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花嫁は王冠を抱いて ~ヴォワ=デートによるカラフルデイズ~  作者: 紙木 一覇


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第57話 こっちだよ君たち!

 立ち上がる祭姫(まつりひめ)。酒を煽っていたにもかかわらず足取りはしっかりしていた。

 どうやら上にもう一階あるらしい。ここが天守閣であるのを考えたら隠し部屋と言うことだろう。

 巫女が素早く用意した隠し階段を昇ってみると、ちょっとした酒の池があった。畳の上に、黒い石を組んで作られた薄い池だ。


「これは神宮にあるものの複製なのだけれど、占うには充分。

 池に手をつけて」

「私に占いは出来ないよ?」

「うらが一緒に行ってあげる。それによって貴女の疑問が一つくらい解決出来るでしょう」

「……ふむ」


 ならば、やってみよう。


「真似をして」

「うん」


 まず、祭姫は酒の池に両手を差し入れた。言われた通りにヴォワはそれを真似てみる。

 酒の池には半月の光が宿っていた。


「さあ、想って。恋人を抱くように疑問を抱きしめて」


 眼を瞑る。

 目下の疑問はあのパーカーの彼女。彼女の姿を思い浮かべ、言われた通りに疑問を憎むではなく愛す。

 ゆらり。パーカーの彼女が揺らいだ。パーカーが消えて、機械の体が露わになる。その体すらも透けて消えて、コピー脳だけが浮かび上がった。


(キミは――誰だ?)


 コピー脳から木の根のようになにかが生えた。これは、脊髄と神経か?

 骨が組まれ、繊維が編まれ、人の形をとっていく――


「――⁉」


 その正体を見て、ヴォワは閉じていた眼をみはる。


「っはっ……!」

「ヴォワさま!」


 ヴォワの体がふらついた。全身に汗をかいていて、ぺたんとお尻を畳についた。それをすかさず支えるエアラリス。


「これは……ずいぶん疲れるんだね」

「気力を持っていかれるようでしょう? 慣れれば大丈夫なのだけれど」

「大したものだよ……キミは」


 それにしても、ヴォワは心でそう続ける。


(パーカーの彼女、その正体――ついに()たぞ)






「……おや?」


 瞼の裏に陽の光を感じてヴォワは静かに眼を開いた。暫くはボーっとして、横を見る。エアラリスの顔があった。逆隣を見る。トーハの顔があった。川の字になっているらしい。


(えっと)


 確か酒の池で占いをして――そうだ、その反動で倒れてしまったんだ。

 そしてそのまま眠りについたのだろう。

 上半身を起こして部屋の中を改める。

 昨晩祭姫と話した天守閣だ。寝かされているのはヴォワとエアラリス、それにトーハの三人だけ。

 窓を開けて外を見ると観光客の姿が見えた。

 懐中時計を取り出し見ると午前十時を回ったところ。随分長く眠っていたようだ。とすると祭姫はすでに神宮の方か。


「はい、そうです」

「うぉう⁉」


 まるで心を読んだかのようなタイミング。かけられた声に眼を向けると一角にだけ巫女がいた。気配も色も絶って。まるで忍者だなと思うヴォワ。忍者、会ったことないけど。


「長く世話になったようだね。ありがとう」

「お気になさらず。祭姫も気にしていませんので。

 それと祭姫からの伝言です。

『天使の心臓を渡すから飛龍神宮に来て頂戴』」

「了解」






「ふぁ~」


 観光客の目も憚らず、大きなあくびとともに伸びをするエアラリス。


「十一時間も寝ちゃうとは……警察に勤めて以来初めてだわ……」

「よっぽど疲れがたまっていたのだろう。私も爆睡していたようだし」


 けれどおかげで疲労は取れた。こうして神宮へと続く道を歩いていても足元はしっかり道を踏みしめている。


「そうそうヴォワさま」

「うん?」


 顔を寄せてくるエアラリスの言葉に耳を寄せる。

「ヴォワさまが寝ちゃった後に聞いたんですけど、祭姫さまとハイ=ルミナさん、占いの師弟らしいですよ」

「師弟?」

「はい。

 ハイ=ルミナさん、暫くここで巫女をやっていたそうでして、その間に占いを習ってそれを基礎に占星術を独自に取得したみたいです」

「そうなのか。ハイ=ルミナ、意外と行動派だな」


 顔が広いわけである。

 話しながら三人は赤の鳥居を潜り、飛龍神宮本殿へと歩を進める。以前のように不意を突かれないように周囲を警戒しながら。前は祭姫の関係者だったから無事にすんだが敵に接近されていたらどうなっていたかわからない。


(敵――果たして機構はどう動くか……)


 自分たちに危害を加えることはないと思う。そんな気があるならとうにそうしているだろうし、そもそもそんなブラックな機構ではないはずだ。


(だが、パーカーの彼女を消しにはかかるかもしれない。その場合、私はどちらにつくのが正解かな?)


「あ、こっちだよ君たち!」

「ん?」

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