第53話 私はどう見ても儚き夢みる少女だろう
「じゃ、ルミナをよろしくな」
「うん」
天使の翼を受けとって、ヴォワたちは沖縄を後にした。
今回は飛行機ではなくフェリーを移動の手段に選び、個室をとって集めた天使のピースを並べ見る。
残るは
胴体、
心臓、
肺、
頭部、
の四つのみ。
そのうち心臓の所在ははっきりしていて今まさに向かっているところである。
「流石に翼は骨じゃないのね」
一つ一つが大きな羽の集合体。触ればふわりとした感触が手にきそうな錯覚に襲われるがやはりガラスで出来ている。
「そもそも天使の翼に骨ってあるのかね?」
「え? いやー見たことないし」
「見たことあったら大事です」
それはもう奇跡だ。
「でも目撃談はあるわよね。天使とか妖精とか。その辺ヴォワちゃんどう思う?」
「九割が想像の産物だよ、あくまで。しかしだからこそ価値があるとも言える」
つー、と翼に指を這わせながら。
「価値ですか?」
「神も天使も悪魔も人の産物。だからこそ人は彼を崇め・拝み・またそうであろうと志す。
手の届かないものだからこそ目指すのだ。
言ってみれば神聖物への願望は夢見る人の動力源と言ったところか」
「ヴォワちゃんも?」
「勿論。
私はどう見ても儚き夢みる少女だろう」
「……」
「……」
無言。儚き……はて? そんな子がどこに?
「なんだね?」
「「あ、いえ」」
「と、ところでヴォワちゃん、天使のピース増えたけどずっと持ち歩くの? 輸送した方が楽なんじゃ?」
「いや、どこで誰に奪われるかわからないから持っていくよ。人一人の命がかかっているんだ。最悪の事態があってはならない」
ハイ=ルミナはもう友人だ。それでなくともきっとヴォワは助け出す。
「キャリーケース三つ分かぁ。一人一個――と言いたいとこだけど」
「ヴォワさまの分はわたしが!」
「ああ! 今あたしがって言おうと思ったのに!」
「ふふん、早い者勝ちです」
「ふぬぅ」
ドヤ顔のエアラリスと、悔しそうに表情を歪ませる、トーハ。
「言っておくが持ってもらっても特典は用意してないからね?」
「「ええ⁉」」
「涼しいね」
大阪でフェリーを降りて、タクシーを拾って京都に入った。
ちらりほらりとヴォワの服装をドライバーが見て来たがまあいつもの話だ。タクシーを降りてからも同じ視線があるがこれもまたいつもの話。ヴォワは特に気にした風もなしに道を往く。古都・京都の道を。
吹く風はまだ夏のそれではあったが沖縄に比べればヴォワの言う通りに随分涼しくなっている。加えて、ひょっとしたら街の古風な雰囲気もあって気持ち一つ分そう感じるのかもしれない。
「さて、祭姫がいるのは――」
「飛龍離殿にお向かい下さい」
「――⁉」
不意を突かれた。いくら人にあふれている観光地とは言えまさか耳元までどこの誰ともわからないものに接近を許すとは。
「いかがなさいましたヴォワさま?」
「……どうやら私たちがここにいるのは筒抜けのようだ」
「え?」
「飛龍離殿と言うのはどこにある?」
「ちょっと待って」
タクシーのドライバーに貰ったパンフレットを確認するトーハ。
「ん~? 飛龍――祭姫のための社はあるけれど離殿はないわよ?」
「……となると隠されているわけか」
顎に指をあてる。
「なんで離殿?」
「先程囁かれた」
「「――!」」
言われ、二人はヴォワに寄って周囲を警戒する。
「いや、もういないよ。それに敵の色はなかったから安心したまえ」
「そ、そうですか?」
「うん」
と言われてもエアラリスは警戒をとかない。別の人物が接近してくる可能性だってあるから。
「けどあたし普通に見えて結構警戒してたんだけど」
「わたしもです」
「それは私もだよ。恐らく祭姫付きのものだとは思うが、なかなかにやるものだ」
くやしくは思う。けれどこう言う状況を嬉しくも思う。なぜならまだヴォワも不完全で目指すべき上がいるという証明に外ならないのだから。
「まず飛龍神宮に向かおう。祭姫の色を視てそこから離殿を探し出す」




