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花嫁は王冠を抱いて ~ヴォワ=デートによるカラフルデイズ~  作者: 紙木 一覇


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第60話 万葉集。小を集めて大にしたとてもよい例だ

「おバカさんでなければ戦争を回避するはずだ。戦争はあくまで国家間の交渉手段最後の一手。現時点ではまだそこまで事態は進んでいないはずだよ。進んでいるのならとうに世界は火の海だ。

 これは希望的観測だが、あのパーカーの九体がようやく動き出した、と言うところだと思う。

 ゆえに私にこだわっているし、『神赦婚姻(しんしゃこんいん)』にもこだわっている」

「『神赦婚姻』って結局なんなんですかね?」


 なんとなく空を見上げる。本物の天使や悪魔、さらに神さまがいるとしたら、きっとそれは人よりも高い場所。


「ここまで特殊なピースはないわよね?」

「ないね。だが個々で大したものではなくとも全てそろえば壮大になる可能性はある。

 ほら、日本にもあるだろう? 万葉集。小を集めて大にしたとてもよい例だ」


 うんうんとエアラリスは首を縦に振る。


「なるほど。つまり完成してこそ意味があるってことですね」

「意味があるってことだ。彼女たちにとっては」

「でも集めないとハイ=ルミナ氏の容体が危ないのよねぇ。

 今朝連絡とってみたけど解毒出来てないって話だったし」


 暫し、電車が揺れる音だけが響く。


「あれ? ちょっと疑問があるのですが」


 恐る恐る手を挙げるエアラリス。

 なんだい? とヴォワに視線で問われ。


「コピー脳ってそもそも知能はどの程度なのでしょう? 人の脳をコピッただけならその人と同じくらいなのですか?」

「ネットから情報を集められるなら急激に成長――いや進化と呼ぶべきか? が出来るだろう。だがオフラインで行動しているならば通常の人間と変わりあるまい」


 それならば進化の手はない。しかし。


「彼らの星がある場所はどこなの?」

「オフラインだよ。ただ、彼女たちにはオフラインでありながら秘密裏に他コンピュータにアクセス出来る手段がある」

「そんなの出来るの? どうやって?」

「これさ」


 言ってヴォワが見せたのは、自身がはめたブレスレット――普段はドレスの袖に隠れているもので、ヴォワの左手薬指にある金色の指輪と鎖で繋がった同色の細い輪っかのこと。ピンク色の大きな水晶柱がついているそれは、綺麗かつ派手過ぎない逸品である。


「【メディ】。彼女は――初体(しょたい)はこれを持っている」

「え? ええ? どうしてですか?」

「それってヴォワちゃんのオリジナルでしょ?」

「そう、こう言っているのだよ。

 初体は私のコピー脳だよ

 と」


 沈黙。それと静寂。

 二人はヴォワの口から放たれた言葉を心の中で反芻する。が、その言葉を今一つ呑み込めないで。


「「ええ⁉」」


 数秒遅れての驚きの声となって動揺は現れた。


「ヴォ、ヴォワさま協力なさっていらしたのですか⁉」

「誘いは断ったって言わなかった⁉」

「そうだよ。

 機構に入ってしまったらこちらの自由が利かなくなると思ったから断った。その後も協力はしていない」


 一切、だ。興味がないと言ったら嘘になるが、一度断った手前接触しないようにしてきた。


「で、ではどうしてですか?」

「単純な話さ。

 中身を見なければ是非の判断は下せない。

 それだけだ。

 つまり一通りの見学はさせてもらったんだよ。出来得る限りの研究の開示、協力者の人柄、出資国の性格。中には体験も含まれていた。

 その時に脳をスキャンされていたんだろうね」

「そんなあっけらかんと……」

「それって犯罪……いや該当する法はないかな?」


 脳にある記憶を探ってみるが、みつからない。


「こちらに実害があるわけではないしね」


 言って、パイプを口にする。何人かの乗客がヴォワを見、その内の一人が注意して来たので、


「大丈夫、ハーブだよ」


と応えておいた。その乗客は 怪しいハーブなのでは? と言う疑問を表情に見せたがヴォワは無視した。


「それで、コピーヴォワさまはヴォワさまに興味を持たれていたと」

「興味と言うか、私なら天使のピースを全て集めて来ると思ったのだろうね」

「そして事実集まってきている。

 この先は想像出来る?」

「残念ながら」


 そこから先は、これからだ。


「……そっか」

「だからまずは機構に行って話を聞こう。狙いはコピー脳に協力しながら機構に潜り込んでいる子。ひっつかまえて白状させる」

「「らじゃ!」」

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