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花嫁は王冠を抱いて ~ヴォワ=デートによるカラフルデイズ~  作者: 紙木 一覇


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第28話 怖いがなにか?

「はあはあはあはあはあはあはあはあはあはあ」


 口を大きく開けて、エアラリス。


「ふぅふぅふぅふぅふぅふぅふぅふぅふぅふぅ」


 頬を膨らませたり縮めたり、トーハ。

 約三十分。その間二人は張り合って肩で息をし始めた。ものすごく無駄な時間の使い方である。


「終わったかね?」

「アア! ヴォワさまいつの間に映画観賞に移られて⁉」

「キミらがじゃれている間にだよ」


 テレビ画面から眼を離さずに。流れてくるBGMはおどろおどろしいものだ。


「ヴォワちゃんそんな猟奇作品観たら夜中おしっこに行けなくなっちゃうわよ?」

「ベッドルームからちょくに行けるから問題ないね。電気はつけるが」

「「怖いんですね!」」

「怖いがなにか?」

「「開き直った!」」


 それでも映画の再生を止めない。怖いけど観たい。観たいけど怖い。そんなスリルが嫌いではなかったりする。

 ただ。


((ああ膝を抱えて丸まってる姿が可愛すぎる!))


 無差別に萌えをふりまいているが。

 そんな風にしていると、「うぉっほん!」と玄関扉の向こうから大きすぎる咳払いが一つ。

 それにトーハはハッとする。よくよく考えなくても今は勤務中なのだ。こうしてふざけている場合ではない。


「えっと」


 乱れたスーツを整えながら。


「ヴォワちゃん、天使の輪、見せてくれる?」

「あと一時間三十分待ちたまえ。映画を観終わる」

「え~」

「元凶はキミたちだ」

「「うっ」」


 ぐうの音も出ないとはこのことか。

 仕方ないので責任をとって、三人一緒に観賞をし、終えたのだった。


「ふむ、女への愛のために犠牲になるとは」

「ハートフルですよ! 感動ものです!」

「え~? 残されたヒロインはどうしたらいいのよ?」

「死んでしまった恋人を永遠に思い続けるのか、さっさと次の男に走るのか。どちらにしてもどこかに不幸があるのではないかな」


 完全な幸いなど、ないのかもしれない。


「でもでもヒロインはこれを乗りこえて強くなるのだと思います! ヴォワさまとわたしが心中を乗りこえて強い絆を得たように!」

「ちょっ待って! 貴女たちいつ心中しようとしたの⁉ 警察として大問題なんだけど⁉」

「してないよ。私は心中を否定した身だ」

「なんだウソか」


 安心するトーハ。だがエアラリスの口撃はまだ止まず。


「ぐふふ、その時あ~んなあれが起こったわけですが」

「なに⁉ まさか貴女たちもう⁉」

「ぐふふふふふふ」

「キミの考えているようなあれはしていない」


 一人冷静に、ヴォワ。


「ぐふふふふふふふふふふふふふふ」

「含み笑いがムカつく!」

「うおっほんっ!」


 この咳払いも三人のものではなかった。トーハの同僚によるものだ。


「うるさいわね! 部下なら大人しく待ってなさい!」

「天使の輪だったね」


 話題を変えよう、ヴォワは場面転換を狙ってみるが、


「そんなことより二人の話を詳しく!」


効果はなかった。


「“そんなこと”言ったな」

「大丈夫。不適切な発言はあたしがもみ消すから」

「ダメダメですね」

「あ、トーハ、外の子らから連絡とろうとしている色が()えるよ」

「あ~! 待ったぁ!」

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