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花嫁は王冠を抱いて ~ヴォワ=デートによるカラフルデイズ~  作者: 紙木 一覇


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33/44

第33話 それは301,655,722個の名前だよ

「……迷ったね」

「迷いましたねぇ」

「迷ったわね」

「……」

「……」

「どうしてヴォワちゃん眼を使わなかったの?」


 頭蓋骨の通路を抜けてみるとそこは迷路になっていた。相変わらず床はガラス張りだし――と言うか全てがガラスだが――頭蓋骨に見られてもいる。ただ頭蓋骨だけではなくて進むごとに首、肋骨、腕、その下の骨がゆっくりと形作られていく。まるで植物の成長を切り取ったかのように骨の成長を切り取って並べているようであった。


「色を()たら面白くないと思ったのだが……しかしだ。ドクロの成長を辿っていけば迷路を抜けられると思っていた。

 が、そうではないのか?」


 顎に折った人差し指をあてる。ふむ、と考え改めて周囲を確認する。


「いや、合っているはずだ。足りないものは……“理解”だね」

「理解――ですか?」

「そう。私は悪魔の成長を見ていると思っていたが、違う。これは人の成り立ち――あるいは悪魔の堕落を形作っているのだ」


 骨に指で触れながら。


「え? それって人が悪魔になるってこと?」

「なると言うことだ」

「ルミナさんって人をそう見ていたのでしょうか?」


 軽くショックです、とエアラリス。


「いや、そうではないよ」

「え?」

「進めばわかるさ。頭脳だけの人が最終的になにになるのか」


 キン――、ヴォワのガラスのヒールと床のガラスが重なって綺麗な音が出る。鈴の音のようで聴いていてどこか心地いい。


「道順は? ヴォワちゃん」

「骸骨の心臓部を観たまえ」 

「心臓?」


 エアラリスとトーハはそれぞれ近くにある骸骨を覗き込む。その肋骨の奥を。


「おや? 文字が観えます」

「だろう? それは301,655,722個の名前だよ」

「3――それって天使の総数じゃないの?」

「その通り」


 つまりここには301,655,722の骸骨があると言うことだが、だがそれは。


「え? まさか全天使と悪魔が同一視されてるの?」


 と言うことだ。


「不思議はあるまい? とある宗教では他宗教の神に加えて堕落した天使を悪魔と語るのだ。であるならば全ての天使に悪魔の素質があると考えるものもいると言うお話だよ」

「それはまあそうなんだけど~どっかから怒られそうね……」


 天使の清らかさに重きを置く人から。


「実際怒られただろうね。だがハイ=ルミナは押し通した。どちらが正しいかはわからないけれど、まあこれはあくまでアートの一つ。他者に制限されるべきではないだろう」

「う~ん、日本育ちのわたしには天使と悪魔の難しいとこはわかりかねますが……まあいいんじゃないでしょうか」

「軽いわねあんた……」

「心が広いと言ってくださいませ」


 胸に手をあてて、えっへん。


「さ、進もう。名前を下位から上位へと辿って行けばいい」

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