第61話 久しぶりだな、ヴォワ=デート
「ここだ」
駅を出てしばし歩き、機構の日本支部に辿り着いたのは午後二時。勿論昼食を摂ることも忘れなかった。
「アポとらずに来ちゃいましたけど……」
見上げる先にあるのは鏡面ガラスのビル。高さこそ十階建てと珍しくない高さだがなんと言っても横に広い。わかりやすく言えば東京ドーム十個分である。
「連絡とっていたらその時点でアウトさ。まあかと言っていきなり来ても門前払いだろう。そこで、トーハ、キミの出番だ」
「あたしの警察権限、ね?」
「そうだ。言っておいたことはやったね?」
「ええ。日本の警視庁にはOKを貰っておいたわ。強制的に機構に入れるわよ」
当然の話だが警視庁が簡単にOKを出すはずがない。が、こちらにはヴォワがいる。ヴォワの世話になっているのはイギリスの警察機関だけではないのだ。日本の警視庁も例にもれず、今回のOKは恩返しとなる。
「――では、行くよ」
ビルの中に入って、まずは受付へ。
受付嬢にトーハが挨拶して、出来得る限り上の人間を呼び出してもらう。
「おやまぁ」
出てきた人物、彼の顔を見てヴォワは意外そうに口を開いた。
「国砂くん、国砂支部長、まさかキミに出て来てもらえるとは思わなかったよ」
現れたのは三十代の男性。オシャレボウズの黒系・消炭色の髪、猛禽類を思わせる灰色の眼と眼光。日本人にしては長身の背丈にその体を包む黒のスーツ。まだ若い彼こそが三つある日本支部のトップにしてここ日本総合支部の長である。
「久しぶりだな、ヴォワ=デート」
「そうだね。機構に誘われた時以来か」
ヴォワと国砂、二人には面識があった。同時期に機構にスカウトされた数人の内の二人なのだ。そしてヴォワは断り、国砂は入会を選んだ。
「わずか数年で支部長になるとは、優秀でなにより」
「そちらこそ活躍しているようでなにより。
まあ座れ」
ロビーにあるソファへと促され、三人は並んで腰を下ろした。その対面に国砂が座す。
「要件はわかっている。コピー脳だな」
「うん」
流石に、情報を得ているか。コピー脳の協力者を探すよりも話が早そうだ、方向を変えるのもありかな? とヴォワは柔軟に思考を巡らせる。
「奴らが生きていると言いたいのだろう」
「ほぅ、そこまでしっているのか」
「当然だ。現状を鑑みればそう推測するのが当たり前の話。そうでなければ話のつじつまが合わないからな」
女性がコーヒーを持ってきてくれた。
おやつの時間にはまだ早いが、ヴォワはそれを快く受け取り一口啜った。ミルクをたっぷりといれたから丁度いい味になっている。
「それをしって機構はなにか手を打っているのかな?」
「……胴体・肺・頭部を手に入れた」




