当たり、深くえぐられた。地鳴りがして足元が真っ二つに裂ける。私たちは宙に漂いながら顔を見合わせた。


「あー、少々鋭く作り過ぎたか。これじゃ使い勝手が悪いな、打ち直すか?」

「いえっ、これならきっと鎧竜(トルゲレゾン)もズタズタにできる!エイデン!!」


注意深く剣を持ったまま、竜と対峙するエイデンたちの元へ駆けていく。

エイデンは赤紫の剣を目にするなり不敵な笑みを浮かべた。


「成功か!?これで斬れるんじゃな!?」

「ええ!ただし斬れすぎだから要注意、よ!」


剣を構えたエイデンが見据えるのは、ルティナの刺突を躱し尾を振り回す鎧竜。

そして、竜の腹から飛び出た人魚姫の顔。

一刻の猶予はない。人魚姫が完全に取り込まれるまで、残り僅か。


「エイデン、人魚姫を助け出すのよ。それで、終末に打ち勝ってね」

「もちろんじゃ、世界樹の名にかけて!」


エイデンは真っ直ぐに竜の懐へ飛び込んでいった。覚悟に呼応するように剣がより一層の輝きを放つ。

カーフィはエイデンを無理やり奪おうとした困った人魚姫。でも嫌う気にはなれない。

彼女もきっと、呪いを覆してくれる世界樹に夢を見た。

だから。


「ちゃんと救われなさい、カーフィ」


身を滅ぼす歌じゃなくて、誰かの心を掴む歌を。彼女はきっとそう願っていたはず。

赤紫の斬撃が水をかき分けて、鎧を纏う竜へと突っ込んでいく。

ぶつかった一点から眩い光が漏れ――鎧は木っ端みじんに砕け散った。

すさまじい断末魔が響き渡る。

終末は、閃光にもまれてはじけ飛んだ。


優しい歌声が泡沫と共に立ち昇る。

泡の中から現れたのは一人の人魚姫だった。




読んでいただきありがとうございます。

えっちらおっちら続けてやっと五十話に辿り着けました。ここまでついてきてくださった方、重ねてありがとうございます。

思えば巫女も成長したものですね。逆境をチャンスに変える力……私も欲しいものでです

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