第37話 天使ピースのありかはどれだけわかった?
「ハイ=ルミナ氏はまだ目を覚まさないわ」
あれから一夜明けて、午前十時。ヴォワの自宅兼オフィスにて。
「眠らせている――てっきりすぐに起きると思っていたが……こちらが天使ピースを揃えるまでずっとと言う意味だったか」
ハイ=ルミナはイギリスで一番大きな病院に運ばれ、まず毒について検査された。が、結論から言えば、『正体不明』。これまで確認されているどれとも違い、またそれらの亜種ですらないと言う。解毒どころか毒の構成すらわからない。勿論今もって検査は行われているが一週間たってしまう方が速いだろうとヴォワは見ている。だから。
「急ぎ天使を完成させねばね」
「でもでもヴォワさま、あの人たちはどうして『神赦婚姻』にこだわるのでしょう? 評価が高いとは言えあくまで美術品、アートの一つですよね?」
「彼女たちがコレクターなら罪を犯してまで手にしたい、観てみたいと言うパターンがあるだろう。
しかしどちらかと言うと……そうだね、どこかのピースになんらかの秘密が隠されている、と見た方がいいだろう」
コレクターにはあまり見えなかった。『神赦婚姻』に対して気を使う色はあったけれどそれ自体を好んでいる色はなかったから。
「ものすごい高価なものが使われている、とかかしら?」
「金額的にとても高価、と言うのはないと思うよ」
「え? どうして?」
勿論美術品としては高価だろう。一般的な収入では手が出ないくらいには。だがそれ以上に高価なものがすぐそばにあるのだ。
「彼女たちはロボットだ。完全に二足歩行を可能にしたね。それが自立型でも遠隔操作でも充分に価値がある。金銭目的なら犯罪に走るよりもその技術を売ってしまった方が儲けられるだろうさ」
「あーなるへそ」
「へそ……言わないなもう」
いつのギャグだ。
「和むかなと思って」
「確かに気は抜けたが」
表情も緩んだが。
「呆れたとも言います」
「む。ならエアラリス、気の利いたギャグでも言ってよ」
「なにそのムチャブリ」
そんなやりとりを見ながら、ヴォワは十時のおやつを口にする。チョコレートだ。甘~いそれが口内を満たして緊張が一線を超えないように沈めてくれる。
「さて、トーハ」
「うん?」
「天使ピースのありかはどれだけわかった?」
「……ん~、今んとこ二つだけ」
指を二本おったてる。ピース。
「随分遅く感じますが。警察機関は決して無能ではないでしょう?」
「当然よ。こちとら捜索のプロなんだから」
「ではなぜわからないので?」
「みんな隠しているから」
困った、と言うように眉を下げる。
「隠す? 自慢するのではないのですか?」
「貴重なものはそうそう表に出さないよ。盗難を警戒してね。
それに今回の件が重なって怖がっているものもいるだろう」
「そ。
ハイ=ルミナ氏が狙われたのをしって、同じ目にあうことを怖がっているの、多分。
それもこれもあれよ。マスコミが嗅ぎつけて勝手に報道しちゃうから」
後頭部を強くかくトーハ。こう言った報道の暴走はよくあるとは言えどうしても慣れたりは出来ない。
「見つかった二つ――持ち主二人も厳重に護衛しているわ。それが一時貸与の条件だったから」
「ピースはどの部位だね?」
「左脚と右腕」
手でぺしぺしと自分の左脚と右腕を叩きながら。
「今どこに?」
「見る? 下手な盗っ人に見つからないように保管しているからちょっと遠出してもらうことになるけど」
「行こう」




