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花嫁は王冠を抱いて ~ヴォワ=デートによるカラフルデイズ~  作者: 紙木 一覇


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第63話 ま、人は変わるものだよ

 小さく細い指を顎に当てて、思案顔のヴォワ。


「ここでリンクの開門を試せるかな?」

「人でやった経験はないが、可能かもな」

「ならば――」

「ちょちょちょちょちょおっと待ってくださいヴォワさま。それって失敗しちゃったらどうなるんですか?」


 ヴォワの言葉をさえぎって、エアラリス。


「どうなるんだね?」

「二人分の質量に耐え切れずどちらかが呑み込まれるだろうな」


 一方が消えると言う話だ。


「具体的には?」

「廃人となる」

「よし、やってみよう」

「ヴォワさまー⁉」


 それはいけません! いけません! 慌てて止めに入る。


「あたしも賛成出来ないわ。そもそも人体で実験するにはそれ相応の許可を得ることが必要なはず」

「それら全て俺たち機構には必要ない。

 研究している事柄を現在の法で縛ってしまえばままならないからな」

「そ……そうなの?」

「ああ」


 頷く国砂(こくさ)。それはヴォワもしっている。


「んでもヴォワさまが廃人になってしまう手段なんて容認出来ませんよ!」

「エアラリス、キミは私がコピー脳に敗けるとでも?」

「そ――」


 そうではない。ないが、それでも心配なのだ。


「そもそも国砂さん、勝ち負けってどこで決まるんですか?」

「『座標』の勝ち負けか。謎だな」

「謎て」


 考えたことはある。いや、ずっと考え続けている。しかし。


「空間にも時間にも意識がないからな。失敗してもそれはそれぞれの勝ち負けの問題ではなく技術が敗けたと言うだけの話だ」

「けど人体じゃ技術不足だったではすみませんよ」

「そうだな。だがヴォワはやる気なのだろう?」

「うん」


 即答にエアラリスは心配顔を向ける。なにを言っていいのかわからなくなってすっかり冷えてしまったコーヒーを一気飲み。空調が効いているとは言え夏にはちょうどよかった。


「エアラリス、私を信じたまえ」

「……はい」


 二人のその様子を見て国砂は少し口元を緩めた。笑ったのだ。


「ヴォワ、以前の君ではないようだな」

「ん?」

「機構に招かれた時は家族以外に心を開いているようには見えなかった」

「……ああ、あの頃は私を病人扱いするメディアに振り回されていたからね」


 ちょっとした人間不信。

 けれど今はそうではない。ヴォワ自身が強く賢くなったのもそうだがなによりいい人柄を持つ友人が増えたから。


「ま、人は変わるものだよ」

「……そうだな」

「キミが奥さんを得て子煩悩になったように」


 変わるものだ。人は。どんな男でも。


「……なぜしっている?」

「調べたから」

「……帰れ」

「断る」

「……」

「……」


 睨み合う二人。火花が散るのとは違う静かに凍える冷気の視線。


「ま、まーまーケンカしないで」

「そ、そうですよヴォワさま。目的も出来たことですし」

「む? そうだね。からかってごめん」


 素直に謝罪をいれるヴォワ。それが出来るのは人間としての美徳の一つだ。


「……まあいい。

 ついて来い」

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