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花嫁は王冠を抱いて ~ヴォワ=デートによるカラフルデイズ~  作者: 紙木 一覇


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第25話 許すまじ!

 ◇


「……」

「……」


 黄金時計改め『そして色は恋に満ちる』の件から二週間。その間にハイ=ルミナが新作を発表することはなかった。いくらすさまじき速度で造形できるとは言ってもアイデアの方が出て来なかったのだろうか? それともただの休憩かな?

 そんな風にヴォワが思っていた二週間。けれどそこにちょっとしたサプライズがあった。

 つい先日、昨日のお話だ。なんとこれまで姿を隠していたハイ=ルミナが初めて世間に素顔を見せたのだ。それは美術の専門誌での出来事だった。プリンセス・エリザベスの肖像画を描く流れになり、それについての特集だ。写真を()るにものすごく緊張の色を発していたけれど以前よりもずっとしっかりとした色で、更にそれを包み込むように様々な色が取り囲んでいた。

 マスコミはこぞって著名人の変化を伝え、その心変わりの理由を推測しはじめたけれどそこにヴォワが関わっていた事実にまでたどり着くものはいなかった。警察機関も口をつぐんだらしい。

 ハイ=ルミナは強くなった。

 マスコミは話題を手に入れた。

 警察機関は面子を保てた。

 ヴォワはまた一つ輝く色を得た。

 万々歳。あっちもこっちもウィン・ウィン。

 ただし、それは全てが収束し終わってくれたらの話だ。どうやらこの件はもう少し続くらしい。


「……」

「……」


 ヴォワの自室兼オフィスで二人は向かい合って愛想笑いを浮かべている。

 一人はエアラリス。ヴォワの助手でありボディーガードである女の子。

 一人はトーハ。警察の一員でヴォワを担当するチームの一人である女性。

 エアラリスは思う。


(この人なにかにつけてヴォワさまに接近してきますね。ライバルなんて認めてあげませんよ)


 トーハは思う。


(うっひょーいつ来てもいい匂い。どうにかしてヴォワちゃんを養子に出来ないかしら? 妹でもオッケー)


「うへへへへ」


 不気味に嗤うエアラリス。


「うふふふふ」


 どこぞの悪役令嬢のように嗤うトーハ。

 そんな二人を人を夢に誘うソファに座して視ている少女、ヴォワ。パイプをテーブルに置いて、コーヒーを一口。全く音を立てずに飲むその姿、エアラリスとトーハは笑顔を引っ込めてついつい魅入ってしまった。そして二人は同時に思う。


((将来どこぞの男と恋愛するのだろうか?))


 ――と。


((許すまじ!))


 ――と。

 主にヴォワの小さな蕾のような口を見ながら。


「で」


 カップを置いて、ヴォワが口を開いた。


「トーハ、なにをしに来たのだね?」

「……はっ、いけないトリップしてた」

「……はっ、ダメですトリップしてました」


 トーハ、それに()いでエアラリスと正気を取り戻す。

 この二人、案外気があっているのかもしれない。


「ってヴォワちゃん、あたしがただ遊びに来ちゃったらダメなの?」

「来るのは自由だが遊びに来る人間は同僚の男を二人も連れては来ないだろう」


 ドアの向こうから流れて来る気配の色。それをヴォワは決して視逃さない。


「あら嫉妬?」

「おかしいな、私はただ確認しただけなのだけれど」


 ハァ、と吐息に似たため息。吐き出された息、それをエアラリスは素早く風を切って掴み取り口へと含んだ。流石変態である。

 その向かいのソファにてトーハが悔しそうに表情を歪ませた。こっちも変態である。


「……二人の変態は後で警察上層に報告するとして」

「「ええ⁉」」

「また依頼だろう? ほれ、出したまえ」


 依頼書を。

 トーハとしてはまだ緩やかにすごしていたかったけれど、今回ここを訪れたのはヴォワの言う通りに仕事だ。残念。だからサボるわけにはいかず、素直に持っていたハンドバックから書類を取り出してヴォワに渡した。その際にヴォワの指に触れるのも忘れない。ヴォワは当然それに気づいたが無視した。


「――ハイ=ルミナが?」


 書面をさらったヴォワは思わず言葉に零した。眼を細めて、改めてパイプを口に入れる。

 依頼書の内容を簡単にいえばこうなる。


【ハイ=ルミナが攫われた】

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