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花嫁は王冠を抱いて ~ヴォワ=デートによるカラフルデイズ~  作者: 紙木 一覇


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第50話 ヴォワさまが悩まれている……

「ん? どうした?」

「の、登ろうとしたら砂が崩れてきましてまた口に……」


 ぺっぺっと吐き出すもまだまだ口の中がじゃりじゃりしている。


「ちょいとごめんなさい」

「え? ぐぁ!」


 そんなエアラリスを踏み台にしてトーハがまず穴から脱出。


「ちょっとわたしものじゃないんですよ⁉」

「わかってるわよ。ほら」


 手を穴に向かって差し出しながら。


「……貴女本当にトーハさんですか?」

「人の親切心を疑うなら今ここで埋めてやるわよ」

「……っち」

「舌打ったわね⁉ あ! 手、放しなさい!」


 手を引っ込めようとするも、掴まれた。


「ふっ、これで貴女の取れる道は二つ。わたしを持ち上げるか、また落ちるかです!」

「こ・の外道!」

「これっぽっちで外道扱い!」


 心外である。


「二人とも、静かに」

「大丈夫よヴォワちゃん、今周りに人は――」

「いや、双眼鏡かなにかで見られている」

「え」


 言われてトーハは顔を、視線を周囲に巡らせる。花火の煙は晴れてきていて、しかし人影は見つからない。


「双眼鏡って……結構離れて見てるってこと?」

「だね」

「よいしょっと」


 その頃にはエアラリスが穴から脱出し終わり。


「エアラリス、キミの耳でなにか聴こえないかい?」

「し、しばしお待ちを」


 ぺっぺっと最後の砂を口から吐き出して耳元に掌をあてる。耳を澄ませて――確かに聴いた。


「笑い声、がしますね」

「ほぅ。私たちで笑うとはいい度胸だ」


 主に私で、だ。


「あれ? でもこの声は……多分赤ちゃんです。それも二人」

「赤ちゃん?」

「ふむ、悪意の色はなし。エアラリスの言う通りに赤子だとするなら、私たちは赤子のご機嫌取りに使われたと言うところか。

 産んだ経験がないから親の苦労はわかりかねるがこうまでしないと笑ってくれないものなのかね?」

「あーあたし兄貴の赤ちゃんと結構会ってるけどかなーり疲れるわよ。笑ったと思ったら急に泣き出しちゃうんだもの。心の起伏が激しい激しい」


 実際問題幼ければ幼いほど短時間で寝て起きてを繰り返すから親の苦労は計りしれない。母親など特にだ。

 だから。


「はぁ、しようがないね。もう少し遊びに付き合ってあげるとしようか」


 とりあえず砂浜から出よう、そう言って歩道に続く階段に脚をかけるヴォワ。そこでしばし固まり、


「二人とも、この階段凍らされているから気をつけなね」

「「え――痛い!」」


忠告は遅く、足を滑らせてエアラリスは前に、トーハは後ろにとすっころんだ。


「……夏の沖縄で氷とは……よくやります」

「う、後ろが砂浜だったからよかったものの……」


 しかもトラップはその後もまだまだ続き、肩でぜーはーぜーはー息をしだした頃にはもう夕焼けが見えていた。


「ヴォ、ヴォワさま……ヴォワさまのお力でトラップを回避出来ないのでしょうか?」

「出来るよ」

「「ええ⁉」」

「しかしだ、赤子を泣かせるわけにはいかないし……と言うか赤子とはどう扱えばいいのだ?」


 唇に折った指をあてながら。


「ヴォワさまが悩まれている……」

「苦手なものあったのね……」

「む? 苦手ではない。未知なものだから困っているだけだ。将来的にはどうとでもなっている」


 大人になる頃には。


「だっだめですよヴォワさま急いで結婚なんかしちゃったら!」

「そうよせめて成人するまでは!」

「なにを言っているんだなにを。

 それよりゴールは近いぞ」

「え?」


 ようやく終わるのか、と言うより突然やってきたゴールに驚くそぶり。


「私が無意味に歩き回ってトラップを踏み続けるわけがないだろう。ちゃんと近づくように進んでいたのだよ。

 ほら、出迎えだ」

「「――!」」

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