第54話 ちょうどお祭りやってますねー!
祭姫のための社――飛龍神宮。五芒星の形をしたそれはそれぞれの頂点に赤の鳥居、黄の鳥居、青の鳥居、緑の鳥居、黒の鳥居があり、中央に立つ本殿を三つの白の鳥居が囲んでいる。
祭姫は日中その本殿にて祭事を行うが夜にはどこかへと身を潜める。彼女の行方はごく一部の人間しかしらない。が、恐らく件の離殿とやりにて就寝するのだろう。と言うことはだ、離殿に来いと言うからには夜に来てくれと言うことだ。
ならば。
「ちょうどお祭りやってますねー!」
そう言うエアラリスの両手には既に綿飴、かき氷があったり。
「ちょっとエアラリス、一人で突っ走らない」
そう言うトーハはしっかりとヴォワの片手を握っていたり。
「私はキミの子ではないのだが」
「やだなぁはぐれないためよ、うん」
「ではもう一方の手はわたしが!」
「私は捕われた宇宙人か」
太鼓とドラの音に合わせて龍が舞う。
この飛龍神宮に祀られる龍神さまを模して作られたと言われる木組みの龍。
うねるたびにウロコの一つ一つが他のウロコにあたって軽快な音を立てる。
「龍神はね、この神宮の近くを流れる川のことらしいわよ。昔、川が氾濫し、それを当時の祈祷師が『水龍が怒っている』って例えたのが始まりだとか」
「ほぉ」
「あれは?」
賽銭箱の後ろに出されているものを指さすエアラリス。
そこにあるのは人とも動物ともつかない一体の木彫り像。
「あれは、二度と龍神が怒らないようにって最初で最後の生贄にされた巫女。神威に当てられて神格化されてあの姿になったんだとか。以降彼女の代行者である祭姫が代々神宮を治めているみたいよ。
それで――」
言いながらトーハは灯篭の続く一本の道を指でなぞっていく。
「一本道の反対側にある城、あれの最初の城主が巫女と龍神の子。人外の存在であり、なおも人に好かれた才器って話」
大きく鐘の音が響いた。しゃらんしゃらんと鳴るそれは巨大な鐘が鳴ったのではない。万にも及ぶ小さな鈴が鳴り響いた音。
舟形の神輿がやってきた。今日のメイン、龍の巫女の登場だ。
人垣が横にずれて道を造る。そこを静かに、静かに舟が進む。
化粧をした龍の巫女が深々と頭を下げている様子を多数のカメラが捕らえていく。
巫女が顔を上げた。
その視線の先にいるのは先程まで舞っていた龍神。
巫女と龍神が出逢い、その子供の生誕を祝うように城から花火が上がり。
バチ
と音がするようにヴォワと巫女の視線があった。
巫女は微笑み、軽く手を振ってくれた。
「……今代の祭姫、か」
鳴り響く轟音に思考を停止させられる。
大きな花火がいくつも上がったのだ。
城から爆竹が神宮に向けて走っていき、
「わっ」
それが鳴りながらヴォワたちのそばを過ぎていく。
「凄い音ね!」
「ですね!」
「色もすごいがね……眼が回る……」
「祭姫の色は覚えた。時刻もすでに夜。行くよ」
「ういっす」
「はい」




