第49話 視界が塞がれたね
「あ・お――い! です!」
空と、海とを眺めてこれまでにないくらいの大声を出すのはエアラリス。
「コラ、エアラリス。故郷の日本だからと言ってはしゃぎ過ぎないようにね」
「はいです」
と返事をしたものの昂った気持ちはそう簡単に静まってくれないようでエアラリスは白い砂浜をダッシュ。あ、こけた。
「なにやってんだか」
次なる場所は日本、沖縄。
色を辿るに沖縄に一つ、京都に一つ天使のピースがあるようだ。
沖縄と言えば海。海と言えば水。水と言えばプール。プールと言えばガラスケース。ガラスケースと言えば天使のピース。
だからまた海にでも沈めているのかと思えばどうもそうではないらしい。
「ヴォワちゃん、この宮古島の砂浜でいいのよね?」
「うん」
ただし、広い。島とはいっても人間三人で探すには広すぎる。
「具体的な場所は?」
「わからない。持ってうろちょろしたみたいだね、色に満ちている」
右も左も。前も後ろも。風の色にまじってピースの色がある。
「プールの時みたいに辿れないの?」
「今もって移動中のようだ」
「……え? 持ったまま移動してんの? 貴重品なのに危ないな~」
「貴重品だから、だよ。
通常の神経なら金庫なんかに隠すのだろうけれど少し心配症なのかあるいは自分が持っていた方が安全と確信しているかのどちらかだろうね。
エアラリス! 戻っておいで!」
「はーい!」
「……暑い」
「暑いですねぇ」
「暑いわねぇ」
流れる汗は、止まらない。エアラリスとトーハは薄着だがヴォワは相も変わらずウェディングドレスだ。正直辛い。でも脱がない。ヴォワだから。
「ヴォワさま目の前が海ですが」
「うん。だがあいにく水着がない」
「ついでじゃないけどついでに言うと時間もないのよ」
小一時間島を歩き回り、結局また海岸へと戻って来た三人。体には今も汗をべっとりとかいていて衣服が肌に張り付き少々気持ち悪い。
「はぇ……せめてシャワーを浴びたいです……」
「用が早く済んだら今日はもう遊んでいいよ。危険な夜に動きたくないし」
治安はいいとは言え、例外と言うものがあるのだから。
「でわ済ませましょう! きりきり行きましょう!」
「だがねぇ……やけに動き回った色だ。これはもう故意にやったとしか思えないね」
「え? それってヴォワちゃん対策?」
「だね。恐らく私たちが天使のピースを集めていることをどうやってかしったのだろう。で、渡したくない、またはテストだ」
誰かに試されるのは、悪い経験ではない。だって自分の実力を証明出来るのだから。
「んま! ヴォワさまをテストするとか!」
「かまわないよ。辿り着いてみせようじゃな――⁉」
「うわ⁉」
「どへ⁉」
唐突に、足元が空になった。
落とし穴である。幸いヴォワは先に気づいてジャンプしてそれをかわして、更に幸いにも穴の中にはなにもなかった。竹槍でも仕込まれていたら完全にアウトだ。
「……ずいぶん原始的なトラップだね」
「うへぇ砂が口の中に~」
「こっちは落ちたショックで足くじいたわよ……」
深さは三メートルと言ったところか。半径も同じくらいだ。いくら砂とは言えこれだけ掘るには相当の労力が必要だったろう。
「ふむ、これを作った人間に特別な知恵知識はないようだね。だが単純な罠も数が多ければ――」
強く脚を降ろすヴォワ。その下には透明な糸がはられていた。近くの岩場でなにかが光った。猛スピードで迫ってくるそれは、
ぱん!
「うぉ」
ロケット花火であった。
ぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱん!
それも百個。
「ええいうるさい煙が濃い色が溢れる眼に悪いぞ!」
「だ、大丈夫ですかヴォワさま⁉」
「けほっ、ケガはない……が、視界が塞がれたね」
ヴォワにとっては大変な事態である。今殴りつけられたら避けられないだろう。
「すぐにまいりま――うきゃー!」




