第59話 最悪コピー脳側についている可能性も――
「ヴォワさまお次はどこに向かわれるのですか?」
武騎姫の元を去って二時間。
「ん、大阪とアメリカ」
一行はまだ京都にいた。
「お~近くに思えて結構な距離移動するわね。そこに天使のピースが?」
かと言って呑気に観光しているわけではない。
「それもそうだが、ちょっとヒーローにも黒幕にもなれなかった子たちに会いに行こうかと思って」
「ヒーロー?」
「黒幕?」
「……」
「……」
暫し黙考。そして二人揃って、
「「え⁉ 黒幕⁉」」
声を上げた。
「なれなかった、ね。
これから向かうのは大阪にあるその子らの日本支部だよ。国際科学研究機構」
「……うわぁお」
「大物じゃないの……」
それゆえにいろいろとめんどうなのだが。
「どうして機構に? と言うか機構が黒幕――もどきなのですか?」
機構は現在、加盟五十か国をこえる国際機関だ。常に最高のコンピュータを有しその役割は研究と実績を上げ加盟国に利益を還元すること。
そして間違いなく役割をこなし続けている。
「うん、実はね――」
「脳のコピー、ですか」
「その件はしっているわ。けどずっと公式発表の通りだと思ってた。つまり『解決した』。
それを覆せる情報は警察機関にはなかったし」
「なんせ世界中が出資国だからね。無理もない。プラスしていうなら機構自体もそう思っていたはずだ。『八体の警察によって処理された』、ってね」
「けど、コピー脳は生き残っていたんですよね。あれ? その『警察』さんが帰ってこなかったのではないのですか?」
八体の警察は初体によって捕獲され初期化されたのだから。
「私ならダミー情報を機構に流す。これは私でなくとも思いつくはずだよ」
「だから初体も思いつく、てわけね」
「と言うことは機構側も思いついたとしておかしくないですよね」
ん? それではダメなのでは? と首を傾げる二人。
「そこで、初体はダミー案を廃棄して別の手法をとった」
「へ?」
「味方につけた『警察』を本当に機構に帰したのだよ」
一時的に、演技をさせて、だが。
「えっと……『警察』はスパイとなった?」
「そう」
「そして機構は未だその事実に気づいていないのね?」
それは決して機構が無能だからではない。高度に争った結果、少しばかり劣っていただけだ。
「機構が初体等の情報を削除したさい、『警察』も削除しただろう。その前に初体に助け出されただろうけれどね。当然、削除したと誤認させる情報を機構側に流したうえで」
「策士ですねぇ初体さん」
駅についた。電車はひっきりなしに来ているから適当な大阪行きに乗ればいい。
「それでも、機構はバカではない。気づける子もいたはずなのだ。
問題はその気づいた子たちがこれまでどう言った行動を取って来たか、だね」
駅のホームに立って電車を待つ。
「それでも機構に居続けたか、反旗を翻したか。後者であるならばこちら側についてもらいたいところだが」
時間通りに在来線ホームに電車がやってきた。日本人、時間に正確。
電車から降りる人をホームで待って乗り込み、座る。ほぼ同時に電車は走り出して。
「最悪コピー脳側についている可能性も――そうか。彼女らの機械の体を造ったのはその子らか」
そう考えると世に出ていない技術で造られているのも納得がいく。
「だとすると相当大きな組織になっているわよ。コピー脳って国造っちゃったんでしょ?」
「そうだ。その子ら全てに体を与えるために動いているとしたら大勢力だ」
「わたしたち三人では太刀打ち出来ないのでは?」
左右の人差し指を何度かあてあうエアラリス。指でチャンバラのマネをしたのだ。
「そう思うだろう。ところが」
エアラリスの指を握って止める。エアラリスが「うひょ」と声を上げたがそれは無視することにした。
「彼らのリーダーである初体は恐らく無茶な攻撃には出ない」
「?」
「なぜですか?」




