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終末巫女の王国作り~祈りは終末を呼ぶが、国の繁栄には欠かせない〜  作者: 片名葉
発展編

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どんな家がお好き? 前編

そうして陽は落ちてまた昇り、遂に理想の家対決が開幕した。


「皆さんおはようございます。稲荷村の暫定村長のミタマです。本日はお日柄もよく、花見酒するのにとてもいい陽気ですね。花見と言えばうちの村の桜は花盛り。酒蔵の清酒も仕上がってきた頃ですねー」

「ちょっと脱線してるわよミタマ!貴方の村の宣伝をしようってわけじゃないのよ!」


尼装束の狐人、ミタマは可愛らしく舌を出しながらも稲荷村の話を延々と続ける。とりとめのないおばあちゃんの長話を聞かされている気分だ。

たっぷり十分語り終えた後、ミタマは集まったダークエルフたちに両手を掲げた。


「話したいことは全て話したのでっ、それでは家対決に移りましょうか。さあ、この決戦の火蓋を切る一番手は――『おかみチーム』!」

「あいよ」


恰幅のいい褐色の肌のおばさんが前へ歩み出てきた。フライパンを堂々と担ぐその姿は台所の戦士。

背中は万人を包み込むような愛に溢れていて、不遇な暮らしの中で鍛え抜かれた体はたくましい—―って、私はなんでおかみさんの解説をしているんだ。


大事なのは家の出来栄え。


おかみさんたちが先陣を切って連れていってくれたのは森の中にある岩場だった。

みずみずしい若木に囲まれて大きめの岩がごろごろと転がっている。上手い具合に木陰に入っていてとても涼しい。

立地は完璧だ。薄暗いというのも有利に働くかもしれない。

一体全体どんな家が出てくるのか。

固唾を飲んで岩の間を通り抜けていく。が、それらしい建造物は見つからなかった。


「あれ?家はどこにあるのかしら?」

「ここからやと見つからへんなぁ。あっちも平屋と違うん?」

「まっさかぁ…」


そして、おかみさんが立ち止まったのは何の変哲もない大岩の前だった。


「ここだよ」


おかみさんは岩に垂れていた幕をめくる。果たして、扉の向こうは――。


「いや家じゃないじゃないの!」


案の定というか、かぼちゃみたく中身をくりぬかれた洞窟がこんにちはした。

入り口にぶら下がったランプが細々とした内装を照らしている。エキゾチックな絨毯や小物、そしてハンモックまで。隠れ家のような雰囲気があった。

とても魅力的で、ぶっちゃけ言うと私も住みたいが、問題はそこじゃない。


「これ洞窟を作っただけじゃない!家の構造はよ!」

「何を言うさね巫女さん。洞窟はあたしたちにとっての家さ。これもアリだろう?」

「うーんそうだけど…!」


理想の家対決と言っていたのに。

すでにある岩を利用して家を作るのはいいのか?これは審判に判断を仰ぐしかない。


「ちょっとミタマ―!?これはいいの!?」

「一から作れという条件はないので一応大丈夫かと思いますよ。あ、ダークエルフの酒もなかなかいけますね」

「買収されてる!真面目に働きなさいよー!」


ミタマはおかみさんから差し入れられた樽をラッパ飲みしていた。人選を間違えたかもしれない。

いきりたつ私に、おかみさんは余裕しゃくしゃくの表情で語りかけてきた。


「あたしたちはダークエルフさ。自分たちのことは自分が一番よく分かっている。あんたたちがいくら趣向を凝らして家を作ったとて、やっぱりシンプルな物にはかなわないのさ」

「……!いえ、まだ分からないわよ!」


ダークエルフたちは目を輝かせて洞窟に吸い込まれていく。子供たちは洒落た内装にきゃっきゃっとはしゃいでいる。

それでもまだ分からない。

私は気に入られるよう最善を尽くしたつもりだから。


「えー、次は……『世界樹チーム』ですね!」





「まず先に言っておくぞ。わしはお主らが殺そうとしてきたことをなんら気にしておらん。というかの、世界樹って目で見られるのは苦手なんじゃ、ただの左官屋エイデンとして見てほしい」

「貴方いつ左官屋になったの」


エイデンは家を披露する前にそう前置きをした。引き締まっていたダークエルフたちの顔から力が抜ける。そりゃそうだろう。自分たちが殺そうとしていた世界樹が、自分たちのために家を作るなんて言ったら。

案内されたのは森の奥だった。……って、ここに森なんてあったっけ?


「しかと目を開いて見ておけ。これが世界樹流ツリーハウスじゃ!!」


草むらをかき分けた先にあったのは、太い植物の根で編まれた小さな家だった。

大樹の根元に沿うようにして建っていて、屋根にはふんだんに花があしらわれている。妖精が住むような可憐で神秘的な家だ。その外壁は全て翠色。

……うそでしょ。


「貴方ッ、自分の体で家作ったわね!?」

「げ」


エイデンは下手くそな鼻歌を歌いながら目を逸らした。その頬に伝う冷や汗を私は見逃さなかった。

皆まともな家作りをしていない。


「自分の体を使うなんて……。これから何百人もの家を作るのよ、それで大丈夫なの!?」

「べっ、別に大丈夫じゃ!そそそれにこの家はわしの体でできてるわけじゃ…」

「そうですよ!エイデンさんの髪と爪を少し犠牲にして作りましたけど大丈夫です!あと垢も少し!」

「おいやめるんじゃ小鬼(ゴブリン)!」


小鬼が全て明かし(ゲロっ)てくれたおかげでエイデンは三日間水をあげなかった植物みたいにしおれた。私は更に詰め寄る。


「建設性がないわよ。それに貴方、いつか体壊すわ」

「建設方法は秘密にすれば神聖な世界樹のイメージダウンは防げるぞ」


熟考の末、ミタマは失格の札を挙げた。崩れ落ちるエイデン。

こうなったら、私とおかみさんたちの一騎打ちか。

私は勝ち誇った表情をするおかみさんたちと熾烈な火花を散らせるのだった。



読んでいただきありがとうございます。

巫女以外真面目に家作っていない…。おかみチームはどうやって洞窟を作ったのかというと、

破砕魔法で岩に穴を空ける→内装は狐の幻でつくったものを置く

という手順でした。

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