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花嫁は王冠を抱いて ~ヴォワ=デートによるカラフルデイズ~  作者: 紙木 一覇


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第23話 私が自己チューだとでも?

 席を立つハイ=ルミナ。

 螺旋階段をのぼって二階に上がり、強く重い一瞬の音が階下に伝わってきた。今の音は?


「ふむ……なにかを倒してしまったみたいだ。色が慌てている」

「とっても意外な性格でした」

「そうかね?」

「はい。芸術家と言う人たちは『オレってすごいじゃん? 世界一じゃん? もっと褒めていいぜ!』って言うナルシストだと思っておりました」


 一つ一つポーズを決めつつ。


「偏見ですかね」

「そう言う人間も多いがね。

 なにせ誰になにを言われても自分をつらぬき表現し続けなければならない存在だ。自分に対して絶対的な自信が必要となる」

「その点はヴォワさまも似ていますね」

「む? 私が自己チューだとでも?」

「そりゃもう素敵なほどに。

 あれ? どうしてパイプを近づけて来るんです? 褒めてますよ? はい、本当に。あつい!」

「お……おまたせしました」


 パイプの熱にエアラリスがもだえているとハイ=ルミナが螺旋階段に姿を見せた。その腕に布でくるまれたバットほどのなにかを抱えて。いや、なにかと言う言い方は必要ないか?


「それが時の秒針か」

「は……はい」


 階段を完全に降りきってハイ=ルミナは元の位置に着席。テーブルに布でくるまれた時の秒針を置き、一呼吸いれてから布を外しにかかった。

 乾いた絹のすれる音。

 やがて布の奥から姿を見せる――黄金の秒針。


「ほぅ」

「わあ、眩しい」


 小さく感嘆の吐息をもらすヴォワと、ライトの反射が目に入ってもだえるエアラリス。

 黄金の時の秒針――それはあくまで黄金時計の一部にすぎないのにこれだけでも一つの美術品に思えて。


「これは、本物の黄金だね」

「はい……全財産を使って集めました……」

「うむ、いいんでないかな? お金は大切だがそれはあくまでものを買うためのアイテムとしてだ。お金そのものを愛するものもいるにはいるが、私の好みではない。

 使いたい時に使えばいい」

「ヴォワさまも結構浪費家ですもんね。主にドレスとか靴とか」


 ヴォワはウェディングドレスを何着も持っている。そのどれもがヴォワの体形に合わせて作られた特注品で、高額だ。

 おまけにガラスのヒールもそう。ドレスもヒールも一つたりとて同じデザインはない。

 購入済みのものも含めると軽く何千万円をこえているだろう。


「キミ、エアラリス、キミの給料としても使っているのだよ? もっと感謝したまえ」

「ありがたき幸せです」

「まったくもってその通り。

 で、ハイ=ルミナ? 黄金を使ってでも表現したかったのは、シンデレラの時間は終わらない――と言うことだね?」


 ハイ=ルミナが顔を上げた。その表情は笑顔で、嬉しそうだ。


「わ……わかってくれた?」

「わかるとも。

 黄金時計の針は二十三時五十九分で止まっている。秒針を抜いたことで時間は進まず、永遠に魔法は終わらない。

 女として産まれたならだれもが一度は夢みるロマンスだろう。

 だが、キミと黄金時計から感じる色はそうではない」


 改めてハイ=ルミナを()る。さまざまな色が混ざりあっていたハイ=ルミナから感じる色。それが少しずつだが確実に減っていく。


「ハイ=ルミナ、キミの中から別の人格が消えつつあるのだね?」


 歳のわりに細い肩がゆれた。そしてそのままうつむいてしまう。


「……これは……元からです」

「ずっと産まれては消えるがくり返されて来ていたと?」

「……はい」


 それはどんな気持ちだろう?

 せっかく産まれて来てくれた人格に対して愛情を持つ人もいるだろう。

 逆に迷惑と憎む人もいるだろう。

 ここにいる多重人格者は――


「ルミナは……ずっと誕生と別離を見続けて来ました……憎めればよかったのに……どこか母親にでもなった気持ちになって……でも何度も……何度出逢ってもみんな死んでいく……」

「それが耐えきれずに、あの黄金時計となって姿を見せた」

「……はい」

「あれ? でもそれならどうして最初は秒針をつけていたのです? それだと黄金時計は正常に働いて0時になっちゃいますよね?」

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