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花嫁は王冠を抱いて ~ヴォワ=デートによるカラフルデイズ~  作者: 紙木 一覇


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38/45

第38話 随分……雑ですね

「ホワイト・キューブ、か」


 午前十一時を少し回った頃。

 ヴォワとエアラリスはトーハの運転する車で早速ここに辿り着いた。


「ここ誰でも出入り出来ますよね?」


 ハイ=ルミナ作である黄金時計が展示されている場所でもあるここは広く門戸を開けているはずである。近年改装されて以前より大きくなったこともあり、常に人が出入りを繰り返している。


「一般に公開されているエリアはね。今回はいわゆる『関係者以外立ち入り禁止』ってエリア」

「……ふむ」


 ヴォワの眼に映る美術館は蒼い色を放っている。蒼――高貴なる色。それはつまりここに展示されているもののレベルを物語っていた。黄金時計は勿論、絵画、彫像、工芸品のどれもが世界的に有名な品ばかりだ。


「木を隠すなら森の中、と言うわけかね」

「そ。そいじゃ入りましょ。ついて来てね、あたしの身分証明書がないと止められちゃうから」

「うん」

「……は~い」


 エントランスを通って、中へ。通常のルートから外れて人の少ない方へ少ない方へ。その間に有名人であるヴォワの存在に気づいた人もいたがどうやら入館者も礼儀をわきまえているようで騒ぎ出したりはなく、静かに会釈する人がいたくらいだ。


「確認だが私が協力している事実は報じられていなかったね?」


 報道されていたならこの来訪は失敗だが、ヴォワの観た限りでは自分を報じる局はなかった。が、全ての番組をチェックしたわけではない。


「大丈夫。気づかれていないわ。今日も黄金時計の件で事後確認に来たってことにしてあるから」

「そう。ご苦労さま」


 警備の立つ扉を通って、美術館の裏とも言うべきエリアへ。主に作品の補修やスタッフの休憩に使用されるエリアである。


「ここよ」


 着いた部屋の前にも警備がいて、トーハはその二人に身分証明書である警察手帳を見せた。それを認めた二人はドアの前から離れ、ドアをオープン。中へと通された。


「うわ」


 と声を上げたのはエアラリス。男警官が三人程いてタバコの煙が充満していたからである。


「ちょーとあんたら、今トランプ隠したでしょ。タバコも消しなさい匂いが作品にうつったらどうするの」


 視線を尖らせる、トーハ。

 問われた三人はバツが悪そうな表情をして大人しく両手を挙げた。


「いや~流石にヒマで」

「テレビもないしラジオもないし」

「おまけに窓もないから外を眺めたりも出来ないし」


 風の入れ替えも出来っこない。


「はぁ。警備の人なんてずっと立っているだけなんだから見習いなさい」

「それより」

「本物っすか?」

「初めて見たっす」


 トーハの台詞をそれよりの四文字ですませて、三人の男はヴォワを取り囲んだ。流石に無遠慮に触ってきたりはなかったがなんやかんや言われて質問攻めにあうヴォワ。だから、


「「「熱い!」」」


一人ずつ手の甲にパイプを押しつけてやった。善い子も悪い子も決してマネしないように。


「ふっ、あたしレベルじゃないとヴォワちゃんは懐かないから気をつけなさい」

「私は動物か。そしてエアラリス、ナイフを抜こうとするのやめたまえ」

「う」


 危うく傷害事件になってしまうところだ。


「で、作品は無事でしょうね?」

「も、勿論ス」

「ここにあるっすよ」


 と言ってテーブルの上を指す。そこには普通のダンボール箱がいくつか。


「随分……雑ですね」

「いや~あからさまに金庫に入れたりしてるとかえって危ないんすよ」

「ですか」

「中、確認してもいいかね?」

「勿論っす」

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