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花嫁は王冠を抱いて ~ヴォワ=デートによるカラフルデイズ~  作者: 紙木 一覇


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第55話 幽霊に見える

 なんとも意外。離殿とやらはすでに眼に見えていたのだ。なぜならば、神宮から続く城こそが祭姫(まつりひめ)の色が行きついた場所だったのだから。


「堂々としていれば逆にわかりづらいって言うけど」

「ほんっとに堂々としていたんですねぇ」

「それはまあいいのだが」


 問題があった。とうに一般入城時間を過ぎていると言う点だ。門は閉められ鍵をされ、警備の人間が仁王立ちしている。

 勿論鍵なんぞはヴォワの力の前には無力だがかと言って押し入るのはダメだろう。捕まったらアウトである。


「キミたち」


 だから警備の人間に自分たちのことが伝わっていないかを聞いてみた。が、返事は「いや、そもそもここに祭姫はいないよ?」と言うものだった。その色に嘘はない。つまり警備すらもここに祭姫がいる事実をしらないのだ。

 さてどうしたものかと首を捻っていると、ちりん 小さな鈴の音が耳に届いた。エアラリスの耳にだけ、である。だから彼女は音のした方向に顔を向けて――


「うひぃ⁉」


 すっとんきょうな声を上げた。


「うわ」

「びっくりした! なによ急に叫んで?」

「あああああああああああああああああああれはみなさんには見えてますかあああああ?」


 ちゃっかりトーハの後ろに身を潜めながら。

 震える指の先にいたものは。


「ふむ、幽霊に見える」


 きつねが、いた。

 黒いきつねの面をつけた黒装束の何者かが城の周囲にある森に浮かんでいた。


「「うひゃぁ⁉」」

「冗談だ。生きている人間の色だよ」

「な、なんだ……」

「脅かさないでくださいよぉ」


 警備の人間がこちらを見ている。そりゃ騒いでいたらそうなるだろう。けれども彼らはきつね面の装束にある紋を認めると急ぎ頭を下げてきた。どう言う力関係にあるのかはわからないが少なくとも警備よりはきつね面の方が上とみて間違いない。


「こちらへどうぞ」


 きつね面が囁いた。男の声だ。低く重く、それでいて落ち着く声。


「行こう」


 男が森の中に消えていくのを見て、ヴォワたちは後を追った。

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